泰和電機製RPR(TRG－DV40)についてのまとめ

逆電力継電器 (RPR: Reverse Power Relay) は
電力系統において電力の流れの向きを監視し、通常とは逆方向の電力（逆潮流）を検出した際に動作する保護継電器。JEMA（日本電機工業会）の制御器具番号では「67P」と表記されることもある。

主に、自家消費型太陽光発電システムなど、電力系統に接続された分散型電源において
非常に重要な役割を果たす。

逆電力継電器 (RPR) は、売電契約をしない自家消費型太陽光発電システムにおいて
電力系統の安定と安全を確保するために不可欠な保護装置のこと。
逆潮流を検知し、発電システムを停止させることで、電力会社への影響や単独運転などの危険を防ぐ。
適切な設置と運用、そして可能な限りRPRを動作させないための電力制御が
自家消費型太陽光発電を導入する上で非常に重要となる。

RPRの基本的な役割

RPRの主な役割は、「逆潮流の防止」

逆潮流とは
通常、電力は電力会社（送電網）から需要家（工場や家庭など）へと流れてくる。
しかし、太陽光発電などで自家発電している場合、自家発電量が自家消費量を上回ると
余剰電力が電力会社の送電網側へ逆流してしまうことがある。
＝逆潮流」
売電契約をしている場合はこの逆潮流は問題ないが
売電契約をしていない「自家消費型」の太陽光発電システムでは、逆潮流が禁止されている。

RPRの働き

自家消費型太陽光発電システムが電力系統に接続されている箇所（受電点など）に設置され
電力の向きを常に監視している。
もし、自家発電した電力が自家消費を上回り、電力会社の送電網へ逆流しようとすると
RPRがそれを「逆電力」として検知する。
逆電力を検知すると、RPRは信号を出力し、パワーコンディショナー（PCS）を停止させたり
遮断器（ブレーカー）を開放させたりして、太陽光発電システムからの電力供給を停止させ、逆潮流を防止する。

RPRの必要性について

電力系統の保護と安定

• 電力会社は、需要と供給のバランスを常に保つことで、電力系統の周波数や電圧を安定させている。
• 契約外の逆潮流が発生すると、電力会社の需給バランスが崩れ、電力系統の安定性を損なう可能性がある。
  これは、電力品質の低下や、最悪の場合、広範囲の停電につながる恐れもある。
• 特に、電力会社側から見ると、契約していない電力が送電網に入ってくることは
  想定外の電流の発生や、保護協調（事故時に適切なブレーカーが動作すること）の妨げになる可能性がある。

安全性の確保（単独運転の防止）

• 電力会社からの送電が停止した（停電した）場合
  太陽光発電システムは安全のために連系を停止する（解列する）必要がある。
• RPRがない状態で逆潮流が発生していると、停電した電力系統に対して自家発電設備が電力を
  供給し続けてしまう「単独運転」という危険な状態になる可能性がある。
• 単独運転は、停電復旧作業を行う電力会社の作業員が感電する危険性や
  復旧時の電力系統の混乱を引き起こすため、厳しく禁止されている。
  RPRは、逆潮流を検知することで単独運転を未然に防ぐ役割も果たす。

法的・契約上の要件

• 電力会社との系統連系契約において、自家消費型太陽光発電システムの場合
  逆潮流を防止するためのRPRの設置が義務付けられていることがほとんど。
  （系統保護と安全確保のため）

RPRの動作原理

• 計器用変流器 (CT: Current Transformer): 回路を流れる電流を検出する。
• 計器用変圧器 (VT: Voltage Transformer): 回路の電圧を検出する。
• 継電器本体: CTとVTからの信号を入力として受け取り、電力（P=V×I×cosθ）を計算する。
  設定された逆電力の閾値（整定値）を超えた場合に、動作信号を出力する。
  
  ※RPRの感度は非常に高く、定格電力の0.2%程度の微小な逆電力でも検出・動作するように設定されることがあります。この整定値は、電力会社との協議で決定される。

RPRの継電器試験はメーカーによって試験方法が異なることが多いため、事前にメーカーの取り扱い説明書を確認するのを怠らないこと。

RPRの設置場所

RPRは、太陽光発電システムと電力会社の送電網との間で、電力会社側に近い場所
（受電点付近のキュービクル内など）に設置される。
適切な場所に設置されないと、逆潮流を正確に検知し、防止する役割を果たせない。
設置後には、その位置を示す配線図を電力会社に提出する必要がある。

RPRを動作させないための工夫

RPRは逆潮流を検知すると発電を停止させるため、RPRが頻繁に動作すると
自家消費型のメリット（電気代削減）が薄れてしまう。
そのため、極力RPRを動作させずに自家消費を最大化するための工夫が重要になる。

• 出力制御装置の設置: 太陽光発電の出力（パワーコンディショナーの出力）を
  電力消費量に応じて自動的に制御するシステム。
• 負荷追従制御オプション: リアルタイムで構内の消費電力量を計測し
  その量に合わせて発電量を調整する機能を持つパワーコンディショナーや制御システム。
• 蓄電池の導入: 余剰電力を蓄電池に一時的に貯めることで、系統への逆潮流を防ぐ。
• 生産計画の調整: 休日など電力消費が少ない日に発電量が大きくなる場合は、設備を稼働させたり、蓄電したりする計画を立てる。

