富士電機製高圧真空遮断器MULTI.VCB シリーズの取り扱い方法まとめ③(試験時の注意事項~巡視点検と異常時の対応フロー)

高圧真空遮断器(VCB)の概略

VCB(Vacuum Circuit Breaker:真空遮断器)は
ビルや工場などの高圧受電設備(キュービクル等)において
電路の開閉および事故電流の遮断を行う遮断器のひとつ。

高真空の容器内で電極を開閉させることで
電流遮断時に発生するアーク放電を瞬時に消弧する仕組みを持つ。

主な役割

  • 負荷電流の開閉
    通常の運転時における機器への送電・停止を手動または遠隔で切り替える。
  • 事故電流(短絡・過電流)の遮断
    過電流継電器(OCR)などの保護リレーと連動し、短絡過負荷が発生した際に
    回路を高速で切り離して波及事故や機器の焼損を防ぐ。

主な特徴・メリット

  • 高い遮断性能と長寿命
    真空の絶縁耐力と消弧能力が高く、接点の摩耗が極めて少ないため長寿命。
  • 小型・軽量
    消弧空間が小さく済むため、盤内をコンパクトに収められる。
  • 安全性・低騒音
    油遮断器(OCB)のような火災リスクがなく
    ガス遮断器(GCB)のような有害ガス排出もなく、動作音も比較的小さい。
  • メンテナンス性
    構造がシンプルで点検・保守が容易。

富士電機製高圧真空遮断器MULTI.VCB シリーズ試験上の注意事項

過電流継電器と真空遮断器の組合せ試験

左図:測定試験機(マルチリレーテスタ)右図:回路図

電流引外し方式において,OCR と組み合わせて動作試験を行う場合は
以下のことに注意すること。

●引外しコイルは短時間定格品であるため,試験時に連続励磁させないこと。
※コイル焼損のおそれがある。

通電許容時間:3A 10 秒,9A 3 秒
特に、地絡継電器と組み合わせて試験を行う場合は
真空遮断器の a 接点を必ず入れて試験を行うこと。

●OCRの接点が短絡している状態で試験電流を設定し
この時,引外しコイルには電流が流れないため
試験器の内部抵抗だけが試験回路に挿入されることになる。

そのままの状態でOCRを動作させ引外しコイルに電流を流すと
試験回路に引外しコイルの抵抗が追加挿入されることになり
試験電流は設定した値よりも小さくなってトリップしない場合がある。

株式会社ムサシインテック製 マルチリレーテスタ IP-R□形の場合
OCR出力電流切換スイッチ(OCR CT RANGE)を20 Ωレンジにして操作を始めるが
所定の電流が得られない時は抵抗値を
20 → 15 → 10 → 5 → 2 → 1 → 0.5 → 0 と切り換えて所定の電流を流す。


電流引外し方式の場合
●手動ばね操作方式の場合、操作ハンドルを「切」位置(リセット状態)にて引外しコイルを動作させると
操作ハンドルが時計回りに約 60°回転する。その場合は再度リセット操作すること。

●電動ばね操作方式の場合、開閉表示器が「切」、ばね蓄勢表示器が「放勢」の状態で
引外し操作をしないこと。
電気的に蓄勢動作ができなくなると共にばね蓄勢表示器の誤動作が発生する可能性がある。
電気的に蓄勢動作ができない場合は、一度蓄勢ハンドルにて閉路ばねを蓄勢した後
投入ボタンを押し,その後,引外しボタンを押すこと。

●投入コイル,引外しコイルは短時間定格であり長時間電流を流すと損傷するおそれがあるので
入・切操作に異常が認められたら,直ちに電源を切ること。

真空バルブの真空状態確認

真空バルブの真空状態確認は清掃後,細密点検の際および必要に応じて行うこと。
真空遮断器を他の回路から切りはなして「切」状態にし
主回路の同相端子間に商用周波電圧 22kV を1分間印加し
耐電圧をチェックする。
※必ず接地してから試験を行うこと。
携帯形の耐電圧試験器「真空チェッカー」(別売品)を使用すると良否の判定を容易に行うことが可能。

