ベント式(液式)蓄電池(CS型・HS型)設備の保守管理についての基礎知識まとめ

蓄電池設備の役割と重要性

蓄電池
電気設備において主に以下の役割で使用されている。

蓄電池は「停電時」という、非常時に確実な動作が求められる設備となる。
の点検で性能の低下や異常の有無をチェックし、適切な処置を行うことが極めて重要となる。
蓄電池の性能や寿命は、日頃の保守によって大きく左右される。

蓄電池点検の基礎知識

蓄電池の点検には
大きく分けて以下のような項目がある。

点検項目主な内容
(1) 外観点検電槽の破損、変形、液漏れ、端子の腐食などの有無を確認。
(2) 電解液の点検液面の高さ、汚れ、沈殿物の状況を確認。
(3) 電解液温度の測定温度計を用いて測定。
(4) 電解液の比重測定比重計を用いて測定(鉛蓄電池で特に重要)。
(5) 電圧測定総電圧、各セル電圧を測定。
(6) 容量測定放電試験を行い、容量を確認。
(7) 充電状態の監視充電電圧、充電電流を確認。
(8) 保守用具の点検点検に必要な道具が整っているか。

保守用具の準備

点検にあたっては、適切な道具を準備する必要がある。
鉛蓄電池用とアルカリ蓄電池用で、比重計などの用具を共用しないよう
区別できるようにしておくことが重要となる。
※電解液を中和するための処理液も異なる→鉛蓄電池には重曹水、アルカリ蓄電池にはホウ酸水など

  • 防錆油
  • ロート、駒込ピペット、ブラシ
  • レンチ(端子増し締め用)
  • 温度計(棒状温度計)
  • 吸込式比重計
  • 電池電圧計(高精度の直流電圧計)

具体的な点検のポイント

外観点検のチェックポイント

蓄電池の外観点検は、全てのセルに対して行う。

  1. 電槽の点検
    破損、亀裂、変形、汚損、漏液の有無。電槽底部の沈殿物
    (極板の劣化や充填物の脱落によるもの)にも注意する。
  2. 電解液の点検
    液面は水の分解、蒸発で低下するため、規定の範囲内にあるか確認する。
    不足時は、精製水(蒸留水)などを補給する。
  3. 電極板の点検
    極板間の短絡(ショート)、亀裂、わん曲の有無。
    陽極板の腐食、極板群の亀裂やピッチの隆起などを調べる。
  4. 端子部・導体の点検
    腐食、締付部のゆるみ、過熱跡の有無。
  5. 架台・その他
    架台の破損、酸腐食、耐震装置の良否。

外観点検の注意事項

  • 換気の徹底
    充電中および充電後には水素ガスが発生するため
    点検前には十分な換気を行う。
  • 感電・短絡防止
    ケースや端子部に触れる場合は感電に注意。
    絶縁保護された工具を使用する。
    ※濡れた手で触れるのは厳禁。
  • 清掃
    汚損している場合は、水やぬるま湯で湿らせた布で拭き取る。
    シンナーやアルコールなどは、電槽を傷める可能性があるため使用不可。
  • サビ防止
    サビが発生したときは、手入れをした後、防錆剤(油)を塗布する。

電解液温度と比重測定のポイント

電解液の温度と比重は、蓄電池の状態を知る重要な指標。

電解液温度の測定

温度計(液温計)を用いて測定する。
特に充電中は、浮動充電中であっても室温よりも高くなる傾向がある。
室温は月間平均で30℃以下が望ましいとされている。
また、全セルの平均値の±3℃以内に各セルがあることを確認する。

比重の測定(鉛蓄電池)

吸込式比重計を用いて
電解液の希硫酸の比重を測定する。
これにより、充電状態や電池の寿命を判定する。

  • 測定方法
    ゴム球の中の空気を押し出し、電槽の中から電解液を吸い上げる。
    比重計の中の浮子(フロート)が静止したときの目盛を
    液面と目を水平にして読み取る。気泡がある場合は、消えるまで待ってから測定する。
  • 温度換算
    電解液の比重は温度によって変化するため
    標準温度の20℃における値に換算する必要がある。

計算式(鉛蓄電池)

S20= St + 0.0007(t – 20)
(S20: 20℃に換算した比重、St: t℃において測定した比重、t: 測定時の電解液温度)

