キュービクル内の碍子(がいし)の種類についての備忘録

碍子(がいし)の定義

大気圧の空気中において公称電圧が1000Vを超え33kVかつ
周波数が100Hz以下の交流で用いる電気設備又は機器のための
屋内用樹脂製ポストがいしのこと

https://www.jisc.go.jp/pdf1/Viewer/6b5378aa-169b-4b25-9142-fd5571a9d539/d8c5ec17-9641-4d89-927d-ce95aebd3dd1

JISC 3851 屋内用樹脂製ポスト碍子より引用

碍子(がいし)の種類について

エポキシ碍子(がいし)

エポキシ碍子(エポキシがいし)は
エポキシ樹脂を主成分とした絶縁材料で作られた碍子(がいし)のこと。

メリット

  • 小型・軽量化
    同じ絶縁性能でも、より小さく軽いため
    設置スペースの削減や取り扱いが容易い。
  • 高い機械的強度
    衝撃に強く、割れにくいため、耐久性に優れている。
  • 優れた電気的特性
    高い絶縁性能を持ち、沿面距離を確保しやすいため
    小型化と高絶縁性の両立が可能。
  • 製造の自由度
    金型を用いた真空注型により
    複雑な形状や特定の機能を持たせた碍子を製造しやすい。

デメリット

  • 紫外線による劣化
    長期間にわたり紫外線を浴びると劣化し、ひび割れや変色が生じ絶縁性能が低下するリスクがある。
    屋外で使用する場合、この影響を軽減するために
    耐候性のある塗料で表面をコーティングすることが一般的。
  • トラッキング現象と炭化
    エポキシ碍子に汚れが付着し、湿潤状態が続くと、部分的な放電が発生することがある。
    トラッキング現象
    放電が繰り返し起こることで、エポキシ樹脂が炭化して導電路が形成され
    絶縁破壊に至る可能性がある。
    特に塩害地域や重汚染地域で問題となる。
  • 熱膨張率の不一致
    エポキシ碍子は、内部に金属製の電極やボルトが埋め込まれている。
    エポキシ樹脂と金属の熱膨張率が異なるため、温度変化によって応力が発生し
    界面剥離やひび割れを引き起こすこと
    がある。
    これにより、内部に水分が浸入し、絶縁性能が低下する原因となる。

モールド碍子(がいし)

モールド碍子は、主にエポキシ樹脂などの合成樹脂を金型に流し込んで成形した碍子。
従来の磁器碍子に代わるものとして、その優れた特性から幅広い分野で利用されている。

モールド碍子の特徴

  • 軽量・小型
    磁器碍子に比べて軽く、同じ絶縁性能でもよりコンパクトにできるため
    機器の省スペース化や運搬・設置作業の効率化に貢献する。
  • 高い機械的強度
    衝撃に強く、割れにくい性質を持っている。
    これにより、地震や外部からの衝撃による破損リスクを低減できる。
  • 優れた電気的特性
    湿気や埃に強く、高い絶縁性能を維持する。
    また、沿面距離を確保しやすいため、小型化と高絶縁性を両立できる。
  • 高い製造自由度
    金型を用いて複雑な形状を精密に成形できるため
    特定の機能を持たせた碍子(例:内部にセンサーを組み込んだもの)や
    機器への組み込みに適した形状の製品を容易に作ることができる。

モールド碍子の種類と用途

  • ポストがいし
    電線やバスバー(太い導体)を支えるための柱状の碍子で
    配電盤や制御盤で広く使用されている。
  • ブッシング
    機器の内部と外部を電気的に絶縁しながら、導体を通すための部品。
    変圧器や開閉器などの電気機器に利用される。
  • 検電がいし
    内部にコンデンサを内蔵しており、電圧を検出するセンサーとしての役割も果たす。
    地絡故障などを検知するための装置に組み込まれる。
  • ケーブル終端接続部
    地中ケーブルと架空電線を接続する際に使用され
    絶縁と耐候性を確保する。

磁器碍子との比較

クリート碍子(がいし)

クリート碍子は、主に電線やケーブルを固定・支持するために使用される碍子。
特に、キュービクル(高圧受電設備)の内部や、配電盤、制御盤などで
電線やバスバー(太い導体)を整然と配置し、絶縁を確保するために重要な役割を果たす。

クリート碍子の特徴

  • 電線・ケーブルの支持・固定
    クリート碍子には、電線を挟み込むための溝や
    専用の固定具(押さえ板など)が設けられており
    複数の電線をまとめて固定したり、個々の電線を確実に支持したりすることができる。
    これにより、電線のたるみや接触を防ぎ、短絡事故のリスクを低減する。

  • 高い絶縁性能
    ポリプロピレンなどの絶縁性の高い材料で作られており、
    固定した電線が周囲の金属部分や他の導体と接触するのを防ぐ。

  • 高い機械的強度
    衝撃や振動に強く、電線の張力や重量に耐えることができる。
    これにより、配線が脱落したり、絶縁が損なわれたりするのを防ぐ。

  • 形状のバリエーション
    固定する電線の太さや数、設置場所に応じて、様々な形状やサイズのものがある。
    一つのクリートで複数の電線を支持できるタイプや、アダプターを交換することで
    様々な太さの電線に対応できるタイプなど、柔軟な設計が可能。

クリート碍子の主な用途

  • キュービクル内
    高圧のケーブル(例:KIPケーブル)を
    壁面や機器の筐体に沿って固定・支持するために使用される。

  • 配電盤・制御盤
    内部のバスバーや電線を整理し
    絶縁を確保するために使われる。

  • 地中線
    地中に埋設されたケーブルが、熱や振動によって移動するのを防ぐために
    マンホール内などでケーブルを拘束する目的で使われることもある。

  • 電熱機器
  • 耐熱性や耐アーク性に優れていることから
    ヒーターの配線や発熱線の固定にも使用される。

クリート碍子の材質

  • エポキシ樹脂
    高い絶縁性、機械的強度、耐熱性を持つため
    特に高圧用途のクリート碍子に多く用いられる。
  • ポリプロピレン
    汎用性が高く、軽量で耐薬品性にも優れているため
    幅広い用途のクリートに利用される。

  • FRP(繊維強化プラスチック)
    軽量でありながら高い強度を持ち、耐アーク性にも優れているため
    特定の用途で使われる。
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