3Eリレーの過負荷要素・欠相要素・反相要素まとめ

モータ・リレー(3Eリレー)とは
産業設備の動力用として代表的なものに三相誘導電動機がある。
モータの故障は、修理が完了するまでの間、生産、環境に影響する場合もあるため、日常管理が重要となる。
故障にもさまざまな要因があるが、モータに過電流が流れると、内部のコイルが焼損し故障に至る場合がある。


過電流は、三相交流電源の1つの相が何らかの原因で切れた(欠相)した場合や
モータの能力以上の力がかかった(過負荷)の場合などに発生する。
また、モータに加わる電源の相順が逆(反相)になることで、モータの回転方向が逆になり故障に至る場合もある。
このような状態からモータを保護する機器がモータ・リレーとなる。
保護する項目によっては、保護条件を設定できるものもありモータの状況により調整することができる。
※設定する値を整定値と表現される場合がある。

モータで想定される故障(事故)とそれを検出するための代表的な異常検出要素

モータ保護の目的

モータ保護の目的は次の2つ。
モータ自身の保護(焼損防止)
モータにつながる負荷の被害を最小限にとどめる
※②の場合には、モータよりもその負荷を念頭においてモータ・リレーの選定をする必要がある。

誘導電動機の保護

誘導電動機の保護対策に対する各種保護機器の検出可否は以下の通り。
埋込型保護リレーは、電動機内蔵したサーミスタの出力を用いて電動機を保護するが
サーミスタを内蔵した電動機は一般的ではない。
そのため、用途の少ない単相電動機を除いた電動機に過負荷、欠相、反相の3つの検出要素(Element)を1つのリレーで保護か可能な3Eリレーが三相誘導電動機の保護には主に使用される。
これがモータ・リレーです。なお、漏電地絡については漏電遮断器などを使用することが一般的。

誘導電動機の保護対策と各種保護機器の検出一覧

3Eリレーの推奨形式

過負荷要素

モータに過電流が発生する要因の1つとして
モータの能力を超える負荷が発生する場合がある。

モータに過電流が長時間流れるとモータ内部の電線が焼ける可能性が高い。
そのため過電流が発生した場合、モータの電源を遮断し保護しなければならない。

誘導電動機は一般に、下記図のように始動時に500%程度の過電流が数秒~数十秒の間流れる。
もしこの時に過電流を検出し、モータの電源を遮断するとモータの運転ができない。
このためモータ・リレーでは、始動時の電流に対する考慮が必要となる。

モーターの起動電流

反限時動作特性

モーターの過熱特性と保護曲線

上記図はモータの過熱特性を示すI²t曲線で、この曲線の下側の範囲であればモータは焼損せず
十分使用できることを示している。
この例では、モータに500%の過電流が流れても40秒であれば使用可能であるため
もし電流値が半分の250%になれば

となり、4倍の160秒までであれば保護できることになる。
同様に100%のときは、上の計算式に従えば

となり、1000秒となるが
100%は連続運転可能な定格電流であるため、この式は適用されない。

以上から、図2の曲線の下側の曲線に沿って、大きな電流が流れた場合は早く
小さな電流だと長い時間で動作するような
、いわゆる反限時動作特性を選定する場合がある。

瞬時動作

異常状態により過電流で設備や製品に被害が発生したり、被害の増大につながる場合は
過電流を瞬時に検出することが必要となる。
このように一定時間で動作するものを、瞬時動作特性と呼ぶ。
この場合も、モータ始動時の過電流を考慮しておくことが必要となる。

また、起動時間の間検出を行わない起動ロック機能を搭載している場合もある。

過負荷要素には、動作値動作時間の要素が必要だが
これらの考え方は以下の通り。

動作値

JEM 1357「静止形保護継電器」の規格には
動作値は電流整定値の105~125%の範囲内であることと定めてあり
モータ・リレーの各メーカも一般的にこれに準拠している。
特に指定のないモータにはこの規格を参考に設定する。

動作時間

同じくJEM 1357の規格には
電流整定値の600%過電流で40秒以下、200%過電流で4分以下と定めてある。

JIS B 8324「深井戸用水中モータ・ポンプ」のモータ保護として
「全負荷電流の5倍の電流を通じて5秒以内に動作すること」と規定されている。
=一般にモータ・リレーは、500%過電流にて数秒~数十秒の動作時間の種類がある。

 

