始動電流と突入電流の違いについてまとめ

始動電流」と「突入電流」は
どちらも電気機器に電源が投入された際に一時的に流れる大電流を指す言葉ですが
厳密にはその発生要因や主な対象機器、持続時間に違いがある。

突入電流 (Inrush Current)

突入電流は、電気機器の電源が投入されたごく短時間(数ミリ秒から数秒程度)に発生する
瞬間的な大電流のこと。
主に以下の要因で発生する。

発生要因

  • コンデンサの充電
    スイッチング電源やインバータ、パソコン、テレビなどの電子機器には
    安定した電圧を供給するために多くのコンデンサ(平滑コンデンサなど)が内蔵されている。
    電源投入時、これらの空っぽのコンデンサを急激に充電するため
    瞬間的に大きな電流が流れる。
    これが突入電流の最も一般的な原因となる。
  • 変圧器の励磁
    変圧器に電源を入れた際、鉄心が磁化されていない状態で電圧が印加されると一時的に大きな励磁電流が流れる。
    これは、鉄心が飽和するまでのごく短時間で、定格電流の数倍から数十倍にもなることがある。
  • 白熱電球のフィラメント
    白熱電球のフィラメントは、冷えている状態では電気抵抗が非常に低い。
    電源を入れた瞬間、抵抗が低い状態なので大きな電流が流れ、フィラメントが発熱して
    抵抗値が上がるまでの一瞬、大電流が流れます。
    LED電球ではこの現象はほとんど起きない。

突入電流の特徴

  • 発生時間は非常に短く、瞬間的
  • 主にコンデンサや変圧器、抵抗の温度変化による特性を持つ機器で顕著に現れます。
  • ピーク電流が非常に高くなることがある。

始動電流 (Starting Current / Locked-Rotor Current)

始動電流は、主にモーターなどの回転機に電源を投入し
回転が始まる(または加速する)際に流れる大電流を指す。

始動電流の発生要因

  • モーターの回転開始
    モーターは、停止している状態では回転子のインピーダンスが非常に低く
    電源電圧がほぼそのまま印加されるため、大きな電流が流れる。
    モーターが回転を始めると、逆起電力(回転によって発生する電圧)が生じ
    この逆起電力が電源電圧と打ち消し合うことで
    徐々に電流が減少していく。
    なお、定格回転数に達すると、電流は定格電流値に落ち着く。
  • 負荷の慣性
    モーターが重い負荷(例えば、大型のファンやポンプ、クレーンなど)を始動させる場合
    その負荷の慣性(動き始めるまでの抵抗)が大きいため、モーターはより大きなトルクを出す必要があり
    その結果、電流が定格電流よりも長く、高い状態で維持される。

始動電流の特徴

  • 発生時間は突入電流よりも長く、モーターが定格回転数に達するまでの数秒から数十秒間
    わたって流れることがある。
  • 定格電流の5~10倍程度になることが一般的です。
  • 主に誘導電動機などの回転機で顕著に現れる。

両者の違いと共通点

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