電気主任技術者の選任義務と各種申請・届出形態の基礎知識まとめ

電気主任技術者の選任義務の基本と「原則」

電気設備の保安管理において、「電気主任技術者の選任」に関する手続きは必須となる。
事業用電気工作物を設置する者は、法令に基づいて電気主任技術者を定めなければならないが
その形態は企業の規模や設備の状況によって多岐にわたる。

前提として、電気主任技術者の選任義務を果たすための方法は
大きく分けて「選任する」か「外部委託する」の2通りしかない。

外部委託は、専門業者(電気保安法人や電気管理技術者)へ委託することで
主任技術者を「選任しない」唯一の方法となる。
※小規模な事業場で国へ承認申請を行うことで認められる。

「選任する」形態方法の種類

「選任する」形態には「原則」と様々な「例外」が存在する。
法令が定める「原則」の形とは、以下の3つの条件をすべて満たす形態を指す。

  1. 自社従業員であること
  2. 事業場に常時勤務していること
  3. 電気主任技術者の有資格者であること

「自社選任(専任)」の条件

事業場に常時勤務している自社の従業員を選任する形を
他の事業場を掛け持ちしないことから「兼任」に対して「専任」とも呼ぶ。
( 「自社」には、親会社・子会社・兄弟会社の従業員も含まれる)

自社従業員の選任(自社選任)

また「常時勤務」とは、電気主任技術者制度に関するQ&Aにおいて
「正社員と同等以上の勤務実態(週40時間目安)」と定義されている。

この「原則(自社従業員・常時勤務・有資格者)」をすべて満たす形態以外は
すべて「例外」の形態として扱われる。

選任要件の「例外」となる諸形態と条件

実務上、すべての事業場で有資格者を常時雇用することは困難なケースが多く
法令では上記の「原則」それぞれに対する「例外」措置が設けられている。

「自社従業員」の例外:外部選任

自社ではなく、他社の従業員(ビル管理会社の従業員など)を事業場に常時勤務させて選任する形態。
この外部選任を行う場合、設置者と委託先との間で「保安の監督に関する業務委託契約」を結ぶ必要がある。
通称「イロハ契約」と呼ばれ、届出の都度、提示が求められる。
契約には以下の内容を必ず含める必要がある。

  • イ.設置者は主任技術者の意見を尊重する
  • ロ.保安に従事する者が主任技術者の指示に従う
  • ハ.主任技術者は職務を誠実に行う

「常時勤務」の例外:兼任承認(自社・外部含む)

左図:自社または他社従業員の兼務による選任の届出
右図:兼任承認申請(一人の複数事業場への選任(兼任)を承認)

一人の主任技術者が、同一設置者の複数の事業場を兼任する形態。
例えば、A社の事業場に常時勤務する従業員が、別のA社事業場(または選任事業場)に
定期的に執務に向かうケース。
自社従業員だけでなく、ビルメン等の外部従業員による兼務もこれに該当する。

兼任承認には国への事前申請が必要であり
以下の条件を全て満たす必要がある。

  • 常勤場所を含めて6カ所以内であること
  • 各事業場へ2時間以内に到着できること
  • 需要設備の場合、電圧7kV以下で連系し、最大電力2,000kW未満であること
  • 発電所・蓄電所の場合、出力5,000kW未満の太陽電池発電所又は蓄電所
    あるいは出力2,000kW未満の発電所(風力、水力、火力)であること
  • 告示の頻度以上で執務を行うこと
  • 連絡責任者を選任すること
  • (外部選任の場合は、前述のイロハ契約を結んでいること)

「有資格者」の例外:選任許可

電気主任技術者の免状を持たない「未取得者」を、特例として選任する形態。
こちらも国への事前申請が必要であり、人と設備の双方に厳しい条件が設定されている。

  • 人の条件
    • 所定の単位を修め、高等学校以上を卒業していること。
    • 又は、電気工事士の免状保有又は試験合格者であること。
  • 設備の条件
    • 出力500kW未満の発電所、蓄電所。
    • 最大電力500kW未満の需要設備。

実務上の注意点
第二種電気工事士の資格で選任許可を受ける場合、発電所や蓄電所は不可となり
需要設備についても「100kW未満」に制限されるため注意が必要。

「選任しない」唯一の方法:外部委託承認申請

小規模な事業場で、一定の要件を満たす個人(電気管理技術者)や
法人(電気保安法人)に保安管理業務を委託する形態。
主任技術者を選任しないことを承認してもらうため、国に事前申請が必要となる。

設備の条件

  • 電圧7kV以下の需要設備
  • 出力5,000kW未満の太陽電池発電所又は蓄電所
  • 出力2,000kW未満の発電所(風力、水力、火力)

承認条件(必須)

  • 電気事業法施行規則に基づく「委託契約書」を締結すること
  • 告示の頻度で点検を行うこと
  • 事業場へ2時間以内に到着できる体制であること
  • 事業場側に連絡責任者を選任すること

実務におけるポイント

保安管理体制の構築にあたっては
根拠となる法令や通達の最新動向を把握することが不可欠となる。

近年の法改正に関連して、の法改正に関連して、以下の通達等が公布・改正されている。
各種届出を行う際は、最新の要件を経済産業省のウェブサイト等で確認すること。

  • 主任技術者制度の解釈及び運用 (改正:令和令和3年4月1日付け 20210310保局第1号)
    外部選任のイロハ契約、兼任承認、選任許可などの要件が整理されている。
  • 電気事業法施行規則第52条の2第一号ロの要件等に関する告示第4条 (改正:令和3年4月1日付け 第60号)
    兼任や外部委託における「告示の頻度(点検頻度)」に関する根拠。
  • 電気事業法の規定に基づく主任技術者の資格等に関する省令
    (当該省令の特例に関する直近の主な改正は令和2年12月28日付け(第92号)
    選任許可における「所定の単位」の根拠法令。

参考資料

https://www.safety-kanto.meti.go.jp/electric/e_seminar2025.html
令和7年度電気主任技術者セミナー実施概要 より一部引用

経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」

経済産業省「電気事業法施行規則第五十二条の二第一号ロの要件等に関する告示」

経済産業省「電気事業法の規定に基づく主任技術者の資格等に関する省令」

経済産業省「電気主任技術者制度に関するQ&A」

名無し管理事務所