ピーク負荷についての基礎知識まとめ

ピーク負荷(Peak Load)とは
特定の期間(1日、1週間、1ヶ月、1年など)において、電力(またはその他のエネルギー)の需要が最も高くなる時点、あるいはその時の需要量を指す。
電力系統や個々の施設、機器において、その設計や運用に大きな影響を与える重要な概念。

ピーク負荷の発生要因

時間帯による変動

  • 日中: 特に夏季は、昼間のオフィスや商業施設での冷房使用、工場稼働などにより電力需要が大きく増加し
    午後の早い時間帯(例:14時〜16時頃)にピークを迎えることが多い
    ※冬季は暖房需要で午前中や夕方にピークが来ることもある。
  • 夜間・深夜: 一般的に電力需要は低くなる。

季節による変動

  • 夏季: 冷房需要の増加により、年間で最も大きなピーク負荷が発生することが多い。特に猛暑日は顕著。
  • 冬季: 暖房需要の増加により、冬にもピーク負荷が発生する。
  • 中間期(春・秋): 冷暖房需要が少ないため、比較的負荷が低くなる。

曜日や休日による変動

  • 平日: オフィスや工場の稼働により、昼間の需要が高くなる。
  • 休日: 工場の稼働が停止したり、家庭での使用が増えたりと、平日のピークとは異なるパターンを示す。

気象条件

  • 気温: 夏の気温上昇は冷房需要を急増させ、冬の気温低下は暖房需要を急増させる。
    一般的に、気温が1℃上昇(下降)するだけで
    大規模火力発電所1基分に相当する需要が増加すると言われている。
  • 天候: 晴れや曇り、雨などの天候も照明や冷暖房需要に影響を与える。

社会経済活動

  • 経済活動の活発化は、工場や商業施設の稼働率を高め、電力需要を増加させる。
  • 特定のイベント(例:大規模なスポーツイベント、テレビ番組)なども一時的なピークを生じさせることがある。

ピーク負荷が電力系統に与える影響

設備投資の増加
電力会社は、常に最大の需要(ピーク負荷)に対応できるよう
発電所、送電線、変電所などの設備容量を確保しておく必要がある。
このため、ピーク負荷が高いほど、より多くの設備が必要となり、設備投資が増加する。
しかし、これらの設備はピーク時以外は遊休状態となるため、設備の利用率が低下し
コスト効率が悪くなる。

発電コストの上昇
ピーク時の需要に対応するためには、起動・停止が容易で出力調整が迅速に行える発電所
(石油火力発電所や揚水式水力発電所など)を稼働させる必要がある。
これらの発電所は、ベースロード電源(原子力、石炭火力など)に比べて発電コストが高いことが多く
結果として電力全体の供給コストが上昇する。

系統の安定性への影響
ピーク需要が供給能力を上回る場合、電力不足となり
最悪の場合には大規模停電(ブラックアウト)につながる可能性がある。
急激な需要変動に対応するためには、発電機の出力調整能力が求められるが
限界を超えると周波数や電圧の安定性が損なわれるリスクがある。

環境負荷の増大
ピーク対応発電所は、化石燃料(特に石油)を使用するものが多いため
ピーク時に稼働することで温室効果ガス排出量が増加し、環境負荷が高まる。

    ピーク負荷対策(負荷平準化)

    上記の課題を解決し、電力の安定供給と効率的な運用を図るために
    負荷平準化」と呼ばれる様々なピーク負荷対策が実施されている。

    ピークカット(Peak Cut)

    ピーク時の電力使用量そのものを削減する対策。
    デマンドレスポンス(DR): 電力会社が、電力需要のひっ迫時に大口需要家や一般家庭に節電を要請し
    協力者に報酬を支払う制度。

    ピークシフト(Peak Shift)

    電力使用の時間をずらし、ピーク時の需要を他の時間帯(通常は夜間や休日の低負荷時)に移行させる対策。

    • 蓄熱システム: 夜間の安価な電力で熱を蓄え、昼間の冷暖房に利用する。
    • 電気自動車(EV)のスマート充電: 夜間に充電し、昼間のピークを避ける。
    • 生産スケジュールの変更: 工場などで、電力消費量の多い作業をオフピーク時間帯に実施する。
    • 時間帯別料金制度: ピーク時の電気料金を高く、オフピーク時の料金を安く設定することで、消費者の行動を誘導する。

    ボトムアップ(Bottom Up)

    • 需要の少ない夜間や休日の電力消費を増やす対策。
      電力系統全体の負荷率(平均負荷/最大負荷)を向上させ、設備稼働率を高めることで
      電力供給コストを平準化する効果がある。


      例:蓄熱式給湯器、電気自動車の夜間充電の推奨など。

    ピーク負荷とベースロード負荷・ミドルロード負荷

    電力需要は時間的な特性から、以下の3つに区分される。

    ベースロード負荷(Base Load

    年間を通じてほぼ一定して存在する電力需要。
    24時間稼働している工場や、家庭の常時使用電力などが含まれる。

    • 対応する電源:原子力発電、石炭火力発電、水力発電(流れ込み式)、地熱発電など、燃料費が安く、一度稼働すると停止しにくい、安定した連続運転に適した電源。

    ミドルロード負荷(Middle Load)

    季節や日中の活動によって変動する中程度の電力需要。

    • 対応する電源:LNG火力発電など、ベースロード電源の次に発電コストが安く
      比較的機動的な出力調整が可能な電源。

    ピークロード負荷(Peak Load)

    1日や季節の中で一時的に最大となる電力需要。

    • 対応する電源:石油火力発電、揚水式水力発電など、発電コストは高いものの
      短時間で出力調整が可能で、緊急時に迅速に対応できる電源。
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