高圧線は大地に接続(接地、アース)されていないため正常な状態では三相の合成電圧と大地間には大きな電圧変化は発生しない。
しかし、地絡が発生すると三相の合成電圧と大地間に大きな電圧変化が発生する。
ZPDは高圧線と大地間をコンデンサで分圧し、トランスにより高電圧を低電圧に変換し、二次側に出力する。
継電器は、その電圧の大きさや、地絡電流との位相関係を判断して動作する。
(零相基準入力装置と呼ばれる場合もある)
ZPDは地絡電圧を検出するための機器
零相電圧検出装置(ZPD)の原理
ZPDはY結線のコンデンサCを各相に接続し、その中性点は
検出用コンデンサCoを介して接地する。
各相の対地電圧が等しければ、検出部のコンデンサ(C)には電圧が発生しない。
出力も零となる。
地絡事故発生時は、各相の対地電圧のバランスが崩れると電圧が発生し
Y₁-Y₂間に電圧が発生し、この電圧がDGRに出力される。
ZPDの回路図
① 健全時
健全時においては、三相回路の対地電圧Va、Vb、Vcはバランスが取れており
電源の相電圧Ea、Eb、Ecと等しく、大きさは3810Vで、それぞれ120°の位相差がある。
したがって、高圧コンデンサの各相には下記図のように対地電圧3810Vがかかる。
この場合、三相とも平衡しているので、中性点(N)には電圧が発生しない。
このため低圧コンデンサに印加される電圧は零で、出力端子に電圧は発生しない。
図:健全時のZPD電圧
② 1相(c相)完全地絡時
次に、c相が完全地絡したとする。
この場合、端子a-E間と端子b-E間には60°の位相差があり
線間電圧(6600V)に相当する電圧がかかり、それぞれCₐとC₀、および、CbとC₀に分圧される。
したがって、C₀には下記図のように、この2つの分圧電圧(Vaの分圧とVbの分圧)のベクトル和が加わる。
これは、3V0(11430V)を高圧コンデンサと低圧コンデンサで分圧したものと同じになる。
図:c相完全地絡時のZPD電圧
出力例
高圧コンデンサは250 pF×3、低圧コンデンサは0.15 μF
出力変圧器の変圧比はn=20なので
低圧コンデンサの電圧の大きさVNEは
通常、零相電圧は地絡事故時に発生するが、地絡事故がないのに
零相電圧が継続的に発生する場合がある。
これを零相残留電圧といい、活線でDGR試験を行うときやDGRの整定を行う場合などは注意が必要となる。
零相残留電圧は次のような原因で発生する。
① 対地静電容量の不平衡
配電線路に単相線路部分や単相機器が多い
場合などで、対地静電容量が不平衡状態になると零相電圧が発生する。
防止するためには、単相線路の相を振り替えたり
ねん架などを行って静電容量を平衡させる必要がある。
② 自動電圧調整器(SVR)
配電線路の途中にSVRが設置されていると零相電圧が発生する。
一般のSVRは単巻変圧器をV結線で使用しているので
線間電圧の調整は2相で行っている。
このため、基準点が移動して対地電圧がアンバランスとなり零相電圧が発生する可能性がある。
新電気2019年 4月号 現場の疑問解決塾第4回「EVT・ZVTってなにをしてるの」より一部引用