Categories: 測定機器理論

誘導形と静止形のOCR試験の比較まとめ

過電流継電器とは

誘導円盤形 過電流継電器についての概略

移動磁界を作る鉄心と円盤に生じる過電流との相互作用により動作する。
機械的な接点を持ち、従来の保護継電器はこちらが主流であった。
現在ほとんどの製造メーカーで製造販売は停止している。

自家用電気工作物の疑問解決塾2 p119「過電流継電器(OCR)に関するなぜ」より画像引用

誘導円盤形での整定方法

下記図は
・限時電流4A
・瞬時電流20A
・限時ダイアル0.5に整定されている例。
限時電流はタップ取付位置で、限時特性は黄矢印の特性バネのダイアルを手回しで
瞬時電流はロックナットを緩めてネジ頭の位置調整で調整する。
限時電流タップ以外は、ヒステリシスを含んだ設定になる。
※数値のみで明確に判断できるものではないことに注意が必要。

過電流継電器(OCR)の保護協調線図を活用した整定と試験の実際
より引用

誘導円盤形過電流継電器のデメリット

機械部品による劣化や固着、ごみ・埃等の付着が生じると、物理的な動作に支障が出ることがある。
さらに、健全な状態であっても「円盤が動き始める電流」と「継電器として動作を行う最小電流」に差異が出る構造上、試験を行う際の最小動作電流の見極めが難しいことである。

対策

JIS C 4602 において
限時要素の動作時間整定を 1 の目盛位置としたときの各動作電流整定値における動作電流値および瞬時要素を各動作電流整定値としたときの動作電流値を測定する」とされている。

後継となる静止形では、誘導円盤形のデメリットが解消されているので
誘導円盤形が新規に設置されることは基本的にない。

OCR試験の試験方法

動作電流値試験

●誘導形
動作時間整定(レバー)を1の位置にして電流を0から徐々に上げて、円盤が動き動作したときの動作電流を求める

●静止形
電流を徐々に上げて、始動ランプが点灯したときの、動作電流値を求める

管理値は、各電流整定値(タップ)対して±10%以内

限時動作時間試験

●誘導形、静止形共通
限時要素の動作時間制定(レバー)を10の位置にし、電流整定値(タップ)の      
①300%の電流を加えた時の動作時間
②700%の電流を加えた時の動作時間

公称動作時間に対して
300%の時±17%
700%の時±12%

瞬時動作電流値試験

●誘導形
限時要素の誘導円盤を動作しないように押さえ、電流を零から徐々に上げて行き瞬時要素の動作整定値の
動作電流値を求める  

●静止形
限時要素が動作しないように動作ロックボタンを押さえ、電流を零から徐々に上げて行き限時要素の動作整定値の
動作電流値を求める 

管理値は、各電流整定値(タップ)に対して±15% 以内

瞬時動作時間試験

●誘導形、静止形共通
瞬時要素の最小動作電流整定値(瞬時の最小タップ)とし、整定値の200%の電流を急激に加えたとき、継電器の動作時間を求める

瞬時要素の動作時間は50msec以下          

誘導形と静止形のOCR試験の比較表

参考資料

新電気2020年4月号「特集 リレー試験の基礎知識」より一部引用

名無し管理事務所