アルミ電線の規格(JEC-3404 / JIS C 3109)と実務知識の備忘録

アルミ電線に関する基礎規格まとめ

アルミ電線は、軽量かつコストメリットに優れるため
電力インフラにおいて重要な役割を担っている。

アルミ電線の仕様、材料、寸法、試験方法などを定める規格として
実務上必ず参照されるのが「JEC(電気学会規格)」と「JIS(日本産業規格)」となる。

JEC-3404:2022 (アルミ電線)

電気学会(電気規格調査会)が発行している団体規格となる。
近年、大幅な見直しが行われた。

  • 発行日: 2022年10月28日
  • 制定機関: 電気学会 電気規格調査会
  • 概要: 以前の規格(JEC 130など)を統合・刷新し、技術進歩に合わせて改訂された最新の規格。
    現在の送配電網などで使用されるアルミ電線の構造、材料、寸法、試験方法などの最新要件が網羅されている。

電力会社向けや大規模な受変電設備の仕様書では
このJEC規格がベースになっていることが多く、最新の技術基準を確認する上で重要となる。

JIS C 3109:1994 (硬アルミニウムより線)

こちらは国が定める国家規格(JIS)。
発行年は少し古いが、現在でも有効な規格として広く運用されている。

  • 発行年: 1994年
  • 名称: 硬アルミニウムより線(Hard-drawn aluminium stranded conductors)
  • 概要: 主として母線および架空き電線に使用する硬アルミニウムより線について規定している。

JIS規格は基礎的な材料特性や構造を定めているため
更新スパンが長く、1994年の改正版が現在の最新バージョンとして扱われている。

実務におけるポイント

JISとJECの使い分け方法

設計や機器の仕様確認の際、「JISとJEC、どちらを見ればいいのか?」と迷うことがあるが
現在の標準的な運用は以下の通り。

  • JIS C 3109:1994
    一般的な国家規格としての要件や、基本的な材料仕様を確認する場合に参照する。
  • JEC-3404:2022
    電気学会の最新の指針が必要な場合や
    電力系統・送配電網向けのより詳細な技術基準が求められる場合に参照する。

仕様書を作成・確認する際は、対象となる設備がどちらの規格を
要求しているかを明確にしておく必要がある。

実務上の豆知識として、JISの正式名称の変更がある。
2019年7月1日の法改正に伴い、以下の通り名称が変更された。
●旧名称: 日本工業規格
●新名称: 日本産業規格

規格の内容や番号(C 3109など)はそのままだが、名称のみが読み替えられて運用されている。
過去の図面や古い仕様書には「日本工業規格」と記載されていることが多いが
現在新たに作成する書類やお客様への提出資料では「日本産業規格」と表記するのが適切となる。

アルミ電線の主な使用場所と他電線との比較

アルミ電線の主な使用場所

アルミ電線は、その「軽さ」を最大限に活かせる場所で主に使用される。

  • 架空送電線・配電線:
    鉄塔や電柱に張る電線。
    重量が軽いほど支持物(鉄塔など)の強度を下げることができ、建設コストを大幅に削減できる。
    引張強度を持たせるために、中心に鋼線を入れた「鋼心アルミより線(ACSR)」が一般的。
  • 屋外・屋内の大型母線
    変電所などの大電流が流れる母線(バスバー)にも
    軽量で安価なアルミ管やアルミ導体が使用されることがある。

実務での捉え方

アルミ線は銅線に比べて導電率が約60%しかないため、同じ電流を流すためには
アルミ線の方が断面積を大きく(太く)する必要がある。
しかし、太くしたとしても重量は銅線の半分以下に収まり、さらに材料費も安価となる。

「太くなってもいいから、とにかく軽くて安い方が良い」
という架空線路のような環境ではアルミ電線が選ばれ
「限られたスペース(電線管や機器内)に細く収めたい」
という環境では軟銅線が選ばれる、という使い分けがされている。

アルミ電線と銅電線の比較表

電線の素材として代表的な「アルミ」と「銅(硬銅・軟銅)」の特性を比較表にまとめました。

比較項目アルミ線(硬アルミニウム線)銅線(硬銅線)銅線(軟銅線)
導電率(電気の通しやすさ)約61%
同じ電流を流すためには、アルミは銅の約1.6倍の断面積(外径で約1.3倍)が必要になる
約97%100%以上(基準)
比重(重さの目安)約2.7(非常に軽い)
同体積であればアルミは銅の約1/3の軽さ
約8.9(重い)約8.9(重い)
引張強さ(機械的強度)銅に劣る高い低い(柔らかい)
コスト・価格変動安価で比較的安定高価で変動が大きい高価で変動が大きい
主な用途架空送配電線、大型母線架空線(特殊用途)、接地線ケーブル導体、屋内配線、機器内配線

※導電率は標準軟銅を100%とした場合の概算値。

まとめ

  1. 規格の使い分け
    最新の技術基準・電力系統向けなら「JEC-3404:2022」
    一般的な国家規格の基礎仕様なら「JIS C 3109:1994」を参照する。
  2. 名称の注意
    JISは現在「日本産業規格」が正式名称。書類作成時は要注意。
  3. 採用の理由
    導電率は銅に劣るが、圧倒的な「軽さ」と「安さ」により
    架空送電線などの電力インフラを支える主役となっている。

参考資料

・JEC-3404:2022 アルミ電線(電気学会 電気規格調査会)
・JIS C 3109:1994 硬アルミニウムより線(日本産業規格)
・経済産業省 広報資料(2019年のJIS名称変更に関する通達)
・各種電線メーカー技術資料(アルミ・銅の導電率、比重、引張強さ等の比較データとして)

ななし

はじめまして、当ブログ「名無し電気管理事務所」を運営している名無しと申します。 ここでは、私の経歴や当ブログの運営目的についてご紹介します。 1. 保有資格 実務に関わる以下の国家資格を保有しています。 第3種電気主任技術者(2023年取得) 第1種電気工事士 建築物環境衛生管理技術者 2. 経歴・実務経験 電気保安・ビルメンテナンスの業界で約7年の実務経験があります。 現在は電気保安法人にて、保安業務従事者として勤務しています。