そもそも、なぜ太陽光発電所で発電した電気を止める(出力制御する)必要があるのか。
理由として電力系統の安定運用に関わる原則が考えられる。
電気を安定的に供給するためには、使う電気の量(需要)と
発電する電気の量(供給)が、瞬間瞬間で常に一致している必要がある。
この仕組みを「同時同量の原則」と呼ぶ。
もしこの需要と供給のバランスが崩れてしまうと、電力系統の周波数が乱れ、正常な電気の供給ができなくなる。
最悪の場合、大規模な停電である「ブラックアウト」を引き起こす恐れがある。
1年の中でも、特に5月のゴールデンウィークは出力制御が頻発しやすい時期となる。
天気が良く、気温が太陽電池モジュールの発電効率が最も良くなる
基準(約25℃)に近いため、太陽光の発電量が大幅に増加する。
一方で、工場や企業が連休に入り外出する人も増えるため、電力需要全体は大きく低下する。
結果として、供給過多(供給量>需要量)の状態に陥りやすくなる。
供給過多になった場合、一般送配電事業者は系統を守るために供給量を絞るが
これには以下の優先順位が定められている。
太陽光発電は4番目の対象となる。
太陽光発電における出力制御はパワーコンディショナ(PCS)で行われるが
その実施方法には大きく分けて2つの種類が存在する。
オフライン制御とオンライン制御の違い
実務におけるオフライン制御注意点
オフライン制御の場合、例えば「翌日の8時までに発電停止、16時以降に発電再開」といった指令が出た場合
電気主任技術者は作業時間を逆算して早朝(7時頃など)には現地へ向かう必要がある。
山奥の発電所や連休中の渋滞などを考慮すると、実務者への負担は極めて大きくなる。
また、出動直前の朝6時頃になってから
「最新の気象情報等から供給力の余剰が解消される見込みとなったため、出力制御指令を解除する」という
メールが届くことがある。
前日の夜に前倒しでPCSを停止させてしまうと、翌朝慌てて起動させに戻らなければならないケースもあるため
現地に向かう直前のメール確認は必須となる。
上記のような負担軽減策として、近年は高圧発電所などを中心に
「オンライン代理制御」という方式も導入されている。
特高の発電所などでは依然としてオフライン制御による対応が求められることもあるが
業界全体としてオンライン化が進んでいる。
オンライン代理制御の仕組み
オンライン代理制御とは、本来オフライン制御の発電所が行うはずだった出力制御を
オンライン制御の発電所が「代わり(代理)」に実施し、あとで金銭的な精算を行う仕組み。
オンライン発電所B(自動制御)が、オフライン発電所Aの代わりに発電量を制御する。
オフライン発電所Aは通常通り発電を続けるが
本来出力制御されるはずだった時間帯の発電量については、対価(売電料金)が支払われない。
→売電先を通じて、代理で制御してくれた発電所側への補填に充てられるという精算モデル。
オンライン化への推奨と費用対効果
一般送配電事業者も、オフライン制御の発電所に対してオンライン化を強く推奨している。
※オンライン制御の発電所には以下のようなメリット・デメリットがある。
新電気2024年6月号「連載エネテクあなたの知らないPV事例が集う場所太陽光相談所
File29 出力制御、やるのかい? やらないのかい? どっちなんだい?」より一部引用
各一般送配電事業者(九州電力送配電・東京電力パワーグリッドほか)
「再生可能エネルギー発電設備に対する出力制御の運用手順マニュアル」
「オフライン・オンライン出力制御における実務対応手順書」
電力広域的運営推進機関(OCCTO)
「送配電等業務指針」第6章(周波数調整および需給バランスの維持、優先給電ルール)
経済産業省 資源エネルギー庁
「なっとく!再生可能エネルギー:出力制御について」
「系統ワーキンググループ(再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会)」配付資料(優先給電ルールの策定およびオンライン代理制御の精算スキームについて)
一般社団法人 日本電気協会 / 電気事業法関連資料
『最新 電力システムの基本と仕組み』(電力系統の同時同量の原則およびブラックアウト発生メカニズムに関する解説)