直流高圧絶縁測定の基礎知識まとめ

高圧絶縁測定は、高圧の電気設備(キュービクルトランス開閉器、ケーブルなど)の
絶縁状態の健全性を確認するために行われる非常に重要な試験。
絶縁が劣化すると、漏電地絡事故、感電、火災などの重大な事故につながるため
定期的な測定が必須となる。

直流高圧絶縁測定の目的

絶縁不良の検出

機器や電路の絶縁体(電線の被覆など)の劣化や損傷により
電気が本来流れてはいけない部分(大地や金属ケース)に漏れていないかを確認する。

事故の未然防止

絶縁抵抗値の低下は、漏電や短絡(ショート)の前兆となる。
定期的に測定することで、事故を未然に防ぐ。

傾向管理

定期点検時に測定値を記録し、前回の値と比較することで
絶縁の劣化傾向を把握し、設備更新の計画に役立てる。

直流高圧絶縁測定の方法

高圧電路の絶縁抵抗測定には高圧絶縁抵抗計を使用する。
測定する箇所は、主に以下の2種類。

① 対地間絶縁抵抗

目的

電路と大地の間=漏電・地絡に対する絶縁の健全性を確認する。

測定方法

絶縁抵抗計の一方を高圧電路(各相)に接続する。
もう一方を大地(接地線)に接続し
規定の直流高電圧(例:3,000V、5,000V、10,000V)を印加して抵抗値を測定する。

② 線間絶縁抵抗(主に新設・更新時)

目的

異なる相(例:R相とS相)の電線間の短絡に対する絶縁の健全性を確認する。

測定方法

絶縁抵抗計を異なる相の電線(例:R相とS相)の間に接続し
規定の電圧を印加して抵抗値を測定する。
通常、機器が接続されていると正確な測定が難しいため
主に機器を切り離した竣工時更新時に実施される。

測定電圧

測定には、測定対象の電路の定格電圧に応じて
1,000V以上の直流高電圧を印加できるメガーを使用する。

例:6kV回路の測定には、3,000Vまたは5,000Vのメガーが用いられることが多い。

絶縁抵抗値の判定基準

高圧電路については、低圧電路と異なり、電気設備技術基準に明確な基準値の記載はない。
※高圧ではより厳しい絶縁耐力試験(耐圧試験)が基準とされているため。

しかし、実務上の目安としては、以下の値が参考にされる。

設備・回路測定電圧実務上の目安 (最低限)備考
6kV高圧電路3,000Vまたは5,000V6 MΩ以上竣工時(新設時)は数百MΩ以上あるのが望ましいとされています。

注意点: 絶縁抵抗値は、測定時の温度や湿度に大きく影響される。
湿度が高いと抵抗値は低下するため、測定値だけでなく
過去のデータとの傾向管理が非常に重要になる。

4. 測定時の安全上の注意点

高圧を印加する非常に危険な作業であるため
安全管理を徹底する必要がある。

停電の確認

測定前に、必ず検電器を使用して無電圧であることを確認する。

残留電荷の放電

測定対象の高圧設備(特にコンデンサなど)には残留電荷が溜まっている可能性があるため
必ず放電棒などで残留電荷を確実に放電する。
メガー自体にも放電機能があるが、二重の安全対策が推奨される。

短絡接地

停電後、短絡接地器具を用いて電路を大地に短絡し
安全を確保した状態で作業を行う。

感電防止

測定中は高電圧が発生しているため、絶縁手袋を使用し
測定コードや端子に絶対に触れないようにする。

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