直列リアクトルにおける定格電圧と回路電圧の違いの備忘録

力率改善のために進相コンデンサを回路に接続すると
回路の高調波成分が増大して、波形のひずみが大きくなる。
これを防ぐには、高調波に対して回路を誘導性にする必要がある。
このために使用するのが直列リアクトルであり、コンデンサと直列に接続される。


直列リアクトルはコンデンサ投入時の突入電流を抑制し
開閉器の寿命低下や計器用変流器(CT)、過電流継電器(OCR)などの
機器の損傷を防止する働きもある。

直列リアクトルの特徴と役割

電力コンデンサを投入するときに20~30倍の突入電流が流れる。
このときに異常音が発生したり、保護計継電器を誤動作させる原因となる。
直列リアクトルは、突入流を1/5に軽減する。
また、インバータやサイリスタ負荷などの高調波による電圧波形のひずみを防止する。

高調波電流の流出抑制対策

進相コンデンサは、容量性インピーダンスで周波数が大きくなるほど流れる電流も大きくなる特性をもち
高調波に弱い。同回路内に高調波発生機器が存在すると進相コンデンサにも高調波流出電流が流れる。
この電流と、電源側の誘導性インピーダンスとの共振現象によってさらに拡大し
電源側への高調波流出電流が拡大して配電系統に障害(電圧歪み)が発生する。

●コンデンサのみ

●コンデンサ+直列リアクトル

直列リアクトルを挿入することによって、進相コンデンサを含む回路全体が誘導性インピーダンスになり
高調波流出電流は拡大しない。

進相コンデンサ投入時の突入電流の抑制

突入電流とは、電気機器に電源を投入した瞬間に流れる過渡的な電流のことで
定格電流よりも大きな電流が流れる。進相コンデンサは通電した瞬間に
充電が始まるため大きな突入電流が発生する。
この突入電流により、コンデンサの寿命が短くなりまた、ヒューズが誤動作を起こすことがある。

●コンデンサのみ

リアクトルは自己誘導作用特性をもち
電流が流れた瞬間にそれを打ち消す逆方向の起電力を発生させる。
この特性により突入電流を抑制できる。

●コンデンサ+直列リアクトル

回路電圧(システム全体の電圧)

回路電圧とは、リアクトルが接続される
電力系統(キュービクル内など)の基準となる線間電圧を指す。

リアクトルの定格電圧

直列リアクトルの銘板や仕様書における「定格電圧」には
実稼働でコイルにかかる「端子間電圧」と
機器としての安全性を担保する「絶縁電圧」の2つの意味がある。

① 端子間電圧(実際にリアクトル両端にかかる電圧)

直列リアクトル(SR)は進相コンデンサ(SC)と直列に接続して使用される。
そのため、電源電圧(6600V)はリアクトルとコンデンサで分担される。

計算例(6%直列リアクトルの場合)

6%直列リアクトルのリアクタンス XL は
進相コンデンサのリアクタンス XC に対して XL = 0.06XC となる。
LC直列回路の電圧上昇を考慮すると
進相コンデンサの端子電圧 VC は、計算上約7020V(線間電圧)まで上昇する。
リアクトルの端子電圧(相電圧)VL は、コンデンサの相電圧(VC / √3)の6%となるため
VL = 0.06 × (7020 / √3) の式から、約243Vと算出される。

回路の電圧は6600Vであっても、リアクトルの両端に実際にかかる電圧(相電圧)は
約243Vと非常に低い値になる。

実務上のカタログ等では、コンデンサの定格電圧をあらかじめ余裕を持たせた7200Vとし
リアクトルの定格電圧(線間換算)を 7200V × 0.06 = 432V と表記するのが一般的

絶縁階級としての定格電圧(対地間に対する耐圧)

端子間にかかる電圧は約243Vであっても、機器自体は6600Vの活線上に配置されている。
そのため、地絡等の異常時に外箱(大地)とコイルの間に高電圧がかかることを想定し
機器の「絶縁」としての定格電圧(最高電圧)は、回路電圧以上の7200Vで設計される。

3. 総まとめ(6.6kV回路・6%リアクトルの場合)

電圧の種類具体的な数値意味合い
回路電圧6600Vリアクトルが接続されている大元の電力系統の線間電圧。
定格電圧 (端子間/相電圧)約243V計算上、実際にリアクトルのコイル両端にかかる電圧。
定格電圧 (絶縁/最高電圧)7200Vリアクトル本体が耐えなければならない対地間の絶縁性能の基準値。

参考資料

株式会社指月  情報ライブラリー>直列リアクトル設置の義務化について
より引用

 https://www.shizuki.co.jp/catalog/electric/

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.shizuki.co.jp/common/pdf/catalog/electric/shizuki_08.pdf
株式会社指月 「コンデンサ・リアクトルご使用上の注意」より引用

JIS C 4902「高圧及び特別高圧進相コンデンサ用直列リアクトル」(日本産業規格)

高圧受電設備等規程(JEAC 8011)(一般社団法人 日本電気協会)

高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン(経済産業省)

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