逆電力継電器RPRについての基礎知識まとめ

逆電力継電器 (RPR: Reverse Power Relay) は
電力系統において電力の流れの向きを監視し、通常とは逆方向の電力(逆潮流)を検出した際に動作する保護継電器。JEMA(日本電機工業会)の制御器具番号では「67P」と表記されることもある。

主に、自家消費型太陽光発電システムなど、電力系統に接続された分散型電源において
非常に重要な役割を果たす。

逆電力継電器 (RPR) は、売電契約をしない自家消費型太陽光発電システムにおいて
電力系統の安定と安全を確保するために不可欠な保護装置のこと。

逆潮流を検知し、発電システムを停止させることで、電力会社への影響や単独運転などの危険を防ぐ。
適切な設置と運用、そして可能な限りRPRを動作させないための電力制御が
自家消費型太陽光発電を導入する上で非常に重要となる。

RPRの基本的な役割

RPRの主な役割は、「逆潮流の防止

逆潮流とは
通常、電力は電力会社(送電網)から需要家(工場や家庭など)へと流れてくる。
しかし、太陽光発電などで自家発電している場合、自家発電量が自家消費量を上回ると
余剰電力が電力会社の送電網側へ逆流してしまうこと
がある。
=逆潮流」
売電契約をしている場合はこの逆潮流は問題ないが
売電契約をしていない「自家消費型」の太陽光発電システムでは、逆潮流が禁止されている。

RPRの働き

自家消費型太陽光発電システムが電力系統に接続されている箇所(受電点など)に設置され
電力の向きを常に監視している。
もし、自家発電した電力が自家消費を上回り、電力会社の送電網へ逆流しようとすると
RPRがそれを「逆電力」として検知する。
逆電力を検知すると、RPRは信号を出力し、パワーコンディショナー(PCS)を停止させたり
遮断器(ブレーカー)を開放させたりして、太陽光発電システムからの電力供給を停止させ、逆潮流を防止する。

RPRの必要性について

電力系統の保護と安定

  • 電力会社は、需要と供給のバランスを常に保つことで、電力系統の周波数や電圧を安定させている
  • 契約外の逆潮流が発生すると、電力会社の需給バランスが崩れ、電力系統の安定性を損なう可能性がある。
    これは、電力品質の低下や、最悪の場合、広範囲の停電につながる恐れもある。
  • 特に、電力会社側から見ると、契約していない電力が送電網に入ってくることは
    想定外の電流の発生や、保護協調(事故時に適切なブレーカーが動作すること)の妨げになる可能性がある。

安全性の確保(単独運転の防止)

  • 電力会社からの送電が停止した(停電した)場合
    太陽光発電システムは安全のために連系を停止する(解列する)必要がある。
  • RPRがない状態で逆潮流が発生していると、停電した電力系統に対して自家発電設備が電力を
    供給し続けてしまう「単独運転」という危険な状態になる可能性がある。
  • 単独運転は、停電復旧作業を行う電力会社の作業員が感電する危険性や
    復旧時の電力系統の混乱を引き起こすため、厳しく禁止されている。

    RPRは、逆潮流を検知することで単独運転を未然に防ぐ役割も果たす。

法的・契約上の要件

  • 電力会社との系統連系契約において、自家消費型太陽光発電システムの場合
    逆潮流を防止するためのRPRの設置が義務付けられていることがほとんど。
    (系統保護と安全確保のため)

RPRの動作原理

  • 計器用変流器 (CT: Current Transformer): 回路を流れる電流を検出する。
  • 計器用変圧器 (VT: Voltage Transformer): 回路の電圧を検出する。
  • 継電器本体: CTとVTからの信号を入力として受け取り、電力(P=V×I×cosθ)を計算する。
    設定された逆電力の閾値(整定値)を超えた場合に、動作信号を出力する。

    ※RPRの感度は非常に高く、定格電力の0.2%程度の微小な逆電力でも検出・動作するように設定されることがあります。この整定値は、電力会社との協議で決定される。

RPRの継電器試験はメーカーによって試験方法が異なることが多いため、事前にメーカーの取り扱い説明書を確認するのを怠らないこと。

RPRの設置場所

RPRは、太陽光発電システムと電力会社の送電網との間で、電力会社側に近い場所
(受電点付近のキュービクル内など)に設置される。

適切な場所に設置されないと、逆潮流を正確に検知し、防止する役割を果たせない。
設置後には、その位置を示す配線図を電力会社に提出する必要がある。

RPRを動作させないための工夫

RPRは逆潮流を検知すると発電を停止させるため、RPRが頻繁に動作すると
自家消費型のメリット(電気代削減)が薄れてしまう。
そのため、極力RPRを動作させずに自家消費を最大化するための工夫が重要になる。

  • 出力制御装置の設置: 太陽光発電の出力(パワーコンディショナーの出力)を
    電力消費量に応じて自動的に制御するシステム。
  • 負荷追従制御オプション: リアルタイムで構内の消費電力量を計測し
    その量に合わせて発電量を調整する機能を持つパワーコンディショナーや制御システム。
  • 蓄電池の導入: 余剰電力を蓄電池に一時的に貯めることで、系統への逆潮流を防ぐ。
  • 生産計画の調整: 休日など電力消費が少ない日に発電量が大きくなる場合は、設備を稼働させたり、蓄電したりする計画を立てる。
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