低圧絶縁電線についての基礎知識まとめ

電気設備の技術基準の解釈(以下、電技解釈)第5条では
低圧絶縁電線の構造について「絶縁物で被覆した電気導体であること」と規定され
(下記図参照)
電気使用場所内で使用されている絶縁電線は、電気導体を被覆する絶縁物の種類によって分類される。

低圧絶縁電線は、低圧(交流600V以下、直流750V以下)の電気設備で使用される電線のうち
導体が絶縁体で覆われたもので、特に建物の屋内配線電気機器の配線に広く使われる。

ケーブルと異なり、基本的に絶縁体の上をさらに保護するシース(外装被覆)を持たない単心線を指すことが多い。(ただし、VVFなどのシースを持つものも低圧配線として重要となる。)

図:絶縁電線の構造

低圧の定義

日本の電気設備技術基準において、「低圧」は以下のように定義されている。

  • 交流: 600V以下
  • 直流: 750V以下

低圧絶縁電線は、この範囲の電圧で使用されることが前提となる。

低圧絶縁電線の主な種類と特徴

略称名称絶縁体定格温度主な用途
IV600Vビニル絶縁電線PVC(ポリ塩化ビニル)60∘C最も一般的。屋内配線、がいし引き工事、コンジット(電線管)内配線、盤内配線。
HIV600V耐熱ビニル絶縁電線耐熱PVC75∘CIV線の耐熱性を向上させたもの。許容電流を大きく取れるため、盤内配線や発熱源に近い箇所。
KIV600V電気機器用ビニル絶縁電線PVC60∘C細い素線で構成され柔軟性(可とう性)が高い。電気機器、制御盤、分電盤内の配線。
DV引込用ビニル絶縁電線PVC電柱から建物への引込線として使用。耐候性、耐久性に優れる。
OW屋外用ビニル絶縁電線PVC低圧の架空電線路(電柱と電柱を結ぶ線)。絶縁体がIV線などより薄い。
VVFビニル絶縁ビニルシースケーブル平形PVC60∘C最も一般的な低圧屋内ケーブル。電線管を使わず壁内などに直接埋設できる。線心数(2心、3心など)がある。

重要な特性と規格

① 絶縁抵抗

低圧電路においては、漏電による感電や火災を防ぐため
電気設備に関する技術基準(省令第58条)に基づき
規定された箇所(対地間など)の絶縁抵抗値が一定の値以上であることが求められる。

使用電圧測定電圧絶縁抵抗値
対地電圧150V以下500V0.1 MΩ以上
対地電圧150V超300V以下500V0.2 MΩ以上
300V超500V0.4 MΩ以上

② 許容電流

電線に流すことができる最大の電流値で、電線の太さ(断面積)絶縁体の種類(定格温度)、敷設方法(周囲温度や配線の束ね方)によって決まる。
熱に強いHIV線は、IV線よりも許容電流が大きくなる。

③ ケーブルとの違い

一般的に「絶縁電線」は単心でシース(外装保護被覆)がないものを指す。
(例:IV線、KIV線)
一方、「ケーブル」は絶縁電線の外側をさらにシースで覆い、保護性能を高めたものを指す。
(例:VVF、CV)。
ただし、広義では絶縁電線もケーブルの一種とされることもある。

  • 絶縁電線: 導体 → 絶縁体
  • ケーブル: 導体 → 絶縁体 → シース(外装)

④ 劣化と点検

絶縁電線は、熱、水分、化学物質、機械的な損傷、紫外線などによって経年劣化し、絶縁性能が低下する。
そのため、定期的な絶縁抵抗測定により、健全性を確認することが重要となる。

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