目次
電力損失の主な原因

電力損失の主な原因は、抵抗によるジュール熱。
電線にはわずかな抵抗があり、電流が流れる際にこの抵抗によって熱が発生する。
この熱はエネルギーの無駄であり、電力損失となる。
- 送電線・配電線の抵抗
導体の抵抗は、その長さ、断面積、および材料の導電率によって決まる。
長距離の送電や細い電線では抵抗が大きくなり、損失が増える。 - 変圧器の損失
変圧器でも、巻線の抵抗による銅損(ジュール熱)と
鉄心に発生する渦電流やヒステリシスによる鉄損(コア損失)が発生する。 - 力率の低下
交流回路において、電圧と電流の位相がずれると(力率が低い状態)、送られる有効電力の割合が減り
同じ有効電力を送るにもより大きな電流が必要になる。
これにより、送電線の抵抗損失が増加する。 - 高調波
電子機器などから発生する高調波電流は
送電線や変圧器の損失を増加させる原因となる。
電力損失の計算方法

電力損失は、主に以下の式で表される。
抵抗損失 (ジュール熱)
Ploss=I2R
Ploss は電力損失
I は電流、R は抵抗
電流が2倍になると損失は4倍になる。
送電損失を電圧で表す場合
送電電力を P送電、送電電圧を V とすると
I=P送電/V となるので、上の式に代入すると
Ploss=(P送電/V)2R=(P送電2R)/V2
この式から
送電電圧を高くするほど電力損失が大幅に減少することがわかる。
これが高圧送電が行われる理由となる。
電力損失を減らすための対策

電力損失を減らすことは、エネルギー効率の向上、送電コストの削減、安定した電力供給に不可欠となる。
- 高電圧送電
前述の通り、電圧を高くすることで電流を減らし
抵抗損失を大幅に削減できる。
※例)超高圧送電線 - 電線の太径化
電線の断面積を大きくすることで抵抗を小さくし
損失を減らすことができる。
※コストや設置の制約があり。 - 力率改善
進相コンデンサなどを導入し、力率を改善することで無効電流を減らし
送電線の有効電流比率を高めて損失を抑制する。 - 低抵抗材料の採用
銅やアルミニウムなどの導電率の高い材料を使用する。
※将来的には超電導ケーブルなどの研究も進められている。 - 送電網の最適化
送電ルートの短縮、変電所の最適配置などにより、送電距離や経路を最適化する。 - 高効率な変圧器の使用
鉄損や銅損の少ない高効率変圧器を導入する。
例)アモルファス変圧器など。 - 分散型電源の導入
太陽光発電や風力発電など、需要地の近くに発電設備を配置することで
送電距離を短縮し、送電損失を減らすことができる。
電力損失の現状と課題

- 再生可能エネルギーの導入拡大
太陽光発電や風力発電は、発電量が変動し、また需要地から離れた場所に設置されることが多い。
これにより、送電網への負担が増大し、損失が増える可能性もある。 - 老朽化設備の更新
老朽化した送電線や変圧器は効率が低下し
損失が増加する可能性があるため、計画的な更新が必要。

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