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浮動充電とは(用語説明)

充電装置に蓄電池と負荷を並列に接続し、蓄電池に常に一定の電圧を加えて充電状態(=良好な状態)に
しておくことで、停電または負荷変動時に無瞬断で蓄電池から負荷への電力を供給する方式のこと。

蓄電池を常に良好な状態に維持しておくために、適正な浮動充電電圧を印加する必要がある。

また、常時負荷がない場合は、トリクル充電される。

トリクル充電とは蓄電池の自己放電を補うために、微弱な電流を継続的に流し、満充電の状態を維持する充電方式

なお、メーカーによると浮動充電電圧は1.35±0.02V(アルカリ蓄電池の場合)

目次

浮動充電の原理

浮動充電の主な目的は、蓄電池を常に満充電に近い状態に保ち
必要な時にすぐに電力を供給できるようにすること

具体的には、以下のメカニズムで動作する。

定電圧充電の維持

充電器は、蓄電池の電圧よりもわずかに高い
一定の「浮動充電電圧(フロート電圧)」を継続的に印加し続ける。
この電圧は、蓄電池が満充電状態を維持できる最適な電圧として設定される。

自己放電の補償

蓄電池は、使用していなくても時間の経過とともに自然放電によって徐々に容量が減少する
浮動充電では、この自己放電による容量の減少分を
常に供給される微弱な電流(浮動充電電流)で補い続ける。

負荷への電力供給とバックアップ

平常時は、充電器からの電力が直接負荷に供給される。
蓄電池は、負荷の電力需要が充電器の供給能力を超える場合や
停電などで商用電源が遮断された場合に瞬時にバックアップ電源として機能
負荷へ電力を供給する。
この際、切り替え回路が不要であり、瞬断(一瞬の電力供給の途切れ)が発生しないのが大きな特徴。

浮動充電の構成

一般的な浮動充電システムは、以下の主要なコンポーネントで構成される。

  • 商用電源: 通常の電力供給源。
  • 充電器(整流器): 商用電源の交流電力を直流に変換し、蓄電池と負荷に供給する。適切な浮動充電電圧と電流を制御する機能を持っている。
  • 蓄電池: 電力を貯蔵し、非常時や充電器の能力不足時に負荷へ供給する。
    鉛蓄電池(ベント式、制御弁式)、リチウムイオン電池など、様々な種類の蓄電池が用いられる。
  • 負荷: 電力を消費する機器やシステム(通信機器、コンピュータ、非常用照明、制御装置など)。

浮動充電のメリット・デメリット

メリット 

  • 高い信頼性と瞬時応答性
    常時蓄電池が満充電状態に保たれているため、停電などの非常時に瞬時にバックアップ電源として機能し
    負荷への電力供給を途切れさせない。
  • 設備の簡素化
    充電器と負荷と蓄電池が並列に接続されるため、切り替え回路が不要となり
    システム構成が比較的シンプルになる。
  • 蓄電池の長寿命化
    過充電や過放電を防ぎ、常に最適な充電状態を維持することで
    蓄電池の劣化を抑制し、寿命を延ばす効果がある。
  • メンテナンスの軽減
    蓄電池の状態を常に監視し、自動で充電を維持するため
    手動での充電や状態確認の頻度が少なくなる。

デメリット 

  • 過充電のリスク
    不適切な浮動充電電圧の設定や充電器の故障は
    蓄電池の過充電につながる可能性がある。
    過充電は、特に鉛蓄電池において電解液の減少、極板の劣化、発熱、ガスの発生(水素ガス)を引き起こし
    蓄電池の寿命を著しく縮め、最悪の場合、発火・爆発の危険性もある。
  • 部分的な劣化(不均衡)
    複数の蓄電池を直列に接続して使用する場合
    個々の蓄電池の特性のばらつきにより充電状態に不均衡が生じることがある。
    一部のセルが過充電になったり、逆に充電不足になったりすることで
    全体の寿命が短くなる可能性がある。
  • 温度の影響
    浮動充電電圧は温度に敏感である。周囲温度が高いと過充電になりやすく
    低いと充電不足になりやすい傾向があるため、温度補償機能を持つ充電器が推奨される。
  • 初期充電の不足
    浮動充電は満充電状態の維持が目的であり、完全に放電した蓄電池を短時間で
    満充電にするような急速充電には向いていない。

浮動充電の応用事例

浮動充電は、高い信頼性が求められる様々な分野で広く利用されている。

  • 無停電電源装置(UPS: Uninterruptible Power Supply)
    コンピュータシステムやデータセンターなど、瞬断が許されない機器のバックアップ電源として不可欠となる。
  • 通信設備
    電話交換機、基地局、ネットワーク機器など、通信インフラの安定稼働を支える電源として使用される。
  • 非常用照明・防災設備
    停電時に自動で点灯する非常用照明や、火災報知器、自動ドアなどの防災設備のバックアップ電源となる。
  • 電力・鉄道インフラ
    変電所の制御電源、非常用電源、鉄道の信号システムや列車制御システムの電源など
    社会インフラの基盤を支える。
  • 太陽光発電システム(一部)
    オフグリッドシステムや、夜間の電力供給を目的とした蓄電池システムにおいて
    過放電を防ぎつつ満充電を維持するために浮動充電の考え方が用いられることがある。

蓄電池の種類と浮動充電

蓄電池の種類によって、適切な浮動充電電圧や管理方法は異なる。

  • 鉛蓄電池(ベント式、制御弁式)
    浮動充電に最も広く使用されているタイプ。
    セルあたり2.25V~2.30V程度の浮動電圧が一般的だが
    メーカーや電池の種類によって推奨値が異なる。
    制御弁式鉛蓄電池は密閉されておりメンテナンスフリーに近いが
    過充電には特に注意が必要
    となる。
  • リチウムイオン電池
    鉛蓄電池と比較して、充電電圧の管理が非常に厳密に求められる。
    過充電は熱暴走(サーマルランアウェイ)や発火のリスクを高めるため
    高精度なBMS(バッテリーマネジメントシステム)による電圧・電流・温度管理が必須となる。
    リチウムイオン電池の場合、常に満充電状態で浮動充電を続けることが推奨されないケースもある。
    (寿命を縮める可能性があるため、一定期間で充電を停止したり、適切な電圧範囲に保ったりする工夫がされる)。
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