太陽光発電システムにおけるPCSとは
パワーコンディショナ(Power Conditioning System)の略称で
太陽光発電システムの心臓部とも言える非常に重要な機器。
一般的には「パワコン」と略されて呼ばれることも多い。
太陽光発電におけるPCSの主な役割と機能は以下の通り。
●直流から交流への変換(インバータ機能)
太陽光パネル(ソーラーパネル)で発電される電気は「直流」となる。
しかし、私たちが家庭で使用する家電製品や、電力会社の送電網に送られる電気は「交流」となる。
PCSは、この太陽光パネルで発電された直流の電気を、家庭で使える交流の電気に変換する役割を担っている。
この機能は「インバータ」と呼ばれる。変換効率はPCSの性能を示す重要な指標であり
一般的に95~98%程度。
※変換効率が高いほど、発電した電気を無駄なく活用できる。
●最大電力点追従制御(MPPT制御)
太陽光パネルの発電量は、日照条件(日差しの強さ、日射角度など)や温度によって常に変動する。
PCSには、常に太陽光パネルが最も効率良く発電できる電圧と電流の組み合わせ(最大電力点)を自動で探し出し
その最大電力を引き出すための制御機能が搭載されている。
これにより、どんな環境下でも最大の発電量を維持できるよう調整する。
●系統連系保護機能
太陽光発電システムを電力会社の送電網(系統)に接続して売電する場合
系統側の異常(停電など)が発生した際に、太陽光発電システムからの電力供給を自動的に遮断する機能。
これにより、停電時に電力会社が送電線を修理する作業員の感電事故を防いだり
太陽光発電システムや電力系統の機器を保護したりする役割がある。
●自立運転機能
停電時でも、太陽光パネルが発電していれば
PCSの自立運転用コンセントから電気を使用できる機能。
通常、停電時には太陽光発電システムも停止しますが、自立運転モードに切り替えることで
昼間の晴れた時間帯であれば、特定のコンセントから家電製品(通常1500W程度まで)を使用できるため
非常時の電源として役立つ。
●電圧上昇抑制機能
太陽光発電システムが発電し、電力を系統に送る際、送電線の電圧が上がりすぎることがある。
特に、同じエリアに多くの太陽光発電システムが設置されている場合に起こりやすい現象。
PCSは、系統側の電圧が上がりすぎないように、自動的に発電量を抑制する機能を持っている。
これにより、電圧の安定性を保ち、売電を継続できるようにする。
PCSには、機能や用途によっていくつかの種類がある。
(1)PCS本体
・変形、破損、汚損の有無
・通気孔の目詰まりの有無
・異常音、異臭、過熱の有無
・固定ボルトの緩み、外れの有無
・エラーメッセージの有無
・避雷器(SPD)の動作の有無
・保護装置の整定値の確認
・周囲に物が置かれていないこと
(2)配線、電線管
・配線、電線管の著しい傷、破損の有無
・配線、接続端子部の過熱の有無
・配線引込口の隙間の有無
(3)発電量監視装置
・発電量の予想値と、実際の発電量の著しい乖離の有無
①通気孔が目詰まりしていると、PCS内部の温度が上昇し、運転が停止することがある。
通気孔は定期的に清掃を行うこと。また、フィルターについても定期的な清掃、交換が必要。
②点検時に、PCS本体にある表示部でエラーメッセージの有無を確認すること。
エラーメッセージが表示されていた場合は、取扱説明書などでエラー内容を確認し
原因を追及する必要がある。
③誘導雷や直撃雷による高電圧の影響を受けて
避雷器(SPD)の動作が確認された場合は、発電量監視装置に通信不具合などの
障害が発生していることが考えられる。
障害が発生している場合は、SPDの早期交換を行うとともに
通信装置などが正常に動作しているかの確認が必要。
④発電量監視装置には、PCS本体から出力される発電量や
異常警報などの情報が表示されるモニターが設置されている。
発電量の予想値を表示する機能を有している監視装置であれば
点検前にモニターに表示されている発電量の予想値と実際の発電量を比較し
実際の発電量が著しく少ない状態になっていないか確認する。
発電量が著しく少ない場合は、PCSが停止状態となっていないか
あるいはPCS本体の性能が低下していないかなどを調査すること。
また、太陽電池モジュールや接続箱、集電箱などの状態も調査し
発電量低下の原因を突き止めるとともに、早期復旧に努める必要がある。
新電気 2019年5月号 現場の電気保安実務 第158回 「パワーコンディショナーと関連機器の点検ポイント」より一部引用