永久磁石可動コイル形計器についての基礎知識まとめ

永久磁石可動コイル形計器の記号

永久磁石可動コイル形計器の目盛板の下を見ると、上図のような記号が表示されている。
U字形磁石(永久磁石)の中に方形コイル(可動コイル)があることをイメージした記号で
本計器が永久磁石可動コイル形計器であることを表している。

永久磁石可動コイル形計器の可動部の構造

左図:バンド支持方式  右図:ピポット支持方式

可動部はの上記のような構造になっている。
可動部の支持には上左図のバンド支持方式と上右図のピボット支持方式があり
現在はバンド支持方式が主流となっている。

バンド支持方式とピボット支持方式の特徴

永久磁石可動コイル形計器の動作原理

上図:永久磁石可動コイル形計器(外部磁石形バンド支持方式)の概要図

永久磁石の作る磁界と可動コイルに流れる電流との間に働く電磁力を利用している。
上右図で、円筒形の軟鉄心はギャップの磁界を放射状の平等磁界にする役目を持っている。

これにより、計器の感度を高くするとともに、平等目盛(等分目盛)にしている。
可動コイルのアルミニウム製の巻枠は、うず電流が流れて制動トルクが働き
指針の振動を抑制する役目もしている。
(上記永久磁石可動コイル形計器の可動部の構造参照)

いま、コイルの平均高さ、平均幅、巻数をそれぞれa [m]、b [m]、nとし
これにI[A]の直流電流を流すと、ギャップの磁束密度がB[T]であれば
コイルに働く駆動トルクTD [N・m]は
TD = BIabn[N・m]
となる。
ここで、コイルがTDを受けて角度θだけ回転したとすると
制御ばねによりθに比例した制御トルクTC [N・m]が発生して
TC = kθ [N・m]となる。
※kはばねの制御定数

コイルは同時に相反する2つのトルクTDとTCを受けて
TD = TCの位置で静止するので、θは次式で求められる。

上式より、回転角θは電流Iに比例して、その目盛は平等目盛になることがわかる。
交流電流を流したときは、可動部分は、その瞬時値についていくことができないので
一周期の平均であるゼロを指示することになり、交流回路では使用できない。

永久磁石可動コイル形計器の特徴

① 目盛が平等目盛なので、指針がどの位置にきても読み取りやすい

② 強力な永久磁石を用いているので、感度が高く、確度も高い

③ 直流用の計器であり、脈流では平均値を指示する

④ 周囲温度、外部磁界の影響が比較的小さい

永久磁石可動コイル形計器のメリット・デメリット

メリット

  • 高感度・高精度
    磁界が強いため、わずかな電流でも大きな駆動トルクが得られ
    高感度かつ高精度な測定が可能。

  • 平等目盛(等間隔)
    駆動トルクが電流の大きさに厳密に比例するため、目盛りの間隔が等しい平等目盛になる。
    これにより、測定値の読み取りが容易となる。

  • 低消費電力
    駆動に必要な電力が小さい。
  • 直流専用
    直流用の指示計器としては広く使用されている。

デメリット

  • 直流専用
    交流を測定した場合、電流の向きが周期的に変わるため
    発生する電磁力(トルク)の平均値がゼロになり、指針が安定せず、正確な測定ができない(
    →振動するだけになる。
  • 整流が必要(交流測定時)
    交流を測定する場合は、整流器(ダイオードなど)を組み合わせて
    直流に変換してから測定する整流形計器として使用される。

整流形計器は、電流の平均値を示すのが特徴。
また、波形のひずみがあると誤差が大きくなる。

  • 外部磁界の影響
    強い外部磁界(近くの機器や電線)の影響を受けると、測定に誤差を生じる場合がある。
  • 設置姿勢による誤差
    重力が可動部に働くため、設置する姿勢(水平、垂直など)によっては誤差を生じる場合がある。

永久磁石可動コイル形計器の用途

直流電流計

動作原理からして、そのまま電流計として使用が可能。
大電流を測定する場合は、可動コイルと並列に分流器と呼ばれる抵抗を接続する。

直流電圧計

可動コイルに流れる電流は、これに加えた電圧に比例するので、電圧計としても使用可能。
高い電圧を測定する場合は、可動コイルと直列に直列抵抗器と呼ばれる抵抗を接続する。

参考資料

新電気2020年4月号なるほど納得!新連載 電気計器 第1回永久磁石可動コイル形計器 より引用

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