短絡保護は、過負荷保護とは比較にならないほど
「大きなエネルギー」と「スピード」を扱うため
機器の選定や整定において極めて重要な役割を持る。
短絡(ショート)とは、電線同士の接触や絶縁破壊によって
負荷(抵抗)を介さずに電源が直接つながってしまう現象のこと。
短絡保護と過負荷保護の違い
| 項目 | 短絡保護 | 過負荷保護 |
| 電流の大きさ | 定格電流の数十倍〜数百倍以上(数kA〜数十kA) | 定格電流の数倍程度 |
| 発生からの時間 | 一瞬(数ミリ秒〜数十ミリ秒)で最大値に達する | 数秒〜数分かけてじわじわ発熱する |
| 求められる動作 | 機器が破壊される前に 「瞬時」に遮断 | 熱容量に合わせて「反時限」で遮断 |
| 主な破壊作用 | 熱作用(ジュール熱)+ 電磁機械力(物理的な破壊力) | 主に熱作用(絶縁物の劣化) |
短絡電流が流れると、回路には電磁機械力(電線同士が引き合ったり反発したりする力)が加わる。
この力は「電流の2乗」に比例するため、一瞬で母線が曲がったり、機器が物理的に破壊されたりする。
そのため、熱くなる前に、物理的に壊れる前に止めるのが短絡保護として必要な役割となる。
短絡電流は非常に大きいため、過負荷保護で使うバイメタルの湾曲を待っていては間に合わないため
以下のような高速な引き外し機構が使われる。
① 配線用遮断器(MCCB)の「瞬時引き外し機構」
低圧回路のMCCBには、過負荷用のバイメタルとは別に
短絡用の電磁式(または電子式)の瞬時要素が組み込まれている。
大電流が流れた瞬間に強力な電磁石が働き
可動鉄心が吸着されて一瞬(0.01秒クラス)でトリップさせる。
② 高圧交流遮断器(VCBなど)+ 過電流継電器(OCR)
高圧受電設備では、OCR(過電流継電器)の
「瞬時要素(INST)」が短絡保護を担う。
電流が事前に整定した短絡電流(例:定格の200%)を超えた瞬間
タイマーを介さず(誘導形なら円盤の回転を無視して直接、静止形やデジタル形なら電子回路で即座に)トリップ信号を遮断器へ送り、回路を切り離すことが可能。
③ 限流ヒューズ(PF)
高圧のPF・S形受電設備などで高頻度で使用される高圧機器の1つ
限流ヒューズは、短絡電流がその最高値(波高値)に達する前の
「立ち上がりの段階(最初の半サイクル以内)」で自ら溶断し、電流を強制的に抑え込んで遮断(限流遮断)する。
これにより、下流の機器に加わる熱的・機械的ストレスを劇的に減らすことができる。
短絡保護を確実に行うためには
実務上、以下の2つの能力を正しく評価する必要がある。
遮断容量(定格短絡遮断電流)
遮断容量とは
遮断器やヒューズが、「自身が壊れずに安全に遮断できる最大の短絡電流値」のこと。
もし受電点(電源に近い場所)の最大短絡電流が 10 kAある場所に
遮断容量 7.5 kA のMCCBを設置してしまうと、短絡が起きた際に遮断器自体がアークに耐え切れず爆発・内部短絡し、上流の遮断器を巻き込む全停電(波及事故)を引き起こす可能性がある。
そのため、必ず計算上の最大短絡電流を上回る遮断容量の機器を選定する必要がある。
短絡保護協調
過負荷保護と同様に、下流(末端回路)の短絡は末端の遮断器だけで止め
上流(主遮断器や電力会社側)を巻き込まないようにする調整(協調)が必要となる。
短絡電流はどちらの遮断器にとっても「瞬時領域」の巨大な電流になるため
単純な時間差(タイムラグ)だけで協調を取るのが難しいケースがあるため
機器の動作特性曲線(I-t特性曲線)を重ね合わせ、電流値の差や
ヒューズの限流特性などを利用して、確実に「選択遮断」が行われるよう計画する必要がある。