電力系統は、発電事業者の発電設備、送配電事業者の流通設備(送電線、変電所、配電線など)、需要家の需要設備が単独で設置・運用されているのではなく、すべてが接続された状態で連系して設置・運用されている。
すべてが接続された状態では、局所的な故障が系統全体に及ぶこと
個別対策が全体最適になるとは限らないことため
系統全体としての協調や費用対効果を考えて設備を設置・運用する必要がある。
これらの考え方を設備協調と呼び
電気設備の保護が対象であれば保護協調
電気設備の絶縁が対象であれば絶縁協調と呼ばれる。
電力系統は発電所(電源側)から需要家(負荷側)へツリー状に広がっているので
ツリーが枝分かれする所(変電所や分岐箇所など)でその先の枝(送電線や配電線)や
葉(需要家)を保護するのが合理的である。
これを保護範囲と呼び、需要家(葉)、配電線(枝)、配電用変電所(枝分かれ部分)の順に
保護範囲が大きくなり、影響範囲が大きくなっていく。
上図のように、上位系統が下位系統を包含する形となっているので
下位系統で故障があった場合、下位系統側から故障除去をすることにより、影響範囲を最小限に留めることができる。
また、保護装置の設置場所から負荷側が保護範囲となることから
電気の流れに沿って、保護装置を保護範囲の入口に設置することが合理的であり
入口に遮断器(PAS、VCBなど)や付属装置(保護継電器およびCT、ZCTやVT、ZPDなど)が設置される。
保護協調の目的は、配電線など他者への波及防止だけでなく
万一故障が発生した場合、故障部分のみを切り離して健全部分は運転を継続し、故障の拡大を防ぐことである。
そのために故障部分を選択的かつ最初に切り離す必要がある。
特別高圧以上の送電線では電源側と負荷側にCT等があり保護範囲を限定できることが
多いが、配電系統以下ではCTが電源側にしかなく、上位系の保護範囲が下位系を包含する形になっているため
需要家で構内故障が発生した場合、需要家側で対処しないと、影響が上位系に及ぶことになる
→波及事故の発生
このような故障の拡大を避けるためには、需要家の構内故障時は配電線の保護継電器よりも
需要家の保護継電器が先に動作するように継電器の動作値や時限を整定する。
これは、第2キュービクルや低圧側の配線用遮断器などがあるときも同様で
第2キュービクル側の保護範囲を狭くし、先に遮断させるように保護継電器を整定し、協調をとる。
具体例
受電用キュービクルの地絡保護用のDGR(方向性地絡継電器)の整定値が0.2A,0.2s,5%の場合
サブキュービクルの地絡保護用のDGR(方向性地絡継電器)の整定値を受電用キュービクルよりは小さく(早く動作するようにする)整定値が0.2A,0.1s,5%などにする。
雷保護などを実施する場合、もし協調を考えなければ
遮断器や変圧器など個別の機器の絶縁レベルを上げることが必要で、機器が割高となってしまう。
しかし、保護範囲の入口に避雷器などを設置し
全体を保護すれば、避雷器以降は防護されるので、個別の機器の絶縁レベルを上げなくて済み
トータルの費用は割安となる。
保護範囲の入口に保護装置(避雷器など)を設置し、機器の絶縁協調を図ることで
経済的、合理的に雷保護を行うことができる。
※避雷器の必要性についてはその設置費用と効果(雷撃による設備損失および操業損失の低減)の比較により決まる。
波及事故とは、需要家の構内故障の切り離しが遅れて配電線が故障停止するなど、下位系の設備故障が上位系の電気設備にまで影響が及ぶことをいい、影響が自社の他の電気設備等に及んだ場合は自社波及、他社の電気設備まで及んだ場合は他社波及と呼ばれる。
低圧の場合、停電範囲も狭く大きな問題となることは少ないが
高圧以上の場合、停電する設備や戸数が格段に広範囲となり、停電時間が長引くと大きな影響を及ぼすことになる。
自社の設備不備により配電線が停止した場合、その配電線に繋がっている全利用者が停電となり
その結果、工場の機械やビルのエレベータをはじめ、交通信号やコンピュータ関係、照明等が停止し、社会問題や賠償問題になることもある。
波及事故を発生させないためには保護装置の協調も重要であり
設備更新により機器の信頼性を上げること
避雷器の接地により故障の大半を占める雷害対策を確実に行うこと
も重要となる。
新電気2020年9月号「高圧受電設備の保護協調 入門第 1 回 保護協調の概要」より一部引用