不足電圧状態の現象と機器の影響についての備忘録

不足電圧状態とは、電力系統の電圧が規定値よりも低くなっている状態を指す。
短時間で終わる「瞬時電圧低下(瞬低)」と、長時間続くものに分けられる。

瞬時電圧低下(瞬低)についての概略

雷や自然災害、あるいは送電線の故障などが原因で、電圧が一時的に急激に低下する現象のこと。

発生メカニズム

  1. 送電線に落雷などが起こると、その箇所で短絡が発生する。
  2. 短絡によって大電流が流れ、電力系統全体の電圧が一時的に低下する。
  3. 保護リレーがこの異常を検知し、故障箇所を電力系統から切り離す。
  4. この故障を切り離すまでのごく短い時間(0.05〜0.2秒程度)に電圧が低下する現象を「瞬低」と呼ぶ。

瞬低は故障地点から離れた場所でも発生することがあり、広範囲に影響が及ぶことがある。

長時間の不足電圧について

電力系統の需要と供給のバランスが崩れたり、送電線の抵抗が大きかったり
あるいは送電距離が長かったりすることが原因で、電圧が継続的に低い状態を指す。

発生メカニズム

  • 無効電力の不足
    電圧を維持するためには、無効電力の供給が必要となる。
    工場やビル群などで大規模な負荷が一気に立ち上がると、無効電力の需要が増加し
    供給が追いつかない場合に電圧が低下する。


  • 電圧降下
    電線には電気抵抗があるため、電流が流れると電圧が下がる。
    特に、電線が細かったり、距離が長かったりすると電圧降下が大きくなり、電圧不足の原因となる。

このような電圧不足は、電圧崩壊という大規模な電力系統のトラブルに発展することもある。

機器が停止・誤作動する原理

電圧が不足すると、多くの電子機器や制御システムでは、内蔵された不足電圧継電器保護回路が作動する。
これらの回路は、機器が正常に動作するために必要な最低電圧を下回った場合に
安全のために電源を遮断するように設計されている。

主な具体例

  • コンピュータや精密機器
    これらの機器は、電圧変動に非常に敏感となる。
    電圧が一定の閾値を下回ると、データ破損やシステム障害を防ぐために
    自動的にシャットダウンする仕組み
    が組み込まれている。

  • 電磁開閉器(マグネットスイッチ)
    モーターなどを制御する電磁開閉器は、コイルに流れる電流によって磁力を発生させ、接点を開閉する。
    電圧が低下すると、コイルに流れる電流が弱まり、十分な磁力が得られなくなって
    接点が開放され、モーターが停止する。
  • モーターの低電圧焼け
    モーターの出力(仕事率)は、電圧と電流の積(P = VI)で決まる。
    電圧が低下すると、モーターは同じ出力を維持しようとして、より多くの電流を流そうとする。
    しかし、これは「P = I²R」という発熱の法則に従って、モーターの巻線で発生する熱量を急激に増加させる。
    この過剰な発熱により、巻線の絶縁被覆が劣化し
    最終的にモーターが焼損する低電圧焼けと呼ばれる現象が発生する。

  • 蛍光灯やHIDランプ: これらの放電ランプは、点灯に一定以上の電圧が必要です。電圧が低下すると放電が不安定になり、チラつきが発生したり、点灯を維持できずに消灯したりします。一度消灯したランプは、再点灯に高電圧が必要となるため、電圧が低い状態ではすぐに再点灯できません。
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