電力ひっ迫の概略
電力ひっ迫とは、電力の需要(使用量)が供給(発電量)の上限に迫り
予備の電力がほとんどない状態を指す。
電力は基本的に貯めておくことが難しく、需要と供給が常に一致している必要がある。
このバランスが崩れて需要が供給を上回ると、大規模な停電(ブラックアウト)につながるリスクが高まる。
このため、電力の安定供給に必要な予備電力の割合(予備率)が重要となる。
一般的に、電力需給が安定している状態は予備率が3%以上とされており
これ以下になると「電力ひっ迫注意報」「電力ひっ迫警報」などが発令され、節電が呼びかけられる。
電力需給ひっ迫注意報
予備率が5%を下回ると予想される場合に発令。
電力需給ひっ迫警報
予備率が3%を下回ると予想される場合に発令。
電力ひっ迫が起こる主な原因
電力ひっ迫は、主に以下の要因が複合的に絡み合って発生する。
異常気象による需要の急増
- 猛暑や寒波
夏の猛暑によるエアコンの使用や冬の寒波による暖房の使用が急増し
電力需要が大幅に増加する。
- 急激な気温の変化
例年のデータに基づいた電力需要予測を上回る気温の変化が起こると
需要への対応が追いつかなくなることがある。
供給力の減少
- 火力発電所の老朽化・停止
日本の電力の多くを支えてきた火力発電所が
老朽化や燃料価格の高騰、脱炭素の流れで休廃止されるケースが増えている。
- 再生可能エネルギーの変動
太陽光発電や風力発電は天候に左右されるため
曇りや無風の日が続くと発電量が大幅に低下する。
- 原子力発電所の停止
東日本大震災以降、多くの原子力発電所が停止したままで
ベースロード電源(安定的に発電する電源)が減少している。
- 災害による発電所の停止
地震や台風などの自然災害により、発電所が停止してしまうことがある。
世界情勢の悪化
- 燃料価格の高騰
ウクライナ情勢などにより、火力発電の燃料である天然ガスや石炭の価格が高騰し
安定的な調達が困難になる場合がある。
電力ひっ迫への対策
供給側の対策
- 発電所の再稼働・増設
停止している原子力発電所の安全確認を進め、再稼働を検討するほか
老朽化した火力発電所の代替となる新たな発電設備を確保する。
- 地域間連系線の増強
- 電力系統のエリア間を結ぶ送電線を強化し
電力に余裕のある地域から不足している地域へ融通できるようにする。
- 蓄電池の導入
電力需要の低い時間帯に発電した余剰電力を蓄えておき
需要がピークとなる時間帯に利用することで、需給バランスを調整する。
需要側の対策
- デマンドレスポンス
電力会社が消費者に節電を呼びかけたり
節電量に応じてインセンティブを付与したりする仕組み。
- 家庭での節電
- エアコン: 設定温度を適切に調整する(夏は28℃、冬は20℃が目安)。フィルターをこまめに清掃する。
- 照明: 不要な照明をこまめに消す。
- その他: 冷蔵庫の開閉を減らす、家電製品の買い替え(省エネ性能の高い製品を選ぶ)など。