波及事故とは、高圧受電設備などで起きた事故が原因で
送配電事業者の配電線に接続されている住宅、ビル、工場、病院、銀行、交通機関、交通信号システムなど
さまざまな範囲に停電が広がる事故を言い、毎年全国で 300 件から 500 件発生している。
波及事故が発生すると、機器の損壊など自社の損失だけでなく
他社工場の操業停止、信号機の消灯、病院の医療機器類が停止するなど、社会的に大きな影響を及ぼす。
場合によっては、多大な損害賠償を請求されるケースもある。
波及事故は設置者(波及事故発生者)の責任が問われ、さまざまな被害が伴う重大な事故となる。
波及事故の損害額
損害額は1千万円を超える事例もある。
事故発生者側の損害例
波及事故被害者側の損害例
保守不完全等対策
①区分開閉器
外観をチェックしている
外箱の損傷、発錆(はっせい)、腐食(穴あき)、変形、変色、汚損がないか、碍子の破損、ひび割れ、汚損などがないかなどの外観を確認すること。
設備の更新
目視点検により、さびなどの不良箇所(下部写真参照)を発見した場合は
状況に応じて設備を更新を顧客に推奨する。
②高圧ケーブル
ケーブルの状態をチェックしている
ケーブルに損傷や亀裂がないか、端末部分が
損傷、変形、汚損、トラッキング、テープがはがれていないかを確認すること。
また端子部分の端子の破損、ひび割れ、汚損がないかも確認する。
隔離距離が十分に保たれている
ケーブルと、他の工作物や植物との隔離距離が十分に保たれているか確認すること。
性能をチェックしている
定期点検では、絶縁抵抗測定などにより、性能を確認すること。
経年とともに水トリーの発生リスクが増加するので計画的に更新すること。
また、点検の結果、劣化の兆候が確認された場合は、更新推奨時期を満たなくても速やかに更新すること。
水トリー劣化の対策として、水トリーに対する高い信頼性が報告されている
絶縁体と内部・外部半導電層を同時に押し出し成形した「E-Eタイプ」への更新が推奨される。
③主遮断装置
絶縁部分が汚れていない
絶縁部分に汚れや亀裂等がないか確認する。
埃が付着し、湿気を帯びると絶縁性能が低下するため、トラッキングが発生しやすくなっている。
汚れを発見した場合は清掃が必要。
トラッキングの兆候が見られた場合は交換推奨を設置者に提案すること。
スムーズに開閉できる
開閉動作がスムーズにできるか確認すること。
グリース(潤滑油)が固まってしまっている場合は清掃を行い、新しいグリースを塗りなおすこと。
外観をチェックしている
ジーという異音や、変色(茶色っぽい焦げ跡等)がないか確認すること。
故意・過失対策
④掘削によるケーブル損傷
掘削作業中に誤って地中ケーブルを損傷すると、波及事故だけでなく
掘削作業者自身が感電するおそれもあり、危険である。
また、ビルや建物の改築工事などで、上下水道管を埋設する際に誤ってケーブルを損傷してしまい
波及事故となることもある。
ケーブルのある場所に標柱などを設置している
電気設備などの周辺で掘削工事を行う場合は
事前に必ず電気主任技術者と十分な打合せを行うことが重要となる。
また、ケーブルが埋設されている場所には標柱や標石を設置し
ケーブル埋設上部にはケーブル標識シートを敷設すること。
ケーブル標識シートは、掘削の深さ等を考慮し、必要に応じて埋設すること。
鳥獣対策
小動物の侵入
ケーブル引込口、引出口、通気孔、外箱の腐食破損箇所などから小動物が侵入し
充電部に触れて短絡や地絡事故が発生することがある。
穴やすき間をふさいでいる
小動物の侵入するおそれのある穴(通気孔・水抜き穴等)やすき間は
換気性能を考慮したうえシール材でふさいだり、パンチングメタルを施設すること。
また、腐食破損箇所は補修すること。
充電部分を保護している
断路器・限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器・変圧器・コンデンサなどの充電部に
絶縁バリア(相間バリア)や防護カバーを取り付け、小動物の接触による事故を防ぐこと。
自然・災害対策
暴風雨・暴風雪時の雨水等の浸入
換気口や通気孔、扉のすき間、腐食破損箇所などから雨水や雪、湿気が浸入し
地絡や短絡事故が発生することがある。
また、キュービクルが下駄基礎で設置されている場合も
キュービクル下部から風雨が浸入するおそれがあるので要注意となる。
キュービクルの状態をチェックしている
日常点検の際、キュービクル内に雨水等が吹き込んだ形跡がないか
雨水等が滞留していないか、確認すること。
キュービクル上部にさびがないかも確認が必要。
雨水等の侵入対策をしている
雨水等が吹き込む危険性がある場合は、キュービクル前面の換気口に防噴流対策板や水平切板を設置すること。
キュービクル上部のさびは適切な方法で補修すること。
キュービクル下部に雨水等が滞留している場合は排水口を設けたり
また下駄基礎で設置されている場合は、遮風板を取り付けるなどの対策が必要となる。
地震
地震対策をしている
雷害
雷害により、機器が損傷し波及事故となることがある。
特に屋外に設置されている区分開閉器は雷害を受ける確率が高いため、確実な保護が必要。
避雷器を設置している
機器類の損傷を防止するための最も有効な対策として避雷器がある。
区分開閉器は、避雷器内蔵タイプを採用するか
または避雷器を区分開閉器本体の負荷側近傍に取り付け、確実に保護すること。
避雷器を有効に機能させるために、定期点検の際は接地抵抗値を確認すること。
中部近畿産業保安監督部 近畿支部 電力安全課
ポスターより引用
関東東北産業保安監督部 「波及事故防止のお願い!自家用電気工作物設置者の皆様へ」より一部引用
https://www.jea-kansai.jp/iinkai/documents/hakyuujikoboushi2025.pdf
関西電気安全委員会 後援 経済産業省 中部近畿産業保安監督部 近畿支部 電力安全課
波及事故より画像引用