絶縁抵抗についての概略
絶縁抵抗とは、電流が流れる電路(電気が通っている部分)と
それ以外の部分(大地や別の電路、機器の筐体など)との間の電気の流れにくさ
=絶縁性を示す値。
電気を通しやすい物質は「導体」、電気を通しにくい物質は「絶縁体」と呼ばれる。
絶縁抵抗は、この絶縁体がどれだけ電気を通さないか(抵抗値が高いか)を数値化したもののこと。
基本単位はオーム(Ω)となるが、非常に大きな値になるため
一般的には100万オームを意味するメガオーム(MΩ)が用いられる。
もし絶縁抵抗が低い=絶縁性が悪い状態だと、電気が本来流れてはいけない場所に漏れ出てしまう漏電が発生する。
漏電は、感電や火災、機器の故障などの重大な事故につながる可能性があり、非常に危険。
絶縁抵抗の測定が重要である理由
絶縁抵抗の測定は、電気保安の基本であり、以下の目的で行われる。
漏電の防止
絶縁抵抗が低いと漏電のリスクが高まる。
定期的に測定することで、漏電の兆候を早期に発見し、事故を未然に防ぐことが可能。
絶縁破壊の発見
電線や機器の絶縁材は、経年劣化や外的要因によって傷つき
絶縁性能が低下することがある
=絶縁破壊
絶縁抵抗測定は、この絶縁破壊が発生していないかを確認するために行われる。
電気設備の安全性確保
建物や工場の電気設備、家電製品など、あらゆる電気を使用する場所において
絶縁抵抗が適切に保たれていることは、安全な運用に不可欠となる。
絶縁抵抗の測定方法
絶縁抵抗を測定するには
「絶縁抵抗計(メガテスター、メガーとも呼ばれる)」という専用の測定器を使用する。
基本的な測定手順
- 測定対象の電源をOFFにする
最も重要なのが、測定対象の回路を確実に停電状態にすること。
電源が入ったまま測定すると、感電の危険があるだけでなく、正確な測定ができない。
- 負荷を切り離す(線間測定の場合)
電路間の絶縁抵抗を測定する場合は、接続されている電気機器(負荷)を全て取り外す必要がある。
- 検電器で停電確認
必ず検電器を使用して、測定箇所に電圧がかかっていないことを確認する。
- 絶縁抵抗計の設定
測定する電圧(一般的に250V、500V、1000Vなど)を設定する。
※下記表参照
- プローブの接続
絶縁抵抗計のリード線(プローブ)を、測定したい導体(電線など)と
接地されている部分(アース線や金属筐体など)に接続します。
※線間絶縁抵抗を測る場合は、測定したい電線同士に接続する。
- 測定
絶縁抵抗計の測定ボタン(TESTボタンなど)を押す。
測定器が高電圧を印加し、流れる微小な電流から抵抗値を計算して表示する。
- 値の読み取りと判断
表示された絶縁抵抗値を読み取り、基準値と比較する。
一般的に、法律などで定められた基準値(例えば低圧電路では0.1MΩ以上など)がある。
- 放電
測定後は、被測定物に電荷が残っている場合があるため
絶縁抵抗計の放電機能を使って放電させるか、適切に放電させる。
- 復電
測定が完了し、安全が確認できたら電源を戻す。
電気設備技術機基準第58条
絶縁劣化の原因と対策
絶縁材は、様々な要因で劣化し、絶縁抵抗が低下する。
主な劣化原因
- 経年劣化(時間経過)
長期間の使用により、材料そのものが劣化する。
- 温度・湿度
高温多湿の環境は、絶縁材に水分を吸収させたり、分解を促進したりして
絶縁抵抗を低下する。急激な温度変化による結露も原因となる。
- 紫外線
屋外や蛍光灯などの紫外線に長時間さらされると、絶縁材が劣化する。
- 電気的要因
- 過電圧: 雷サージや異常な電圧がかかることで、絶縁材にダメージを与える。
- 過電流: 規定以上の電流が流れることで、熱が発生し、絶縁材が劣化する。
- 機械的要因
振動や衝撃、ケーブルの引き回しなどによる物理的な損傷。
- 化学的要因
油、薬品、ホコリなどが絶縁材に付着し、絶縁性能を低下させる。
特にホコリと湿気が結合すると、導電路を形成しやすくなる(トラッキング現象)。
対策
- 定期的な点検と測定
最も重要であり、定期的に絶縁抵抗測定を行い、劣化の兆候を早期に発見する。
- 環境改善
高温多湿を避けるために換気を良くする、除湿する、適切な温度管理を行う。
- 適切な材料の選定
使用環境に応じた耐熱性、耐湿性、耐薬品性、耐紫外線性を持つ絶縁材を選定する。
- 過負荷・過電圧対策
ブレーカーや避雷器の設置、適切な負荷設計により、過電流や過電圧から設備を保護する。
- 清掃
ホコリや油汚れを除去し、絶縁材の表面が汚染されないようにする。
- 適切な施工
ケーブルの曲げ半径を適切にする、固定を確実に行うなど、施工時の物理的な損傷を防ぐ。