  • 比重基準値(液温20℃)
    クラッド式で1.215 ± 0.010、ペースト式で1.240 ± 0.010程度。

アルカリ蓄電池の比重

アルカリ蓄電池(水酸化カリウム溶液)は
充放電反応に直接関与しないため、比重測定は補液などで比重調整を行った場合や
通常は年1回程度実施する。
アルカリ蓄電池内蔵の液中比重計で直読した比重は、20℃に換算する必要ない。
基準値は一般に1.200~1.230程度。

浮動充電電圧の測定

蓄電池は自己放電を防止するため
常時浮動充電されている。

  1. 浮動充電状態の総電圧測定
    浮動充電方式では、充電器と負荷が並列に接続されているため
    蓄電池の総電圧を測定します。高精度の直流電圧計を使用。
  2. 充電中の各セル電圧の測定
    長年使用していると、各セル間で電圧や比重にばらつきが出ることがある。
    各セルの単電池電圧を測定し、規定値内にあることを確認する。
    基準値の± 0.05Vの範囲内が目安。
  3. 浮動充電時の電池電圧基準値(V/セル)
    • 鉛蓄電池: 2.15V~2.18V(型式による)。
    • アルカリ蓄電池: 1.36V~1.45V(型式による)。

本項の比重測定や液面点検は、主にベント式(開放形・液式)蓄電池を対象としており
近年の制御弁式(シール形)鉛蓄電池では、液面点検や比重測定は不要(不可)であり
主に内部抵抗測定や電圧測定で劣化を判定している。

充電装置と周辺機器の点検

  1. 表示灯・スイッチ
    表示灯の点灯および各スイッチの位置が定位置にあることを確認。
  2. 過熱・破損の有無
    充電装置内の配線などの過熱や破損、緩みを調べる。臭気(焦げ臭など)にも注意する。
  3. 充電状態の確認
    盤面の計器(電圧計、電流計)により
    浮動充電電圧(および電流)が適正範囲にあることを確認。
  4. 均等充電の実施
    必要に応じて、メーカーの仕様書に基づいて「均等充電」が適正範囲で行われているか確認する。
    触媒栓が付いている場合は、機能や有効期限(一般に5年程度)も合わせて確認する。

簡易な保守用測定器

図:バッテリーテスター

現場の保守・点検用として、簡易な測定器も活用されている。

  • ディジタル比重計
    電解液の温度と比重が液晶表示器にデジタル表示され、測定が容易。
  • バッテリークーラントテスタ
    光の屈折現象を利用し、蓄電池の比重や不凍液濃度を測定可能。
  • バッテリーテスタ
    抵抗器を内蔵し、蓄電池の使用状態に近い電圧(負荷電圧)を測定して指針でバッテリー容量の判定ができる。

蓄電池の故障と主な原因(トラブルシューティング)

点検結果に基づいて、異常が発見された場合は速やかに処置をする必要がある。

故障の状況主な原因備考
(1) 電解液の減少が激しい電槽の割れ。浮動充電電圧が高すぎる(過充電)。電解液不足は
極板の露出、温度上昇を招く。
(2) 電槽、ふた上面に液のにじみ上がり液栓ゴムパッキンのゆるみ。過剰液面。漏液は腐食の原因となる。
(3) 充電または放電中に接続部が熱くなる接続部の汚れ、締め付けのゆるみで接触抵抗が大きい。接続部の異常発熱は
火災の危険性あり。
(4) 電圧異常セルが混入している。
比重の上昇がはなはだしく遅れる
内部短絡している。電池上面がぬれてリークしている。(鉛蓄電池のみ)
(5) 陽・陰極板のサルフェーション放電状態で長期間放置した場合。(鉛蓄電池のみ)
容量低下の原因。
(6) セル間の電圧・比重(鉛蓄電池)のばらつきが多い停電後の充電不足。補液後の均等充電をしていない。
浮動充電だけで長期間均等充電をしなかった。
定期的な均等充電が必要。

耐用年数を経過した部品や蓄電池は、新品と交換し、予防保全に努めること。

参考資料

●JIS C 8704(据置鉛蓄電池) / JIS C 8706(据置アルカリ蓄電池)
●一般社団法人 電池工業会(BAJ) 蓄電池設備に関する技術資料
●主要バッテリーメーカー(GSユアサ等) 産業用蓄電池 取扱説明書
●絵とき電気設備の保守と試験(改訂2版)より一部引用

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