ベースロード電源についての概略
ベースロード電源とは
季節、天候、昼夜を問わず、安定して、継続的に、低コストで電力を供給できる電源のこと。
電力システム全体の「屋台骨」となる部分を支える、最も基本的な電源として位置づけられる。
電力は、需要と供給のバランスが常に一致していなければ、大規模な停電(ブラックアウト)を
引き起こす可能性がある。そのため、発電所は、需要に合わせて柔軟に出力を調整する必要がある。
このうち、最低限必要な電力(ベースロード)を安定的に供給するのがベースロード電源の役割となる。
ベースロード電源が必要な理由
電力需要は、時間帯や季節によって大きく変動する。
例えば、日中のオフィス街や夏のエアコン使用、冬の暖房使用などにより、電力需要は大幅に増加する。
一方で、深夜や早朝は需要が低下する。
こうした変動する電力需要に対応するため、電源は以下の3つの種類に分類され
それぞれ異なる役割を担っている。
ベースロード電源
電力需要の最低限の量を、24時間365日安定的に供給する電源。
一度稼働させると、停止や出力調整が難しく、運転コストが低いのが特徴。
例:石炭火力、原子力、一般水力(流れ込み式)、地熱
ミドル電源
ベースロード電源だけでは賄いきれない、通常の電力需要の変動に対応する電源。
比較的、出力調整がしやすく、ベースロード電源に次いで発電コストが低いのが特徴。
例:LNG(液化天然ガス)火力、LPガス火力
ピーク電源
電力需要が最も高まる時間帯(ピーク時)に、短期的に電力を供給する電源。
起動・停止や出力調整が非常に速く、柔軟性に優れている一方で、発電コストが高いのが特徴。
例:石油火力、揚水式水力
これらの電源を適切に組み合わせることで、電力の安定供給を実現している。
ベースロード電源の種類と特徴
- 石炭火力発電
特徴
燃料となる石炭が世界中に広く分布しており、比較的安価で調達が安定しているため
発電コストが低い。一度稼働させると、継続的な運転に適しており、大規模な発電が可能。
課題
燃焼時に多量の二酸化炭素(CO2)を排出するため、地球温暖化対策の観点から環境負荷が大きい。
最新技術(高効率化やCCS: 炭素回収・貯留技術)の導入が進められているが
根本的なCO2排出ゼロは難しい。
- 原子力発電
特徴
燃料となるウランの使用量が少なく、一度装填すると長期間にわたって安定的に発電が可能。
発電時にCO2を排出しないため、地球温暖化対策に貢献する。発電コストも比較的低い。
課題
事故発生時のリスクが極めて高く、放射性廃棄物の最終処分問題、立地問題、国民の安全保障上の懸念など
社会的な受容性が低い。
- 一般水力発電(流れ込み式)
特徴
河川の水をそのまま利用して発電するため、燃料費がかからず、発電コストが極めて低い。
発電時にCO2を排出しないクリーンなエネルギー。天候に左右されにくい安定性がある。
課題
発電所を建設できる場所が限られており、新たな大規模開発は難しい。
環境への影響(生態系、景観など)も考慮する必要がある。
- 地熱発電
特徴
地下の地熱エネルギーを利用するため、天候や昼夜に左右されず、24時間安定して発電が可能。
CO2排出量が非常に少ないクリーンなエネルギーで、国産エネルギーとしてエネルギー自給率向上に貢献する。
課題
発電可能な場所が限られており(火山帯など)、開発に時間がかかる。
温泉地との利権問題や、国立公園内での開発制限がある。
- バイオマス発電
特徴
木材、廃棄物などのバイオマス燃料を利用し、安定的に発電できる。
カーボンニュートラルな特性を持ち、廃棄物処理にも貢献する。
課題
燃料の収集・運搬コストが高く、燃料の安定供給や持続可能性の確保が課題。
燃料の質によっては環境負荷が生じる可能性もある。
ベースロード電源のメリットとデメリット
メリット
- 安定供給
季節や天候、昼夜に左右されず、継続的に一定量の電力を供給できるため、電力系統の安定化に不可欠。
- 低コスト
燃料費が安価であるか、一度設備を建設すれば燃料費がかからないため
長期的に見ると発電単価が低く抑えられる。
- 効率性
一度起動すると長時間稼働するため、効率的な発電が可能。
デメリット
- 出力調整の難しさ
一度起動すると停止や出力調整が難しいため、電力需要の変動に対応しにくいという側面がある。
- 初期投資が高い
大規模な発電所が多く、建設には多大な初期投資が必要。
- 環境負荷
石炭火力のようにCO2排出量が多いものや、原子力のようにリスクを伴うものがあるため
環境面や安全性に課題を抱える場合がある。
- 立地制約
原子力や水力、地熱などは、建設できる場所が限定される。