デマンドと電気料金の関係についての備忘録

高圧電力契約(50kW以上の契約)において
「デマンド」と「電気料金」は、コスト削減を考える上で最も重要な関係となっている。

「30分間の使用電力が、向こう1年間の基本料金を決めてしまうという仕組みになっている。

電気料金の構成

電気料金 =基本料金 +電力量料金}+ その他(再エネ賦課金等)

  • 基本料金(固定費):契約電力 × 単価
  • 電力量料金(変動費):使用量(kWh)×単価

デマンド値は、この「基本料金」を決める「契約電力」に直結する。

よっていくら省エネをして使用量(kWh)を減らしても
デマンド(kW)が高いままだと、基本料金は下がらない。

デマンド値の決まり方(30分値)

電力会社は、24時間を30分ごとに区切り、その30分間の平均使用電力(kW)を計測している。
これを「デマンド値」と呼ぶ。

30分デマンド値

30分間の電気使用量の平均値。

最大デマンド値(最大需要電力)

その月の中で、最も高かった30分デマンド値。

    つまりたとえ29分間電気をほとんど使っていなくても
    残りの1分間で猛烈に電気を使ってしまうと、その30分の平均値が跳ね上がり
    その月の最大デマンド値が高くなってしまう。
    →1年間の電気料金が上昇する。

    「12ヶ月ルール」について

    ここが最も重要なポイントです。多くの高圧電力契約(実量制)では
    「過去1年間で最も高かった最大デマンド値」が、その月の契約電力になる。

    一度でも高いデマンド値を記録すると、その後1年間はその高い値を基準に
     基本料金を払い続けなければならない。

    夏のエアコンで失敗した場合

    • 通常月:デマンド値 100kW
    • 8月のある日(猛暑):一斉にエアコンをつけて、わずか30分間だけデマンド値が 150kW になった。

    結果

    その瞬間から契約電力が 150kW に更新され、
    たとえ冬場に電気をあまり使わなくても、150kW分の基本料金が請求され続ける。


    金額へのインパクト(試算)

    デマンド値が 1kW 増えると、どれくらい損をするのか

    (基本料金単価を仮に 1,000円/kW の場合)

    1kWの上昇によるコスト増

    1,000円 ×12ヶ月= 20,400円}

    たった1kW(業務用の大型エアコン1台の半分程度)のピークカットに失敗するだけで
    年間約2万円の無駄なコストが発生する。
    さらに10kW、50kWとなれば、数十万〜百万円単位の影響が出る。

    主な電力量対策(デマンドコントロール)

    電気料金を下げるためには、総使用量(kWh)を減らす「省エネ」だけでなく
    ピーク(突出した使用)を作らない「デマンド管理」が重要となる。

    機器の起動時間をずらす

    始業時にすべての機械を一斉にONにせず、時間をずらして起動する。

    デマンド監視装置(デマンドコントローラー)の導入

    設定した目標値を超えそうになると、警報を鳴らしたり、自動で空調を制御したりするシステム。

    ピークシフト

    電力需要の多い時間帯の作業を、夜間や別の時間帯に移行する。

    まとめ

    • デマンド=瞬発力(パワー):30分間の平均の最大値。
    • 影響範囲:一度上がると、1年間基本料金が高止まりする。
    • 対策:電気を「使わない」ことより、「同時に使わない」ことが重要。
    名無し管理事務所