欠相検出要素

三相電源の電源線が断線したり、接続部のゆるみ、制御用開閉器の接触不良、機器内部の断線などによって
一部の電圧(相)が欠落している状態を「欠相」と呼んでいる。

欠相した状態で、三相誘導モータを起動するとモータが回転せずに起動電流が流れ続けるために
過負荷要素によって検出し、モータの焼損を防止することができる。
しかし、正常に運転している状態で欠相した場合
負荷が軽ければ三相誘導モータは単相誘導モータとして回転を継続することができる。

欠相時の電流分布を下記図に示す通り欠相状態には
人結線モータ、△結線モータの電源相欠相と△内部の欠相の3つがある。
このとき電源線に挿入した過負荷要素だけでモータの焼損が防げるかどうかについて以下に説明する。

(1)人結線モータの欠相

上記図のように電源線に流れる電流とモータの巻線に流れる電流はどこで断線しても同じになる。
よって、もし欠相が発生し過電流が流れても電源線の過負荷要素が検出するのでモータが焼損することはない。
また、モータの負荷が軽い場合は、モータの電流が小さいため過負荷要素は検出せず焼損にも至らず
軽負荷運転を継続する。

(2)△結線モータの外部欠相

上記図の場合、正常時に巻線に流れる電流をIとすれば電源線に流れる電流は√3I
=巻線の定格電流がInとすれば電源線の定格電流は√3Inで
過負荷要素は√3In<√3Iを監視することで、等価的に巻線の電流がIn<Iを監視していることになる。

ところが上記の欠相状態となるとI=Inとなったときの電源線の電流は3/2Inで
これは当然3/2In<√3Inもしくは1.5In<1.732Inとなり
したがって、モータの負荷状態によっては巻線は過電流となっても電源線は定格電流以下であるために過負荷要素は動作せず、巻線が焼けてしまう可能性がある
よって、このような場合にモータの焼損を防止するためには、欠相を検出することが必要となる。

3) △結線モータの内部欠相

上記図の場合、I1とI2は正常時と同じく│I1│=│I2│
位相差は120°のためV相電源線電流はこれも正常時と同じ√3Iとなり
またU、W相の電流は各々I1、I2となって電源線から見た場合
巻線に正常時より過電流が流れることで、過負荷要素が検出し焼損からモータを保護できる。
したがって、(1)の 結線と同様のことがいえる。

これまで、欠相に対するモータの焼損保護という観点で説明したが
軽負荷ではモータがそのまま運転を継続していると、負荷の増加による停止や
外れた電線が装置筐体などに接触して感電事故、短絡事故につながる可能性もある。

よって、欠相の検出はモータ保護の観点だけでなく
事故防止の観点からできるだけ早く欠相を検出することが必要となる。

欠相要素は注意事項

下記図 (a)、(b)においては正常時U、V、W相の電流は平衡だが
欠相すると欠相した相の電流は完全に零で他の2相に過電流が流れる。
この場合図4 (a)に示すように欠相の前後でベクトル関係は大きく変化する。

ところが、図3 (c)の場合だと
図4 (b)のようなベクトル変化となり図4 (a)に比べて変化が少ないことがわかる。

実際に図3 (c)の場合は図3 (a)、(b)に比べて欠相の検出が難しくなる。

一般的に、図3 (a)、(b)のような状態を欠相(c)の場合を△内部欠相と呼んで区別しており
欠相検出可能というのは(a)(b)の場合をさしているので
△結線モータ(1.5kW以上で多い)を使用する場合には注意が必要。

反相要素

三相誘導電動機は、相順が逆になるとモータの回転方向が反対になる。
場合によっては設備が故障する場合
もある。
このために、モータに加わる電源の相順が逆になると直ちにこれを検出する要素が「反相要素」となる。

据付型設備のモータでは保守時の接続や、変更可搬型設備のモータでは移動後の接続が発生し、誤配線の可能性が想定されるためリスク軽減には反相検出が有効となる。

この場合にも欠相検出と同じように電流方式電圧方式が考えられる。

電圧方式

メリット

下記図のようにマグネット・コンタクタより電源側に反相要素を接続すると
モータを起動させる前に検出ができるという利点がある。

デメリット

モータ・リレーへの配線が1本増え
さらに高圧の場合はVTを1個追加する必要がある欠点がある。

電流方式

メリット

モータに流れる電流の相順を直接判定する利点がある

デメリット

モータに電圧が供給されるため
高速で遮断しても逆回転する可能性がある。

反相要素の電圧電流方式比較

参考資料

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/motorprotectiverelay_tg_j_1_2.pdf
omron モータ・リレー 技術解説 より引用

名無し管理事務所