高圧受電設備における地絡過電圧継電器(OVGR:Over Voltage Ground Relay)は
電路に地絡(漏電)が発生した際に生じる異常な電圧を検知し
遮断器に信号を送って回路を安全に切り離す保護継電器。
特に太陽光発電設備などの「系統連系」においては
電力会社側の事故波及を防ぐための非常に重要な役割を担っている。
電気を消費するだけの一般的な需要家(ビルや工場)では
別の継電器(DGRなど)で地絡保護を行うが
太陽光発電などの発電設備を高圧で電力会社の系統に繋ぐ(系統連系)場合、OVGRの設置が義務付けられている。
OVGR設置の目的
| 継電器の種類 | 検出する要素 | 組み合わせる機器 | 特徴・用途 |
| GR(地絡継電器) | 零相電流(Io) | ZCT(零相変流器) | 電流の大きさだけで地絡を判断。外部での事故の電流を拾ってしまい、誤動作(もらい事故)するリスクがある。 |
| DGR(地絡方向継電器) | 零相電流(Io)+ 零相電圧(Vo) | ZCT + ZPD | 電圧と電流の両方を見ることで「事故が起きた方向」を特定し、自社の構内事故のみを確実に遮断する。 |
| OVGR(地絡過電圧継電器) | 零相電圧(Vo) | ZPD または ZPC | 電圧の異常のみを検出。主に発電設備を電力系統に繋ぐ際の「単独運転防止」の役割として必須。 |
太陽光発電設備では低圧側にもOVGRが設置されるケースが多くある。
太陽光発電システムでは、パワーコンディショナー(PCS)から
昇圧トランスまでの間の低圧回路(AC210VやAC420Vなど)において
雷サージ等による機器の破損を防ぐ目的や、直流側の地絡事故時の影響を抑える目的で
「非接地方式(アースを浮かせた状態)」が採用されることが一般的となる。
非接地電路では、地絡事故が発生しても大きな地絡電流(零相電流:Io)が流れないが
健全相の対地電圧が上昇し、大きな零相電圧(Vo)が発生する可能性がある。
そのため、この低圧非接地回路の地絡保護には
電流(Io)を検出するGRではなく、電圧(Vo)の異常を検出する
「低圧用の地絡過電圧継電器(低圧OVGR)」が必要となる。
太陽光発電の低圧非接地電路で広く採用されている代表的な機種として
光商工製の低圧用地絡過電圧継電器「LVG-7S」が使用されていることがある。
| 項目 | LVG-7S |
| 動作電圧整定値 (完全地絡電圧の%) | 5-10-15-20-30(%) 電路電圧AC420V 10-20-30-40-50(%) 電路電圧AC380V 10-20-30-40-50(%) 電路電圧AC300V 10-20-30-40-50(%) 電路電圧AC210V 20-30-40-50-60(%) 電路電圧AC105V |
| 動作時間整定値 | 0.05-0.2-0.5-0.8-1.0(s) |
| 制御電圧 | AC 110V 使用電圧範囲 AC90〜120V |
| 周波数 | 50/60Hz |
| 使用温度範囲 | -20℃〜+60℃ |
| 消費電力(常時) | AC110V 4.4VA |
| 消費電力(動作時) | AC110V 5.5VA |
| 動作値誤差 | ±25% |
| 動作時間誤差 | 試験電圧: 整定電圧値に対する% 150% ・整定値 0.05(s): 0.1 以下 ・整定値 0.2(s): 0.1〜0.2 ・整定値 0.5(s): 0.4〜0.6 ・整定値 0.8(s): 0.7〜0.9 ・整定値 1.0(s): 0.95〜1.1 |
| 制御電圧の影響 | AC90〜120V 又は DC80〜143V において(標準状態における実測値に対して) 動作電圧 ±10% 動作時間 ±10%(0.05sは0.1s以下) |
| 温度の影響 | -20℃〜+60℃において(標準状態における実測値に対して) 動作電圧 ±15% 動作時間 ±10%(0.05sは0.1s以下) |
| 絶縁抵抗 | 継電器の電気回路一括と外箱間 DC500Vメガーにて 20MΩ 以上 |
| 商用周波耐電圧 | 継電器の電気回路一括と外箱間 AC2000V 1分間 |
| 振動 | 複振幅 0.4mm 16.7Hz 前後、左右、上下、各方向 600s |
| LDG-71Sシリーズ接続台数 | 30台 |
| 機能:試験方式 | 試験スイッチ |
| 機能:動作表示(表示方式) | 発光ダイオード表示(赤) |
| 機能:動作表示(復帰方式) | 自動復帰方式 |
| 機能:出力接点(復帰方式) | 自動復帰方式 |
| 機能:出力接点(構成) | 2a |
| 機能:出力接点(開閉容量) | AC 110V 5A (cosφ=1) 2A (cosφ=0.4) DC 24V 5A (L/R=1ms) 2A (L/R=7ms) DC 100V 0.6A (L/R=1ms) 0.2A (L/R=7ms) |
| 外装色 | マンセル記号 N1.5 |
| 質量 | 約 1.0kg |
①動作電圧表示灯(赤) 零相電圧入力が動作電圧整定値を超えると点灯し
整定値未満になると消灯する。
②動作電圧整定スイッチ
動作電圧整定値を切り替える。
③動作時間整定スイッチ
