高圧受電設備(キュービクルなど)周辺の植生管理は、単なる見た目の問題ではなく
「停電事故の防止」と「設備の寿命維持」に直結する極めて重要な保安業務の1つ。
放置すると、波及事故(近隣一帯を巻き込む停電)の原因となり
多額の損害賠償が発生するリスクもある。具体的な対策を4つの視点で解説する。
植物が設備に及ぼす悪影響は、主に以下の3点。
絶縁破壊と短絡(ショート)
樹木の枝が充電部(電気が流れている部分)に接触したり
強風で枝が折れて電線に触れたりすると、地絡・短絡事故が発生する可能性がある。
小動物の侵入経路
伸びた枝を伝ってヘビ、イタチ、ネズミなどが設備内に侵入し
内部機器をショートさせることがある。
湿気による腐食
雑草が密集すると風通しが悪くなり、設備周辺の湿度が上がる。
これがキュービクルの底板の錆(サビ)や、内部機器の絶縁劣化を早める。
| 対策方法 | 特徴・メリット | デメリット・注意点 |
| 防草シート | 遮光して成長を抑制する。比較的安価。 | 経年劣化で破れるとそこから生える。 |
| 砂利敷き | 防草シートの上に敷くと効果倍増。排水性向上。 | 砂利の隙間に溜まった土から雑草が生える。 |
| コンクリート打設 | 最強の防草対策。小動物も入りにくい。 | 施工コストが高い。地中の配管メンテナンスが困難。 |
| ウッドチップ等 | 見栄えが良い。 | 腐敗するとシロアリを呼び寄せるリスクがある。 |
物理的対策が難しい場所や、メンテナンス頻度を下げたい場合に有効。
除草剤の定期的散布
根まで枯らすタイプと、発芽を抑えるタイプを組み合わせて使用する。
※近隣の田畑や庭木への飛散には細心の注意が必要。
成長抑制剤
樹木の場合、伐採が難しい場所では成長を遅らせる薬剤を
注入・散布するケースもある。
保安規定に基づき
以下のサイクルでチェックを行うのが理想的となる。
離隔距離の確保
電気設備に関する技術基準に基づき、電線や設備から一定の距離
(最低でも0.6m〜数メートル、電圧による)を保つよう剪定を計画する。
梅雨・夏前の重点清掃
植物の成長が著しい6月〜8月の前に、徹底的な除草と剪定を行う。
巡視点検時の記録
月次点検時に「枝が伸びていないか」「蔓(つる)が巻き付いていないか」を写真で記録し、予兆管理を行う。
●蔓(つる)植物の脅威
クズやヤブカラシなどの蔓植物は、一晩で驚くほど伸びる。
これらはフェンスを乗り越え、キュービクルの換気口から内部に侵入するため
見つけ次第、根から除去する必要がある。
キュービクル内に植物が侵入している場合
受電設備に蔓草などが侵入しているのを発見したら
決して蔓草に触れず検電を実施して、高圧手袋などの安全対策を実施してから除去する。
危険だと判断した場合は設置者や管理会社と協議して停電操作を実施してから除去する。
一般財団法人 九州電気保安協会
電気と保安2025年晩秋号「安全を守る最前線 現場レポート 高圧受電設備周辺の植生管理」より引用