インバータの原理についての備忘録

インバータは、直流 (DC) 電力を交流 (AC) 電力に変換する電気機器のこと。
この変換によって、モーターの回転速度やポンプの流量などを自由に制御が可能となる。

インバータの仕組み


インバータの基本的な仕組みは、半導体スイッチ(IGBTやMOSFETなど)を高速にオン/オフすることで
直流電圧をパルス状に切り刻み、これをPWM (Pulse Width Modulation)制御によって交流の波形を作り出すこと。

  • 整流部: 外部から入ってきた交流電力をダイオードなどで直流に変換する。
  • 平滑部: 整流された脈流をコンデンサで滑らかな直流にする。
  • インバータ部: 平滑された直流電力を、スイッチング素子を使って所望の周波数と電圧の交流電力に変換する。

インバータの詳細な仕組み

下記図のようにインバータ装置は前段部と後段部に分かれており
交流から直流に変換する前段部の「コンバータ回路」と
直流から交流に変換する後段部の「インバータ回路」によって構成されている。

広い意味でのインバータ装置とは
コンバータ回路とインバータ回路がセットで使われて「交流→交流」への変換になるのに対し
個別のインバータは回路や機能を示しているので、「直流→交流」の変換になる。
このように、とらえ方により「インバータ」の意味が異なってくる。

インバータの原理

直流から交流へ (逆変換装置)

左:回路図  右:インバータ基本原理

上記左図の回路で、負荷に対してスイッチS1、S2がONの状態のときに
S3、S4がOFF、スイッチS1、S2がOFFならS3、S4がONと
それぞれ対になるように一定周期で繰り返すと、負荷に流れる電流の方向が切り替わって
下記図右のようにプラスとマイナスの電圧で出力され、交流が作られる。
実際のインバータのスイッチは、高い周波数で動作する必要があるため
IGBTやパワートランジスタなどの半導体素子が使用される。

また、オンとオフのみでは極性の入れ換えはできても交流の曲線を表現することはできないため
下記図のように出力波形の1サイクル中に多数のパルス列を作り、そのパルス幅を可変して
平均電圧が正弦波状になるように調整する方式が用いられる。
PWM (Pulse Width Modulation) 制御

パルス数が多いほど、平均電圧が正弦波に近づくので
実際のスイッチング速度は数kHz程度と高速になる。

(2) 交流から直流へ

コンバータと平滑用コンデンサは、上記図のように
逆変換装置(インバータ回路)で使用する直流電源を作る部分。

コンバータ

三相交流の場合、下記左図のようにダイオードを6個組み合わせた全波整流回路になる。
この場合、入力電圧が平滑用コンデンサの電圧より高いときのみ電流が流れるので
入力電流は正弦波ではなく、下記右図のように高調波を含んだ、うさぎの耳のようなひずみ波形となる。

左:コンバータと平滑用コンデンサ回路  右:入力電圧・電流波形

平滑用コンデンサ

平滑用コンデンサ(C)は、ダイオードで整流した三相全波整流波形を駆動分の少ない直流に平滑するためのもの。

突入電流抑制回路

最初にコンバータに電源を印加すると
平滑用コンデンサを充電するために大きな突入電流が流れる。
この突入電流を抑制するのが抑制抵抗器(R)となる。

抑制抵抗器は平滑用コンデンサの充電後に短絡される。

(3)V/f制御

電動機の回転数の制御は周波数の制御のみで可能だが、電動機のインピーダンスは周波数に比例するので
電圧はそのままに周波数のみを下げると大きな電流が流れ、電動機が焼損してしまう。

これを防ぐには、周波数だけでなく電圧も同時に変える必要がある。
インバータの周波数と電圧を同時に変える制御V/f制御とよばれる。

一般に、V/f制御では周波数と電圧の比率がほぼ一定になるように運転するが
周波数が低くなると、電圧降下の影響が大きくなりトルクが低下してしまう。
それを補償するため下記図のように低周波数領域では電圧を少し上げる。
トルクブースト(トルク補償)

参考資料

新電気 2023年11月号現場の疑問解決塾 「インバータ」より画像引用

名無し管理事務所