1回線受電方式
1回線受電方式は、電力会社から1本の送電線(回線)を通して電力を受電する最も一般的な方式。
主に中小規模の工場、ビル、店舗、一般家庭などで採用されている。
1回線受電方式の仕組み
- 電力会社の変電所から1本の送電線が施設に引き込まれ
受電設備(キュービクルなど)を通して施設内に電力が供給される。 - 送電線が1本しかないため、その回線に事故や故障が発生した場合、基本的に停電となる。
1回線受電方式のメリット・デメリット
- 設備コストが安い
2回線受電方式に比べて、引き込み線や受電設備がシンプルで済むため
初期導入コストを抑えることが可能。 - 設置スペースが少なくて済む
設備が少ないため、設置に必要なスペースも少なくて済む。 - 運用・保守が容
設備がシンプルなため、運用や保守も比較的容易。
デメリット
- 電力供給信頼性が低い
1本の回線に依存しているため、電力会社の送電線にトラブル(落雷、電柱の倒壊、設備故障など)が
発生した場合、停電が避けられない。復旧には電力会社の作業が必要となり、時間がかかる可能性がある。 - BCP(事業継続計画)対策が不十分
停電時の事業継続性が確保されにくく、重要な設備や業務がある場合は
別途停電対策(自家発電設備、UPSなど)が必要となる。 - 大規模施設には不向き
大容量の電力を安定的に供給するには、回線数が不足する場合があり
また停電時のリスクも大きくなるため、大規模な施設にはあまり適していない。
主な採用施設
一般的なオフィスビル、商業施設
中小規模の工場
マンション、アパート
一般家庭
2回線受電方式
2回線受電方式とは、電力会社から2本の送電線(回線)を通して電力を受電する方式のこと。
主に大規模な工場や病院、データセンター、オフィスビルなど、高い電力供給信頼性が求められる施設で
採用されている。
2回線受電方式の種類
●本線予備線受電方式(常用・予備線方式)
通常は1本の回線(本線)から受電し、もう1本の回線(予備線)は待機させておく。
本線に事故や故障が発生した場合、自動または手動で予備線に切り替えることで、停電時間を短縮することができる。
●ループ受電方式
電力会社の配電線をループ状(環状)に構成し、そのループから2本の回線で受電する方式。
常に2本の回線から電力が供給されているため、一方の回線にトラブルが発生しても
もう一方の回線から受電を継続できる。
2回線受電方式のメリット・デメリット
2回線受電方式のメリット
- 電力供給信頼性の向上
1回線受電方式に比べて、電力会社の送電線にトラブルが発生した場合の停電リスクを大幅に低減できる。
本線が停電しても予備線に切り替えることで、事業活動への影響を最小限に抑えることが可能。 - BCP(事業継続計画)対策
災害や事故などによる停電時でも電力供給を継続できるため、企業のBCP対策として非常に有効。 - 大規模施設への対応
大容量の電力を安定して受電できるため、大規模な施設に適している。
2回線受電方式のデメリット
- 設備コストの増加: 2本の回線を引き込むための設備や、切り替えのための機器(遮断器、インターロックなど)が必要となるため、1回線受電方式に比べて初期導入コストが高くなる。
- 設置スペースの確保: 設備が増えるため、設置スペースの確保が必要になる。
- 運用・保守の複雑化: 2本の回線の管理や切り替え操作など、運用・保守が複雑になる場合がある。
2本の回線を引き込むための設備や、切り替えのための機器の例
特別高圧では常用回線・予備回線の2回線受電方式で受電していることが多い(下記図参照)
万が一、変電所や電力会社で異常が発生した場合に双方を切り分けられるように、
受電設備には遮断器を2台設置している。
これらの機器には、保守が容易かつコンパクトで信頼性が高く、最近の主流となっているキュービクル形ガス絶縁開閉装置(C-GIS)を採用していることが多い。
1回線受電方式と2回線受電方式の違いまとめ
1回線受電方式と2回線受電方式は、電力会社から施設へ電力を引き込む際の基本的な方式であり
その最大の違いは電力供給の信頼性とそれに伴うコスト、適応規模がある。