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ケーブルのシュリングバック現象について

まとめるに至った経緯

中部近畿産業保安監督部近畿支部のホームページ上にて、令和5年度事故情報を閲覧していたら、シュリングバックによるケーブル地絡事故が発生していた。

この現象について認識が不足しているため、今後の保安業務の対策として調べることにした。

https://www.safety-kinki.meti.go.jp/denryoku/2023accident/denki_jiko_2023fy.html

電気事故情報(令和5年度)より

シュリングバックについての概略

ケーブル製造時の残留応力(収縮しようとする歪み)が
日射や通電などによるヒートサイクルによって開放されシースが収縮する現象のこと。
シュリンクパック現象が発生すると、シース端部が露出して、水がケーブル内に浸入したり
遮へい銅テープが破断したりして絶縁破壊に至ることがある。
特に、太いケーブルや直線部が長い箇所、日射による温度変化が大きい箇所では
収縮量が大きくなる傾向があるので注意が必要となる。

特にCEケーブル等のポリエチレンシースケーブルは製造時の残留応力が大きいためシュリンクパック現象が
発生しやすい。

https://www.3mcompany.jp/3M/ja_JP/power-distribution-jp/anti-shrink-back-solution/#:~:text=%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AF%E7%8F%BE%E8%B1%A1%E3%81%A8%E3%81%AF,%E8%87%B3%E3%82%8B%E5%8F%AF%E8%83%BD%E6%80%A7%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
スリーエムのシュリンクバック対策ソリューションのご紹介より画像引用

シュリンクパック現象によって起こる影響

シュリンクバック現象が起こる原因

  • ケーブル布設時の屈曲・切断箇所
  • 運転負荷の大きい使用環境
  • 残留応力の大きいケーブル
  • ヒートサイクルによる温度変化が大きい場合(負荷電流が大きい)
  • 日射など敷設環境によりケーブル表面温度の変化が大きい場合
  • ケーブルくせ取りが長い直線状態にある場合
  • 大サイズの単心ケーブルの場合

条件が重なるほどシュリンクバック現象が発生しやすい傾向にあります。

シュリンクパック現象の対策

主に下記の対策が考えられる

日常点検

ケーブル端末部におけるテープの巻き乱れや段差、銅テープの露出などに注意する必要がある。
※柱上の端末などになると肉眼での発見が困難なため、双眼鏡などを使用するのが望ましい

対策部品の使用

①シースずれ止め用熱収縮チューブ ブラケット・ゴムスペーサー上部のケーブルシースに固着することで
 収縮を抑制する効果がある。

②スプリング式アルミクリート 内蔵のスプリングがゴムスペーサーに一定の圧力を加えることで
 収縮を抑制する効果がある。
 ※既設ケーブル等にも取付可能。

③後付け用ファスナー付熱収縮チューブ(シースずれ止め用)
 シースずれ止め用熱収縮チューブにファスナーを取り付けている部品。
 主に既設ケーブル等で端末部の施工が完了している箇所等に、後付けで取り付けることができる。

※上記3部品を取り付ける際には、ケーブルシース端より1m以内に取り付けることが望ましい。

引用:chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.sumiden-kiki.co.jp/products/cable/pdf/release_20210820_1.pdf

補足(残留応力について)

材料や構造物に外力が作用していない状態でも
内部で静的に釣合いを保っている応力が存在している場合があり
このような内部応力を残留応力(residual stress)と呼ぶ。
応力には方向があり、物体が外力によってひっぱられ
伸ばされようとするときに発生するものを引張応力といい
反対に外力によって縮めようとするときに発生するものを圧縮応力という。

参考資料

新電気 2025年8月号 現場の電気保安実務第232回「ケーブルの事故」より一部引用

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