電気料金の慢性的な高騰や、世界的な脱炭素(カーボンニュートラル)への要求が高まる昨今
ビルや工場を管理する電気主任技術者・設備管理者にとって
「省エネ対策」は単なるコスト削減を超えた経営課題となっている。
現場での実践ハードルが低く、かつ効果が出やすい3大負荷設備(照明・空調・動力)の対策手法について
深掘りしていく。
照明設備のLED化:確実で波及効果の大きい省エネ
最も手軽に着手でき、経営層に対しても
投資回収シミュレーション(ROI)を示しやすいのが照明設備の更新となる。
空調設備(エアコン)の効率化:運用改善と自動化
ビルや施設において、全消費電力の空調が占める割合は3〜4割に達することも珍しくないため
空調は「日々のメンテナンス」と「制御システム」の両輪で電気代の削減を目指す。
① 投資コスト「ゼロ」から始める運用・保守対策
② 自動制御(デマンドコントロール)の導入
動力設備(ポンプ・送風機)の回転制御:インバータの威力
工場や大型ビルで稼働する三相誘導電動機(モータ)は
制御の工夫次第で劇的な省エネを実現できる。
ここには物理的な法則が深く関わっている
消費電力は「回転数の3乗」に比例する(ファン則)
ポンプや送風機において、風量や流量をダンパやバルブで絞るのではなく、「モータ自体の回転数」を落として制御した場合、消費電力は回転数の3乗に比例して低下する。
【具体例】わずかな減速が大きな削減へ
回転数を100%から「80%(0.8)」に落とした場合
消費電力は 0.8 × 0.8 × 0.8 = 0.512 となり
風量を2割減らすだけで、消費電力は約50%(半分)にまで激減する。
これが動力設備における省エネにつながる。
インバータ(VVVF / PWM)制御の活用
可変速制御を実現する代表格が「インバータ」となる。
周波数と電圧をコントロール(PWM制御等)することで
負荷の状況(ピーク時・閑散時)に合わせた最適な回転数でモータを駆動させ
無駄なエネルギーを削ぎ落とすことができる。
補助金の活用と高効率化の提案(ROIの向上)
経営層が省エネ化を躊躇する最大の理由は「初期投資」。
近年は、国や自治体主導の「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金」や
「脱炭素化関連の交付金」が充実している。
LED化、高効率空調(チラー等)への更新、インバータ盤の導入などを計画する際
「どの補助金が使えるか」「補助金を含めた投資回収年数は何年か」までセットで提案できるのが
実務者の仕事となる。
改正省エネ法への対応とデマンドレスポンス
法令基準(改正省エネ法など)は年々アップデートされており
現代では単なる「エネルギー使用量の削減」だけでは不十分となっている。
現場導入時の技術的・人的な注意点
最新設備にはリスクも伴うため
現場を知る人間の目配りが必要となる。
- 資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」
工場・事業場向けの省エネ手法(照明・空調・動力の運用改善)や、改正省エネ法における非化石エネルギー転換、需要最適化(デマンドレスポンス)の公式ガイドライン。- 一般財団法人 省エネルギーセンター(ECCJ)
「省エネチューニングマニュアル」などにおいて、空調のショートサーキット防止策や、インバータ導入による風量制御の削減効果(消費電力が回転数の3乗に比例するファン則)
- 一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)「高調波抑制対策ガイドライン」
インバータ(汎用インバータ)から発生する高調波ノイズのメカニズムと、進相コンデンサの焼損を防ぐための交流・直流リアクトル(ACL/DCL)設置要件に関する技術基準。- 一般社団法人 日本照明工業会(JLMA)
LED照明の投資回収シミュレーション、長寿命化によるメンテナンスコスト削減
および発熱量低下に伴う空調冷房負荷への波及効果に関する統計データ。