誘電正接の概略まとめ
誘電正接とは、交流電圧が絶縁体に印加された際に、エネルギー損失の大きさを表す指標のこと。
理想的な絶縁体は電気エネルギーを全く損失しないが、現実の絶縁体ではわずかに
エネルギーが熱などに変換されて失われる。この損失の度合いを示すのが誘電正接。
具体例
交流回路において、絶縁体に流れる電流は、理想的には印加された電圧に対して90度進んだ位相を持つ(容量性電流)。がエネルギー損失が存在すると、この位相が90度よりもわずかに遅れる。
この位相のずれ(下記図AA’の位相差)をδと呼び、その正接(タンジェント)であるtanδが誘電正接となる。
誘電正接の意味合い
誘電正接の値が小さいほど、エネルギー損失が少なく、良質な絶縁体であることを意味する。
逆に、誘電正接の値が大きいと、エネルギー損失が大きく、絶縁体としての性能が低い、
あるいは劣化している可能性が考えられる。
誘電正接の重要性
誘電正接は、特に以下の点で重要視される。
- 絶縁体の品質評価: 製造された絶縁材料や部品の品質を評価する指標として用いられる。
低い誘電正接を持つ材料ほど、高品質であると判断できる。 - 絶縁体の劣化診断: 使用中の電気機器や絶縁体の誘電正接を測定することで
絶縁体の劣化状態を診断することができる。
誘電正接の値が上昇している場合は、絶縁体の劣化が進んでいるサインである可能性がある。 - 高周波回路における損失評価: 高周波の交流電流が流れる回路では
絶縁体のわずかなエネルギー損失も無視できなくなるため
誘電正接が回路全体の性能に影響を与える。
低誘電正接の絶縁材料を選ぶことで、高周波回路の損失を低減できる。 - コンデンサの性能評価: コンデンサの誘電体(絶縁体)の誘電正接は、コンデンサのエネルギー損失を
示す重要な指標となる。
低い誘電正接のコンデンサほど、効率よくエネルギーを蓄えたり放出したりできる。