太陽光発電における余剰売電についての基礎知識まとめ

余剰売電についての概略

太陽光発電システムで発電された電力のうち、まずご家庭や事業所で消費し
使いきれずに余った電力を電力会社に売却する仕組みを「余剰売電」と言う。

これに対し、発電した電力をすべて電力会社に売却する仕組みを「全量売電」と言うが
住宅用(出力10kW未満)の太陽光発電システムでは、原則として余剰売電のみが認められている。

余剰売電のイメージ図
太陽光発電メンテナンスガイドより画像引用

余剰売電の仕組みと流れ

  1. 発電
    太陽光パネルで直流の電気を生成する。

  2. 変換
    パワーコンディショナーで直流電力を交流電力に変換する。

  3. 自家消費
    変換された交流電力は
    まずご家庭や事業所内の電気製品(照明、エアコンなど)で消費される。

  4. 売電(余剰電力の発生)
    自家消費してもなお電力が余る場合
    その余剰電力が電力会社の送電網に送られる。

  5. 売電量計測
    売電用メーター(売電メーター、またはスマートメーター)により
    電力会社に送られた電力量が計測される。

  6. 買取
    計測された電力量に応じて、電力会社から売電収入が支払われる。

雨の日や夜間など、太陽光発電で電力が不足する時間帯は
自動的に電力会社から電気を購入して使用する。

固定価格買取制度(FIT制度)について

余剰売電の大部分は、国の「固定価格買取制度(FIT制度)」に基づいて行われている。
この制度は、再生可能エネルギーの普及を目的として、発電した電力を一定期間
固定価格で電力会社が買い取ること
を義務付けている。

  • 買取期間
    住宅用太陽光発電(10kW未満)の場合
    10年間が固定価格での買取期間となる。

  • 買取価格
    買取価格は、太陽光発電設備の設置費用などに応じて、毎年見直し・決定される。
    制度が始まった当初は高額だったが、年々下落傾向にある。
    ただし、一度認定された買取価格は、そのシステムの買取期間中(10年間)は変わらない。

余剰売電のメリット・デメリット

メリット  

  • 電気代の削減+収入
    自家消費で電気代を削減できるだけでなく、余った電気を売ることで売電収入が得られる。
  • 環境貢献
    再生可能エネルギーの普及に貢献し、CO2排出量削減に貢献できる。

  • 初期費用の回収
    売電収入と電気代削減により、太陽光発電システムの初期投資費用を回収する助けになる。

デメリット

  • 売電価格の下落
    FIT制度の買取価格は年々下落しており、以前ほど大きな売電収入は見込みにくくなっている。
  • 卒FIT後の課題
    10年間の固定価格買取期間が終了した後(「卒FIT」)は、売電価格が大幅に下がる。
    電力会社や新電力会社との個別の契約が必要になり、多くの場合
    売電単価は非常に安価になる(大手電力会社で8円前後、新電力でも高くて11円程度が一般的)。
  • 手続きの手間
    太陽光発電システムの設置にあたり、電力会社への系統連系申請や
    国の事業計画認定申請など、いくつか手続きが必要になる(多くは施工業者が代行してくれる)。
  • 天候による影響
    発電量は天候に左右されるため、売電収入も変動する。
  • 出力制御の可能性
    地域によっては、電力系統の安定化のため、発電量が一時的に抑制される「出力制御」が行われることがある。
    これにより、期待通りの売電ができない可能性もある。

卒FIT後の選択肢について

10年間の固定価格買取期間が終了した後は
以下のような選択肢がある。

現在の電力会社で売電を継続する

買取期間満了後に自動的に切り替わるプランや、個別の契約プランがある。
ただし、買取価格は大幅に下がる。

    新電力会社へ売電する

    大手電力会社よりも高い買取価格を提示する新電力会社も存在する。

    自家消費を強化する(売電しない・減らす)

    • 蓄電池の導入
      発電した電力を蓄電池に貯めておき、夜間や悪天候時に自家消費することで
      電力会社から電気を買う量を減らす。現在の売電単価よりも、電力会社から購入する電気料金の方が高いため
      売電するよりも自家消費を増やす方が経済的なメリットが大きいケースが増えている。
    • エコキュートなど給湯器の活用
      昼間に発電した電力を使ってお湯を沸かすなど、効率的に自家消費を増やす方法もある。
    • EV(電気自動車)との連携(V2H)
      EVを蓄電池代わりとして活用し、発電した電力をEVに充電し
      必要な時にEVから家庭に給電することで、自家消費率を高める。

    近年の余剰売電傾向

    近年は、売電単価の下落と電気料金の高騰により
    売電するよりも自家消費を優先する傾向が強まっている。

    余剰売電は、太陽光発電導入の大きな魅力の一つだが
    制度や価格の動向、ご自身のライフスタイルなどを総合的に考慮し
    最適な活用方法を検討することが重要。

    現在のFIT制度下において、住宅用および発電出力10kW以上50kW未満の産業用の場合
    余剰売電のみを選択することができる。
    一方、発電出力50kW以上の場合は、余剰売電に加えて「全量売電」という方法も選択が可能
    売電期間は、住宅用が10年、産業用が20年と定められている。

    また、電力の買取価格は年度ごとに改定されており
    住宅用の場合、2022年度は17円、2023年度は16円となっている。
    これは、FIT制度が導入された2012年度(42円)の半分以下の価格となる。
    10kW以上50kW未満の価格も同様に、年々下落している。

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