耐電圧試験にて確認する方法

図:回路図

手順
① 上図に示すように試験器と真空遮断器を接続する。
② 電圧調整器にて高圧側電圧を 22kV まで徐々に上昇させる。
その状態で 1 分間保持し,放電がなければ真空状態は良と判定する。
電圧上昇中,放電のため電流計が振れる場合は電圧調整器を零まで戻し
絶縁カバーを取り外し,絶縁フレーム,絶縁シャフト,真空バルブ表面を清掃し,再び試験を行う。
これを数回行うことにより,電流計の振れはおさまり,22kV まで上昇可能となる。

判定
②を繰り返し行っても,電流が電圧に応じて上昇し
電流が 1.5 Aを継続して超える場合は不良とする。

真空チェッカーにて確認する方法

左図:VCB(真空遮断機)テスタ VCB-02 右図:回路図

手順
① 上図 に示すように真空チェッカーと真空遮断器を真空チェッカーに付属の試験用コードで接続する。
② POWER スイッチ,検出用遮断器 (DETECTOR)
TEST スイッチを順に投入し22kV を印加する。
もれ電流が 5mA 以下で、1 分後 OK ランプが点灯すれば、真空状態は良と判定する。
検出用遮断器 (DETECTOR) が、トリップし,NG ブザーが動作した場合は
上記のように絶縁カバーを取り外し、絶縁フレーム、絶縁シャフト,真空バルブ表面を清掃し
試験を数回繰り返す。

②を繰り返し行っても,検出用遮断器(DETECTOR)がトリップ
NG ブザーが動作する場合や電流計が継続して 5mA を超える場合は不良とする。
(METER SHORT スイッチを押し,電流を確認する。)

真空遮断器(VCB)の保守点検周期

VCBの保守点検は、設置環境や使用状況に応じて
「巡視点検」「定期点検」「臨時点検」に区分される。

保守点検周期の目安一覧

点検区分点検種別操作方式一般環境環境の悪い場所(屋外・結露・塩害・塵埃等)
巡視点検6か月1か月
定期点検初回点検据付後 1〜2年※1据付後 1〜2年※1
普通点検3年※11〜2年※1
細密点検手動ばね操作方式6年2〜4年
電動ばね操作方式6年※22〜4年※2
臨時点検必要に応じて実施必要に応じて実施
  • ※1 動作実績の確認
    1年間動作実績がなかった場合は、数回の開閉操作を実施して動作を確認する。
  • ※2 開閉回数による繰り上げ
    電動ばね操作方式の場合、点検周期の前であっても開閉回数が5,000回に達した時点で細密点検を実施する。
    (以降は表の周期通り)

点検開始時の重要手順:電動ばね操作方式の放勢手順

電動ばね操作方式のVCBは
通常運用時に投入ばねが自動で巻き上げられた「蓄勢状態」になっている。

蓄勢状態のまま点検作業を行うと、不意の誤操作や振動で機構部が動作し
指を挟むなどの重大な受傷事故を引き起こす恐れがあるため
点検開始前には必ず閉路ばねを安全に放勢する作業を行うこと

高圧受電設備において、主幹や主要フィーダーの保護・開閉を担う真空遮断器(VCB: Vacuum Circuit Breaker)。日々の月次点検や日常巡視において、活線状態のまま異常がないか確認する巡視点検は、重大事故を未然に防ぐための重要な業務です。

本記事では、VCBの日常巡視点検における基本チェック項目や確認要領、実務での注意点についてまとめました。

真空遮断器(VCB)巡視点検の基本項目

巡視点検は、「活線使用状態のまま定期巡視の際に外部から異常の有無を監視する」点検。
配電盤の扉を開けて確認する際は、充電部の接近限界(危険範囲)に十分注意し
適切な離隔距離を保って行う。

