FIT(固定価格買取制度)は
再生可能エネルギーの普及を目的として、再生可能エネルギーで発電された電気を、電力会社が国が定めた価格で一定期間買い取ることを義務付ける制度。
正式名称は「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」に基づき、2012年7月に導入された。
新電気2024年4月号 エネテク太陽光相談所 FILE27 より画像引用
FIT制度の仕組み
●買取義務と固定価格・固定期間
電力会社は、FIT制度の認定を受けた再生可能エネルギー発電設備で発電された電気を
国が定めた固定価格で、一定期間(太陽光発電の場合、住宅用10kW未満で10年間、産業用10kW以上で20年間など)買い取ることが義務付けられている。
買取価格や期間は、再生可能エネルギーの種類(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど)や
規模によって毎年見直され、経済産業大臣が決定する。
●再エネ賦課金
電力会社が再生可能エネルギーを買い取るための費用は
最終的に「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」として
私たちの毎月の電気料金に上乗せされて徴収される。
これは、再生可能エネルギーの導入コストを国民全体で負担し、普及を後押しするための仕組み。
●全量買取と余剰買取
全量買取
発電した電気のすべてを電力会社に売電する方式。主に産業用や大規模な発電設備が対象。
余剰買取
発電した電気のうち、自家消費して余った分だけを電力会社に売電する方式。
主に住宅用太陽光発電が対象。
FIT制度の目的と背景
- 再生可能エネルギーの普及促進
FIT制度導入前は、再生可能エネルギーの発電コストが高く、導入が進まない状況だったが
FIT制度によって安定した売電収入が見込めることで、発電設備の初期投資の回収見込みが立ちやすくなり
企業や一般家庭が安心して再生可能エネルギーを導入できるようになった。
これにより、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入が飛躍的に増加した。
- エネルギー自給率の向上
日本はエネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に依存しており
エネルギー自給率が低いという課題がある。
FIT制度による再生可能エネルギーの普及は、国内でエネルギーを生産する力を高め
エネルギー自給率の向上に貢献している。
- 地球温暖化対策
再生可能エネルギーは、発電時にCO2を排出しないため
地球温暖化対策としても重要な役割を担っている。
FIT制度のメリット・デメリット
FIT制度のメリット
- 安定した収益
一定期間、固定価格で売電できるため、発電事業者は安定した収益を見込みやすくなる。
- 導入の促進
投資回収の見込みが立つことで、再生可能エネルギー設備の導入へのハードルが下がり、普及が加速する。
- エネルギー自給率の向上と環境貢献
再生可能エネルギーの普及により、エネルギーの安定供給やCO2排出量の削減に貢献する。
FIT制度のデメリット
- 国民負担(再エネ賦課金)
買取費用の一部が再エネ賦課金として電気料金に上乗せされるため
国民全体の電気料金負担が増加する。
- FIT価格の下落
再生可能エネルギー設備のコストダウンや普及に伴い
毎年FIT価格が下落する傾向にある。
- 卒FIT後の課題
買取期間が終了した「卒FIT」後には、売電価格が大幅に下がるため
新たな電力契約や自家消費への切り替えなど、運用方法の検討が必要になる。
卒FIT後の選択肢
住宅用太陽光発電の場合
FIT制度の買取期間(10年間)が終了することを「卒FIT」と呼ぶ。
卒FIT後には、以下の選択肢がある。
売電継続
- 大手電力会社や新電力会社と新たに契約を結び、売電を継続する。
ただし、FIT期間中よりも売電価格は大幅に下がることが一般的となる。
より高い買取価格を提示している新電力会社に切り替えることも検討できる。
自家消費
- 発電した電気を自宅で消費する量を増やし、電力会社から買う電気を減らすことで
電気代を削減する。
蓄電池を導入して、昼間に発電した電気を貯めて夜に使うことで
自家消費率を高めることができる。
※エコキュートなど、昼間の余剰電力を活用できる設備を導入するのも有効となる。
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