動作時間整定値を切り替える。
④試験スイッチ
動作時間整定値以上、下に倒し続けると継電器は動作し、出力接点が動作する。
出力接点は自動復帰方式なので、手を離すと同時に復帰する。
試験スイッチを操作すると出力接点が動作するので不用意に操作しないこと。
⑤電源表示灯(緑)
制御電源が入ると点灯する。
左図:LVG-7S と ZPC-2C の場合の外部接続図例 右図:実際の外部接続図例
試験時の注意事項
○ 継電器全体の性能試験は、地絡方向継電装置試験器を使用すること。
○ 零相電圧信号(Vo) は一次端子に印加すること。
→零相電圧検出器のZPC-2Cにはテスト端子がないため
○ 継電器の端子(Y1,Y2,M,N)に直接試験電圧・試験電流を印加することはできない。
直接試験電圧・試験電流がこれらの端子に加わると継電器が焼損する可能性があるので注意。
○ 試験器または別電源から継電器の P1,P2 端子に制御電源を供給する場合には注意すること。
※VTから直接印加されている場合は P1,P2 端子の配線を離線しないと逆昇圧の可能性がある。
○ 仮設電源をご使用の場合は試験器の電源電圧に注意すること。
試験器の電源が不安定な場合試験に影響が出る。
試験方法
最小零相電圧試験
ZPC-2C の一次端子(三相一括)に印加する試験電圧を徐々に大きくして
LVG が動作するときの動作電圧を測定する。
※動作電圧時の動作時間を最小にすればすぐに反応が可能になる。
動作時間試験
ZPC-2C の試験電圧を零相電圧整定値の 150%に合わせる。
この条件の信号を急に印加して動作するまでの時間を測定する。
LVG-7S と ZPC-2C の場合
零相電圧分
電路電圧 AC420V の場合
| 整定電圧値 (%) | 動作値 下限値 | 動作値 基準値 | 動作値 上限値 |
| 5 | 9.10 | 12.12 | 15.15 |
| 10 | 18.19 | 24.25 | 30.31 |
| 15 | 27.28 | 36.37 | 45.46 |
| 20 | 36.38 | 48.50 | 60.62 |
| 30 | 54.56 | 72.75 | 90.93 |
電路電圧 AC380V の場合
| 整定電圧値 (%) | 動作値 下限値 | 動作値 基準値 | 動作値 上限値 |
| 10 | 16.46 | 21.94 | 27.42 |
| 20 | 32.91 | 43.88 | 54.84 |
| 30 | 49.37 | 65.82 | 82.27 |
| 40 | 65.82 | 87.76 | 109.69 |
| 50 | 82.28 | 109.70 | 137.12 |
電路電圧 AC300V の場合
| 整定電圧値 (%) | 動作値 下限値 | 動作値 基準値 | 動作値 上限値 |
| 10 | 13.00 | 17.32 | 21.65 |
| 20 | 25.99 | 34.64 | 43.30 |
| 30 | 38.98 | 51.96 | 64.95 |
| 40 | 51.97 | 69.28 | 86.60 |
| 50 | 64.96 | 86.60 | 108.25 |
電路電圧 AC210V の場合
| 整定電圧値 (%) | 動作値 下限値 | 動作値 基準値 | 動作値 上限値 |
| 10 | 9.10 | 12.12 | 15.15 |
| 20 | 18.19 | 24.25 | 30.31 |
| 30 | 27.28 | 36.37 | 45.46 |
| 40 | 36.38 | 48.50 | 60.62 |
| 50 | 45.47 | 60.62 | 75.77 |
電路電圧 AC105V の場合
| 整定電圧値 (%) | 動作値 下限値 | 動作値 基準値 | 動作値 上限値 |
| 20 | 9.10 | 12.12 | 15.15 |
| 30 | 13.64 | 18.19 | 22.73 |
| 40 | 18.19 | 24.25 | 30.31 |
| 50 | 22.74 | 30.31 | 37.88 |
| 60 | 27.28 | 36.37 | 45.46 |
動作電圧表示灯(赤)が点灯した場合
動作電圧表示灯(赤)が点灯した場合は、下記の要因が考えられる。
・ 電路内で地絡事故が発生した場合。
・電路で 1 相が欠相している場合 or 三相電路において
各相の対地静電容量(インピーダンス)に大きなアンバランスが生じた場合
見掛け上の零相電圧が生じて動作電圧表示灯(赤)が点灯する場合。
・LVG 本体の故障により動作電圧表示灯(赤)が点灯する場合。
光商工株式会社
『低圧用地絡過電圧継電器 LVG-7S 取扱説明書』『零相電圧検出器 ZPC-2C 仕様書・取扱説明書』
光商工 製品カタログ(低圧地絡過電圧継電器)
経済産業省
『電気設備の技術基準の解釈』(分散型電源の系統連系設備等の施設規定)
一般社団法人 日本電気協会
『系統連系規程』(JEAC 9701)『高圧受電設備規程』(JEAC 8011)
公益社団法人 日本電気技術者協会
『自家用電気工作物保安管理実務マニュアル』『保護継電器試験技術資料』