主な点検項目および要領

点検項目点検箇所および要領備考・判定基準
1開閉表示器開閉表示(「入/切」または「ON/OFF」)が回路の実際の通電状態と一致しているか確認する。正確に指示していること
2開閉度数計開閉度数計(カウンター)の動作回数を確認・記録する。●手動ばね操作方式
1,000回
●電動ばね操作方式10,000回
※規定値を超えている場合は本体の更新が必要
3ばね蓄勢表示器ばね蓄勢状(「CHARGED/DISCHARGED」など)が正しく表示されているか確認する。主に電動ばね操作方式の場合に確認
4その他(五感点検)異音(ジジジという部分放電音やうなり音)、異臭(焦げ臭)、過熱の兆候がないか確認する。異常音・異臭がないこと

実務における点検ポイントと安全管理

開閉回数(カウンター)の推移管理

VCBの寿命は、使用年数だけでなく開閉動作回数にも
大きく左右される。

  • 巡視点検のたびに数値を点検記録簿へ記録し、前回値からの増減を確認する。

ばね蓄勢状態の確認

電動ばね操作方式の場合、投入動作後に自動でばねが再蓄勢されつ。
「蓄勢完了(CHARGED)」になっていない場合、モーターの焼損や制御電源のヒューズ溶断
リミットスイッチの不良などが考えられるため、状態表示の目視確認を怠らないこと。

五感による異音・異臭・温度監視

  • 異音・コロナ放電音
    部分放電や接触不良が発生すると、特有の放電音(パチパチ・ジジジ音)が発生する。
  • サーモグラフィ等による温度確認
    端子部や接触部の緩みによる過熱がないか
    非接触温度計や赤外線サーモグラフィを活用して確認すること。

異常を発見した場合の対応フロー

巡視中に「異音」「異臭」「表示の不整合」「開閉回数オーバー」などの異常を発見した場合は
速やかに以下の対応を取ること。

  1. 状況の把握と安全確保
    • 盤扉を開けた状態での無理な接近や触手は厳禁となる。
  2. 負荷の制限・停止
    • 必要に応じて負荷機器を停止し、VCBを安全に遮断できる状態を整える。
  3. 運転停止および臨時点検の実施
    • 系統を停電・検電・接地したうえで、接触抵抗測定、絶縁抵抗測定、真空度点検(耐電圧試験)、機構部の注油・摩耗点検などの臨時点検を実施する。
  4. 機器の更新検討
    • 規定動作回数を超えている場合や
      真空バルブの劣化・漏れが疑われる場合は、速やかな機器更新を計画すること。

参考資料

メーカーの公式技術資料・カタログ

  • 富士電機技報・取扱説明書
    • 『高圧真空遮断器 MULTI.VCBシリーズ 取扱説明書』
    • 『MULTI.VCB 高圧真空遮断器 技術資料』
  • 株式会社ムサシインテック(試験器メーカー)
    • 『マルチリレーテスタ(IP-Rシリーズ)取扱説明書・試験手順書』
    • 『真空遮断器テスタ(VCB-02 / VCB-03)取扱説明書』

    業界規格・公的技術指針(点検周期・判定基準)

    保守点検周期(普通点検3年、細密点検6年、5,000回繰り上げ、寿命回数10,000回等)の
    根拠となっている公的規格。

    • JEM-TR 153(日本電機工業会 技術資料)
      • 『配電盤・制御盤の保守・点検指針』
      • VCBを含む高圧機器の点検区分(巡視・普通・細密・臨時)や点検周期基準の標準ガイドライン。
    • JEM 1425 / JEM 1459(日本電機工業会 規格)
      • 『金属閉鎖形スイッチギヤ及びコントロールギヤ』『高圧真空遮断器』
      • 開閉耐久性能(手動1,000回、電動10,000回など)の規定元。
    • 電気設備技術基準の解釈 / 内線規程(JEAC 8001)
      • 高圧受電設備における遮断器の設置基準、絶縁耐力試験(耐電圧試験)の規定。
    名無し管理事務所