泰和電機製RPR(TRG－DV40)の仕様

出力接点、その他仕様

リレー出力接点

• 開路電流: DC110V 15A、DC220V 10A （L/R=0ms）
• 開閉電流: AC250V 5A （cosφ=1.0）、DC30V 5A、DC110V 1.3A

装置異常 警報出力接点

• 開閉電流: AC125V 2A、AC250V 1A、DC30V 1A、DC110V 0.3A

強制動作スイッチ

• 地絡継電器トリップ出力、逆電力継電器トリップ出力を各々個別に強制動作させる。

停電後の動作補償時間

• 5秒以上（制御電源電圧範囲下限 (AC85V) よりの停電）

AC制御電源の停電補償について
本器はAC制御電源( 商用電源) が停電後も、内蔵したバックアップコンデンサにより5 秒間以上
（動作時間整定値の最大値は5s）保護継電器としての動作責務が可能な設計としている。
よって、外部に電源補償装置等を別置しなくとも、単独で系統連系規定を満足するものとなっている。

自己診断

1. メモリチェック
2. A/D変換精度チェック
3. 増幅回路チェック
4. 停電補償コンデンサ容量チェック（電源OFF時）
5. 二重化リレー駆動回路自動点検（24時間毎）

※1誤操作出力を防止するため、表示切替選択スイッチで「OVGR強制動作」、または「RPR強制動作」を選択した状態でスイッチを操作した時のみ、該当リレー接点出力を行う誤操作防止機能を有している。

※2本器は商用電源が停電後も、内蔵したバックアップコンデンサにより、5秒間以上保護継電器としての動作責務が可能な設計としている。これにより、外部に電源補償装置等を付加しなくとも
単独で系統連系規程を満足するものとなっている。

系統連系規定　第２章　第２節　8.その他　(6)制御電源　より引用
b.商用電源を使用する場合は、次の条件を満足するものとする。
(a)リレー自身に電源を必要とするものは商用電源が停電後リレーの動作責務が確実に行えるように停電補償がなされていること。

泰和電機製RPR(TRG－DV40)の特徴

●太陽光自家消費設備向けにオールインワン高圧連系に必要な要素OVGR・RPR・バックアップ電源を標準装備
●盤表面に取付(DINレールまたはねじ止め)前面下部から配線できるので、取り付け作業が容易。
●既設CTの2次側にクランプ形CTを設置既設のCT2次配線はそのまま、付属のクランプ形CTを挟むだけ。
　（下記図参照）
●出力接点は独立C接点復帰方式を自動/手動にOVGR・RPR個別設定可能なので
　国内外のパワーコンディショナ(PCS)に対応
●自己診断機能を装備常時監視の充実と出力回路の自動点検を実施している。

クランプ型CTの取り付け方法

●組合せCTは付属のクランプCTを必ず使用すること。
●クランプCTの二次配線（k,1）は、端子カバーケースを外し
k、l端子（M3ネジ）にアンプ端子を用いて接続すること。
●盤内既設CT（定格二次電流5A）の二次配線のk側がクランプCTのK側となるよう装着すること。
●クランプCTのフックを上げ既設CT二次電線に装着する。
●電線ストップ付き構造のため、装着で二次電線に固定される。
●更に強く固定したい場合ファスナー通しにファスナー（供給外）等を通して、二次電線や目的個所に固定すること。

泰和電機製RPR(TRG－DV40)各部の名称と機能

①運転LED
　緑色。自己診断に異常無く、正常運転中に点灯。

②動作LED
　赤色。OVGRリレー又はRPリレー動作値を超えると点灯し下がると消灯する。
　リレー試験時の動作値測定時にも利用可能。

③リレーロックLED
橙色。リレーロックDI入力の状態表示。点灯時該当するOVGRリレー、RPRリレー動作ロックであることを示す。

④ 7-segLED ： 2 桁。⑤表示選択ＳＷで選択した項目を表示。
※⑥⑦で動作整定値の変更を行った場合、表示選択SWの
選択位置に関りなく、新規整定値を約2 秒間表示する。
又、自己診断で監視異常が生じた場合も表示選択SWの選択
位置に関りなく異常コードを優先表示する。

⑤表示選択SW
　7-segLED の表示項目を選択する。
　また、「OVGR 強制動作」「RPR 強制動作」選択時は
　[OP( オペレート)]表示し
　「試験」SW操作による強制動作が有効となっていることを示す。

