電気設備を構成する機器及び電線路は、正常運転中の定格電圧のほかに、事故時や電線路遮断時の異常電圧に対して、十分な絶縁強度を持っていないといけない
絶縁強度は、電気機機器で最も重要な要素であり、絶縁上でにおいて欠陥があればその機器や工作物は絶縁破壊する
電気機器の絶縁性能を判定するために、絶縁耐力試験を行う必要がある。
高圧または特別高圧の電路の場合、電気設備技術基準の解釈では、絶縁抵抗測定ではなく「絶縁耐力試験」を行わなければならないと規定されている。
絶縁耐力試験とは、通常使用する電圧よりも大きな試験電圧を電路や機器に所定の時間印加する試験方法であり
絶縁破壊が発生しないか、キック現象などのようなケーブルの絶縁性能に問題があることを
示す現象が見られないかなどを確認する試験のこと。
電気技術基準の解釈第15
試験電圧を電路と大地の間に連続して10分間加えたとき、これに耐える性能を有すること
絶縁耐力試験を行う条件
●高圧電気設備の新設または増設工事を竣工した場合
●高圧機器の修理後再使用する場合
●機器やケーブルなどの設備を長期間放置して使用を再開する場合
絶縁耐力試験は基本的に、実際の使用状態に施設し接続された設備について現場で行う。
交流による絶縁耐力試験は、一般に下記試験回路図のような回路構成で実施される。
まずは単相交流発電機で交流電圧を発生させ
それをスライダックおよび試験用変圧器を通すことによって必要な大きさの試験電圧まで昇圧させる。
そしてこの試験電圧を被試験電路の導体部に印加することによって
電路の絶縁部に試験電圧が加わり試験が成立するという構成となっている。
ここで、試験電圧として交流電圧を印加しているため
回路には充電電流ICが流れる。
試験電圧をVt[V]、周波数をf[Hz]、被試験電路の対地静電容量をC[F]とすると
充電電流IC[A]は、
IC=2πfCVt[A]
と求められる。
また、試験用変圧器の二次側(電路側)には試験電圧Vt[V]が発生し
充電電流IC[A]が流れているため、試験用変圧器に要求される容量P[V ・A]は、
P=VtIC[V⋅A]
となることがわかる。
なお、試験用変圧器の容量が上式によって算出した要求される容量に満たない場合は
(a) 要求される容量を超える容量の試験用変圧器を用意する
(b) 補償リアクトルを用いる
ことによって、充電電流を打ち消すだけの遅れ電流を流すことにより
試験用変圧器に要求される容量を低減させる。
という2つの方法がある。
試験回路図
試験用電圧の計算式
試験電圧は低圧側で測定し、試験用変圧器の変圧比から計算で求める
試験方法
①耐電圧試験装置を結線する
②被試験設備の絶縁抵抗値に異常がないことを確認した後、出力端子に接続する。
③試験電圧の印加前に、周囲の安全を十分確かめるとともに、必要に応じて監視者を置くなどの措置を講じる。
④電圧調整器が0の位置にあることを確認後、試験機の電源を投入し、電圧を徐々に上昇させ、規定電圧にして10分間保持する
⑤電路に接続されている機器、ケーブルなどに試験電圧が印加されたことを検電器にて確認する。
⑥各計器の指示を記録する。
⑦規定の時間経過後、電圧を徐々に降下させ、電線の電路を放電させた後、絶縁抵抗を測定する。
試験の安全対策
①絶縁耐力試験を行う施設には安全さくを施し、危険標識を取り付ける。
②試験機操作者は、絶縁シートの上で行い、高圧ゴム手袋を着用する
③電圧印加中は、他の作業員により立ち入り、禁止区域に立ち入る人がいないように監視する。
充電電流は進み電流のために上記図のように
回路に並列に補償リアクトルを挿入して遅れ電流を流し、進み電流を打ち消すことによって
試験用変圧器に要求される容量を低減させることができる。
電路に流れる充電電流(進み電流)をIC[A]、補償リアクトルに流れる遅れ電流をIL[A]とすると
試験用変圧器から流れる電流I [A]は、
I=IC−IL [A]
となる。したがって試験用変圧器に要求される容量P'[V・A]は、
P′=VtI=Vt(IC−IL)[V⋅A]
となるため、補償リアクトルがない場合に対して
ΔP = Vt IL[V・A]だけ要求される容量が低減されていることがわかる。
①試験電圧印加後に一次電流、二次電流(充電電流)が安定していること
②被試験物から異音、異臭、振動、変形、変色などが見られないこと
③試験電圧印加前後の絶縁抵抗値に大きな変化がないこと