遮断容量とは
遮断容量とは、遮断器(ブレーカーなど)が、規定の条件下で
安全かつ支障なく遮断できる最大の短絡電流の実行値のこと。
回路に短絡事故が発生した際に、遮断器がこの遮断容量以下の短絡電流であれば
接点が溶着したり、遮断器自体が破壊したりすることなく、確実に電流を遮断できる能力を示す。
遮断容量の単位
遮断容量の単位は、一般的にキロアンペア (kA) で表される。
目次
遮断容量の選定

遮断器を選定する際には、その回路で発生する可能性のある最大短絡電流を事前に予測し
その値よりも大きい遮断容量を持つ遮断器を選定する必要がある。
もし、遮断容量が予想される最大短絡電流よりも小さい場合、短絡事故時に遮断器が正常に動作せず
重大な事故につながる可能性がある。
最大短絡電流の予測要因
- 電源の容量 (変圧器容量など): 電源容量が大きいほど、短絡電流も大きくなる傾向がある。
- 電源からの距離: 電源に近いほど、配線抵抗が小さくなり、短絡電流は大きくなる。
- 配線の太さ: 配線が太いほど、抵抗が小さくなり、短絡電流は大きくなる。
- 系統の構成: 系統のインピーダンスなども影響する。
なお、正確な最大短絡電流を計算するには、電力会社の系統情報や
電気設備のインピーダンスなどを考慮した専門的な計算が必要。
遮断容量の選定における具体的な考慮事項

遮断器を選定する際には、単に最大短絡電流よりも大きい遮断容量を持つものを選べば良いというわけではなく
以下の点も考慮する必要がある。
- 保護協調: 上位の遮断器と下位の遮断器が、事故時に適切な順序で動作するように、遮断容量だけでなく
動作時間特性なども考慮して協調を取る必要がある。 - 将来の増設: 将来的に電気設備の増設が予定されている場合は、それを見越して余裕のある遮断容量を
持つ遮断器を選定することが望ましい。 - 規格と認証: 遮断器は、JIS(日本産業規格)やIEC(国際電気標準会議)などの規格に適合し
認証を受けているものを選ぶようにすること。
これらの規格では、遮断容量に関する試験方法や性能基準が定められている。
遮断容量を誤った場合に発生する事故

電気回路は、通常は設計された範囲内で電流が流れるように制御されているが、
短絡(ショート)のような事故が発生すると、予測をはるかに超える大電流が瞬間的に流れる。
この大電流を安全に遮断できなければ、以下のような重大な問題が発生する可能性がある。
- 遮断器の破壊: 短絡電流が遮断容量を超えると、遮断器内部の接点が激しいアーク(火花放電)に
よって溶けたり、機械的な機構が破損したりして、電流を遮断できなくなる可能性がある。 - 火災の発生: 遮断器が正常に遮断できないと、短絡電流が流れ続け、配線や接続部が過熱し
周囲の可燃物に引火して火災を引き起こす可能性がある。 - 他の機器への影響: 短絡電流が遮断されずに流れ続けると、他の接続された電気機器にも悪影響を与え
故障の原因となることがある。 - 人身事故: 最悪の場合、短絡によるアーク放電や感電によって、人身事故につながる危険性もある。
遮断動作のメカニズムと遮断容量の関係

遮断器が短絡電流を遮断する際には、以下のプロセスが非常に短い時間で行われる。
- 短絡電流の検出: 遮断器内部のセンサーが、設定値を超えた大きな電流(短絡電流)を検知する。
- トリップ機構の動作: 検出信号を受けて、遮断器のトリップ機構が動作し、接点を分離する力を発生させる。
- アークの発生: 接点が高速に分離する際に、大きな電流が流れているため
接点間に高温のプラズマであるアークが発生する。 - アークの消弧: 遮断器は、このアークを速やかに消滅させるための工夫が施されている(消弧室、消弧板など)。
- 電流の遮断: アークが完全に消滅することで、電流の流れが遮断される。
遮断容量に関する誤解

- 定格電流との混同: 遮断容量は、遮断器が通常時に流せる最大の電流(定格電流)とは全く異なる。
定格電流は、遮断器が連続して安全に流せる電流の大きさを示すものであり
短絡事故時の大電流を遮断する能力を示す遮断容量とは区別する必要がある。 - 高いほど良いというわけではない: 過剰に大きな遮断容量を持つ遮断器を選定しても
経済的な負担が増えるだけで、必ずしも安全性が向上するとはいえない。
大事なのは、予想される最大短絡電流に対して適切な遮断容量を
持つ遮断器を選ぶこと。

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