高圧受電設備において、フラッシオーバ(Flashover:閃絡)は設備に大きなダメージを与え
最悪の場合は地域一帯を巻き込む「波及事故」に発展する恐れのある極めて危険な現象のひとつ。
フラッシオーバとは
本来は電気が流れないはずの絶縁物(空気や固体絶縁物)の表面を伝って
高電圧の電気のアークが瞬時に飛び、短絡や地絡を起こす現象。
通常、高圧受電設備(6,600Vなど)の電線や機器は
十分な離隔距離(空気絶縁)を保つか、がいしによって対地・線間が絶縁されている。
しかし、何らかの理由でその絶縁性能が限界を超えた瞬間
空気の絶縁が破壊され、激しい閃光(アーク)とともに電流が流れてしまう。
フラッシオーバは、主に以下の3つの要因(またはそれらの複合)によって発生する。
① 汚損(塩害・塵埃)と湿気(結露・豪雨)
高圧受電設備(特に屋外のキュービクルや支持がいし)で最も多い原因のひとつ。
がいしや乾式変圧器の表面に、海塩粒子(塩分)や工場などの導電性をもった塵埃が堆積する。
そこに台風や大雨、あるいは梅雨時期の高湿度や結露によって水分が加わる。
表面の汚れが水分に溶けて導電性(電気を通しやすい状態)を持ち
微少な漏れ電流(リーク電流)が流れ始める。
漏れ電流による局部的な発熱で水分が蒸発し、乾燥帯ができる。
この乾燥帯に電圧が集中し、小さな火花放電が発生し、これが繰り返されることで
最終的に一気に全体が繋がるフラッシオーバに至る。
② 過電圧(雷サージ・開閉サージ)
設備が耐えられる電圧の限界(最高許容電圧や注水耐電圧など)を
遥かに超える電圧が印加された場合に発生する。
直撃雷や誘導雷(雷サージ)が電線路から侵入した際
避雷器(LA)で処理しきれなかった高電圧が機器のがいし表面でフラッシオーバを起こす。
また遮断器やの開閉時に発生する開閉サージが原因になることもある。
③ 小動物の侵入
キュービクルの隙間から、ヤモリ、ネズミ、ヘビ、鳥などの小動物が侵入し
充電部と接地側の金属体の間に近づいた瞬間に、その体を媒介として空気絶縁が破壊され
フラッシオーバを引き起こす可能性がある。
高圧回路でフラッシオーバが発生すると、以下のような深刻な事態を招く可能性がある。
激しいアークエネルギーによる機器の損壊
数千アンペアという大電流がアーク(電弧)として流れるため
数千〜数万度という超高温が発生する。
これにより、がいしが破裂し、金属製の外箱(キュービクル)が溶損・変形する。
波及事故(もらい事故)への発展
受電設備内の過電流継電器(OCR)や地絡継電器(GR)が動作して遮断器がトリップするよりも早く
電力会社側の配電線にある「配電用変電所の遮断器」が作動してしまうケースがある。
フラッシオーバ発生時、自社だけでなく周辺の工場や一般家庭、信号機などを巻き込む広域停電(波及事故)を
引き起こし、巨額の損害賠償に発展するリスクがある。
フラッシオーバを防ぐためには
日頃の保守点検(月次・年次点検)とハード面での対策が不可欠となる。
設備自体に対する対策
保守点検(メンテナンス)での対策