⑥地絡過電圧OVGR 動作電圧(%) 、動作時間(s) 整定SW

⑦逆電力RPR 動作電力(%) 、動作時間(s) 整定SW

⑧適用条件設定SW
周波数(50/60Hz) 、リレー出力接点復帰方式( 自動／手動)
リレーロック解除時間（瞬時／遅延）の上下設定SW

⑨試験動作SW
点検時にリレー動作シーケンスチェック等を行う場合に便利な押釦SWです。
⑤表示選択SWで「OVGR 強制動作」、又は「RPR 強制動作」を選択した状態で
強制動作SWをリレー整定した動作時間以上押すことによりリレー出力接点が強制動作する。
尚、リレー整定が「ロック」の場合や、“リレーロックDI入力“がある場合は強制動作出力は行わない。
また、装置異常警報出力接点は動作しない。
⑩マグサイン動作表示器：常時「黒」、リレー動作時「橙」。リレー動作時自己保持し復帰SW操作で復帰する。

⑪復帰SW：SW操作でマグサイン動作表示器、および手動復帰選択時の動作出力リレーが復帰する。操作は制御電源がオン状態のみ有効。
※透明カバーを開かずにカバー面の白釦操作で復帰が可能。

⑫ DIN フック： DIN レール取付から外す際、本フックを引き下げ、ケース下側から持ち上げてください。

関連仕様値と動作説明

自己診断期機能と監視異常時の内部処理について

泰和電機製RPR(TRG－DV40)の外部配線図

泰和電機製RPR(TRG－DV40)の端子配列図

CT２次接続電線　　

泰和電機製RPR(TRG－DV40)の試験方法

保護特性性能とリレー試験

試験管理値（ＺＰＤ－２との組合せ用）
ＴＲＧ－ＤＶ４０ （ＯＶＧＲ＋ＲＰＲ）
黒文字：項目
緑文字：測定条件
赤文字：管理値

ＯＶＧＲ要素

最小動作電圧値
Vo整定：５％とする。
（一括）；整定値（190V）の±25%以内
（T-E）；整定値（190V）の±25%以内

零相電圧換算値

動作時間特性
Vo=0から整定値×150%に急変
Vo印加（一括の場合）=285V
Vo印加（T-Eの場合）=285V
0.1～1.0秒整定；整定値±50ms以内
1.2～5秒整定；整定値±5％以内

RPR要素

動作電力値(電圧を定格電圧とし、電流の大きさを変えて電力を測定する)
CT電流は試験端子（５A回路）からの入力とし、クランプCTの２次側に直接入力しないこと。
VT CT2次入力：電圧は定格電圧（110V）、電流位相は遅れ150度(試験器換算値進み30度(注))とする。
0.2～1.0％整定；整定値±5mA以内
1.5～10％整定；整定値±10％以内
＜電力・電流換算＞(代表例)

動作時間特性
VT CT2次入力：電圧は定格電圧（110V）、電流位相は遅れ150度(試験器換算値進み30度(注))とする。
電流は0から整定値の200％に急変する。

0.1～1.0秒整定；整定値±50ms以内
1.2～5秒整定；整定値±5％以内

位相特性１(200％値)
VT CT2次入力：電圧は定格電圧（110V）、電流は整定値の200％電流とする。
リレー管理値 ；進み150度±10度以内 遅れ90度±10度以内
試験器換算値(注)；進み90度±10度以内 遅れ30度±10度以内

位相特性２(1000％値)
VT CT2次入力：電圧は定格電圧（110V）、電流は整定値の1000％電流とする。
リレー管理値 ；進み126度±10度以内 遅れ66度±10度以内
試験器換算値(注)；進み114度±10度以内 遅れ54度±10度以内
(注)DGR用（T-E端子に－Voが出力される）試験器を用いてRPR試験を行う場合の換算値。

逆電力（ RPR ）試験時、継電器の端子（ k,l 間）に直接電流を流さないこと。

結線・試験方法

file:///C:/Users/sette/Downloads/RH70A-R2(%E5%8B%95%E7%94%BB%E3%81%AEURL)%EF%BC%B2PR%E7%B6%99%E9%9B%BB%E5%99%A8%E3%81%AE%E8%A9%A6%E9%A8%93%E5%8B%95%E7%94%BB%EF%BC%88%E4%BD%8D%E7%9B%B8%E7%89%B9%E6%80%A7%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%88%EF%BC%89.pdf
双興電機製のＤＧＲ試験器を用いてＴＲＧ－ＤＶ４０の試験を行う動画（約１７分）
泰和電気工業株式会社

泰和電機製RPR(TRG－DV40)の保守点検

安定した状態でご使用いただくため、日常点検を行う事。
・運転LED( 緑) が点灯していること。
・7-segLED に異常コード（ E □、A □）が表示されていないこと。
（異常時は表示選択SW位置と関係なく、最優先で異常コードを表示、又、監視異常接点出力が「閉」する）
・設置環境（周囲温度、湿度、振動、ほこりなど）に大きな変化や異常は感じられないこと。
定期点検は、保護リレー機能・性能などのチェックを主たる目的として、計画的に実施すること。

泰和電機製RPR(TRG－DV40)の更新推奨時期

継電器の更新推奨時期は、( 社) 日本電機工業会発行「JEMTR-156 保護継電器の保守点検指針」に準じ
15年を目途に計画的に更新が推奨される。

参考資料

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.taiwadenki.co.jp/catalog/files/RH70-C_TRG-DV40.pdf
泰和電機工業　TRGｰDV40　カタログ
TRG-DV40　取り扱い説明書