変圧器についての概略
変圧器は、交流の電圧を変換する電気機器で、主に電力の送配電システムにおいて
効率的な送電や様々な電圧レベルの需要に対応するために不可欠な役割を担っている。
使用するメリットとして
- 電力の効率的な送電
高電圧で送電することで、電流を減らし、送電線での電力損失を大幅に削減できる。
- 電圧レベルの柔軟な対応
発電から消費まで、各段階で必要とされる電圧レベルに変換できる。
- 高い効率
適切に設計された変圧器は非常に高い効率(98%以上)で動作する。
などがある。
油入変圧器(Oil-immersed Transformer)
冷却・絶縁方式
絶縁油(鉱物油やシリコーン油など)を充填し、この油が熱を伝え、同時に絶縁体としても機能する。
主な特徴
メリット
- 冷却効率が高い
油が非常に高い熱伝導性を持つため、自己冷却やファンによる強制風冷と組み合わせることで
効率的に熱を放散できる。このため、大容量の変圧器に適している。
- 絶縁性能が高い
絶縁油は優れた絶縁性能を持ち、高電圧用途に適している。
- 小型化が可能
冷却効率と絶縁性能が高いため
同じ容量の乾式変圧器に比べて本体を小型に設計できる。
- 長寿命
適切なメンテナンスを行えば、非常に長期間の使用が可能となる。
- 耐過負荷性能
短時間であれば、定格以上の負荷にも比較的強い傾向がある。
デメリット
- 防火対策が必要
使用される絶縁油(特に鉱物油)は引火性があるため、火災のリスクが伴う。
このため、防火壁の設置、油溜めの設置、自動消火設備の設置などの防火対策が義務付けられる場合がある。
- 環境負荷
絶縁油の漏洩は、土壌汚染や水質汚染のリスクがある。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)が問題となった時期もあったが、現在使用されている油はPCBを含みまない。
しかし、廃棄時の処理は厳重に行う必要がある。
- メンテナンスが必要
油の劣化診断(酸価試験など)や
油の交換・ろ過といった定期的なメンテナンスが必要となる。
- 設置場所の制約
油の漏洩や火災のリスクから、屋内への設置には制限がある場合が多く
特に人が多く集まる場所や地下への設置は、防火対策が厳しくなる。
屋外設置が一般的。
- 騒音: 運転時に「ブーン」という唸り音(磁歪音)が発生する。
主な用途
- 発電所、変電所
- 大規模工場、大規模商業施設
- 屋外設置の受変電設備(キュービクルなど)
- 長距離送電線路の中間変電所
乾式変圧器(Dry-type Transformer)
冷却・絶縁方式
絶縁油を使用せず、空気(またはエポキシ樹脂などの固体絶縁材)で直接冷却・絶縁を行う。
主な特徴
メリット
- 防火性が高い
絶縁油を使用しないため、火災や爆発のリスクが極めて低い。
- 環境負荷が低い
- 油漏れによる汚染のリスクがない。
- メンテナンスが容易
油の交換やろ過などのメンテナンスが不要なため定期的な清掃と点検が主となる。
- 設置場所の自由度が高い
油入変圧器のような防火対策が不要なため
ビル内、地下、病院、学校、商業施設、高層ビルなど
人や物が密集する場所、防火を特に考慮すべき場所への設置に適している。
- 騒音が小さい
油入変圧器に比べて、一般的に運転音が小さい。
デメリット
- 冷却効率が低い
油に比べて空気の熱伝導率が低いため、冷却効率が劣る。
そのため、大容量化には限界があり、同じ容量の場合
油入変圧器に比べてサイズが大きくなり、重くなる傾向がある。
- 絶縁性能の限界
空気絶縁のため、油入変圧器ほどの高電圧には不向きな場合がある。
※エポキシ樹脂モールド型など、固体絶縁を組み合わせることで高電圧化に対応している。
- 耐湿性・耐塵性
油入変圧器に比べて、湿気や塵埃の影響を受けやすい場合がある。
※モールド型などはその影響を受けにくい。
- コスト
一般的に、同じ容量であれば油入変圧器よりも高価になる傾向がある。
- 過負荷耐性
短時間の過負荷運転には、油入変圧器ほど強くない場合がある。
主な種類
- H種乾式変圧器
耐熱クラスH種の絶縁材料(ガラス繊維、マイカなど)を使用したタイプ。
比較的シンプルな構造。
- モールド変圧器(モールドタイプ乾式変圧器)
コイル全体をエポキシ樹脂などの固体絶縁材で固めた(モールドした)タイプ。
優れた耐湿・耐塵性を持ち、さらに防火性が高く、コンパクト。近年主流となっている。
主な用途
- ビル、マンション、商業施設、病院、学校などの屋内受変電設備
- 地下変電所
- 食品工場など、衛生管理が重要な場所
- 防火規制が厳しい場所
油入変圧器と乾式変圧器の比較表