電力系統は、発電事業者の発電設備、送配電事業者の流通設備(送電線、変電所、配電線など)、需要家の需要設備が単独で設置・運用されているのではなく、すべてが接続された状態で連系して設置・運用されている。
すべてが接続された状態では、局所的な故障が系統全体に及ぶこと
個別対策が全体最適になるとは限らないことため
系統全体としての協調や費用対効果を考えて設備を設置・運用する必要がある。
これらの考え方を設備協調と呼び
電気設備の保護が対象であれば保護協調
電気設備の絶縁が対象であれば絶縁協調と呼ばれる。
故障様相(短絡と地絡)
故障の様相には、短絡と地絡が存在し、短絡は電線と電線が、地絡は電線と大地間が接触し
故障電流が流れることをいう。
短絡には、2線が短絡するもの(二相短絡)と
3線が短絡するもの(三相短絡という)がある。
地絡には、1線が地絡するもの(1線地絡)と、2線以上が地絡するもの(2線地絡)がある。
2線地絡は、1線地絡により対地電圧が上昇して2線地絡となり
結果的に二相短絡となることが多い。
故障電流
図:短絡電流の流れ
短絡時の故障電流は、電源側から供給されるので
配電用変電所の短絡容量と配電用変電所から故障点までの距離や電線の種類がわかれば
一意的に決まる(上図参照)
※二相短絡の故障電流は三相短絡の故障電流の √3/2 倍となる。
地絡時の故障電流は、短絡と違い故障電流が大地を経由することから
接地方式や接地抵抗により様相が異なる。
超高圧以上の系統は中性点が直接接地されているため
短絡と同等の地絡電流が流れる。
図:故障電流の流れ
超高圧未満の特別高圧の系統は中性点が抵抗接地されているため
その接地抵抗により制限された地絡電流が流れる。
しかし、配電系統は非接地系であるため、電源側から地絡電流は流入せず
配電線の対地静電容量による地絡電流が故障点へ流れる(上図参照)。
図:日本の低圧系統例(TT系統)
低圧系統については、日本では変圧器低圧側(二次側)接地と機器筐体)の接地が
分離されている TT 系統が採用されているため、変圧器の B 種接地抵抗と機器の D または C 種接地抵抗を経由することになり、漏えい電流は比較的小さく、保護には漏電遮断器が必要となる(上図参照)。
短絡故障の場合、配電用変電所から故障点までの距離や線種、配電用変電所の短絡容量がわかれば
短絡電流は決まる。分散電源を考慮しなければ、末端ほど故障電流は小さく、電源側ほど大きくなる。
過電流継電器の特性は、確実に需要家設備の過電流継電器が配電線の過電流継電器より先に動作し
特性曲線が重ならないよう、電流整定と時間整定を調整する。
※電流整定値は故障時に確実に動作するが、通常の過負荷では動作しない範囲で、できるだけ低い値で整定する。
短絡保護協調例図
図:構外への地絡電流回路図
地絡故障の場合は、地絡電流が対地静電容量分であるため
他の配電線や配電用変電所の母線の対地充電電流相当分が故障点へ流れ込む。
(上図参照)
地絡電流は配電線の亘長や設備状況に左右され、需要家の継電器に流れる地絡電流が配電線の継電器に流れる地絡電流より大きい場合もあるため、一般的に時限(タイマ)により協調をとる。
地絡保護協調図
電気技術基準で地絡故障の場合は1秒以内に遮断することが要求されているので
配電用変電所の継電器の多くは最終的に0.9秒で仕上がるよう時限等が整定されている。
このため、需要家設備の継電器はこれより短い時限で遮断させる必要があるが
一般的には継電器の動作時間を0.2秒として協調をとることが多い。
他社や配電線の故障では自社の引込ケーブルや構内ケーブルの対地静電容量分が故障点へ流出するため
自社の引込ケーブルや構内ケーブルの亘長が長く、地絡リレーが無方向性のものであると
不要動作を起こすことがある。
このような場合、構内故障と構外故障が判別できるように方向性の継電器を採用する。
新電気2020年9月号「高圧受電設備の保護協調 入門第 1 回 保護協調の概要」より一部引用