包装ヒューズについての基礎知識まとめ

包装ヒューズは、過電流から電気回路や機器を保護するために用いられる保安部品で
溶断体を絶縁性の材料で密封(包装)しているのが特徴
溶断時のアークや金属蒸気の飛散を防ぎ、安全性を高めている。

包装ヒューズの種類と特徴

低圧包装ヒューズ

  • 一般家庭や低圧の電気設備で使用される。
  • 筒形、角形など様々な形状がある。
  • 定格電流や遮断容量の種類が豊富。
    例:家庭用ブレーカーの二次側

高圧包装ヒューズ

  • 高圧の電気設備で使用される。
    ※主に筒形
  • 高い遮断容量を持ち、大きな短絡電流を安全に遮断できる。
    例:変電設備や高圧受電設備で使用されるもの。

限流ヒューズ

  • 短絡電流を瞬時に遮断し、その値を大きく制限する機能を持つヒューズ。
  • 機器をより確実に保護が可能。
  • 高圧および低圧用がある。

タイムラグヒューズ(遅延溶断ヒューズ)

短時間であれば定格電流を超える電流に耐えることができるヒューズ。
モーターの起動時など、一時的に大きな電流が流れる回路に適している。
低圧用によく見られる。

包装ヒューズの役割と仕組み

包装ヒューズの主な役割は、回路に過電流(短絡電流過負荷電流)が流れた際に
ヒューズ内部の溶断体が発熱して溶断し、回路を物理的に遮断することで
電気機器の損傷や火災を防ぐこと。

包装ヒューズの仕組み

  1. 通常時: 回路に定格電流以下の電流が流れている状態では、溶断体は発熱しても溶断する温度には達しない。
  2. 過電流発生時: 回路に定格電流を超える過電流が流れると
    溶断体にジュール熱(Q=I^2Rt)が発生し、温度が急激に上昇する。
  3. 溶断: 溶断体の温度がその金属の融点に達すると溶け、回路が遮断される。
  4. アーク消弧: 包装された構造により、溶断時に発生するアーク(電気的な火花放電)
    外部に漏れるのを防ぎ、安全に消弧される。

包装ヒューズの選び方

  1. 定格電流: 保護したい回路に通常流れる最大電流よりもわずかに大きい値を選ぶ。
    小さすぎると頻繁に溶断し、大きすぎると過負荷時に機器を保護できない。
  2. 定格電圧: 使用する回路の電圧以上のものを選ぶ。
  3. 遮断容量: 回路で発生する可能性のある最大の短絡電流を安全に遮断できる能力を持つものを選ぶ。
    遮断容量が不足すると、ヒューズが破裂したり、アークが消弧できずに事故につながる可能性がある。
  4. 種類と特性: 保護する機器や回路の特性に合わせて、速断性、遅延性、限流性などの特性を持つヒューズを選ぶ。
    例)モーター回路にはタイムラグヒューズが適している。
  5. 形状と寸法: 取り付けるヒューズホルダや制御盤のスペースに適合する形状と寸法のものを選ぶ。
  6. 規格: 使用する場所や機器の規格に適合したものを選びます
    (例:JIS規格)

包装ヒューズの取り付け方と注意点

  • 電源を切る: 必ず回路の電源を完全に切ってから作業を行う。
  • 正しいヒューズを選ぶ: 回路の定格電流、電圧、遮断容量に合った正しいヒューズを選ぶ。
  • 確実に装着する: ヒューズがヒューズホルダに確実に接触するように取り付ける。接触不良は発熱の原因となる
  • 異物の除去: ヒューズホルダや端子部にゴミや錆びなどの異物がないことを確認する。
  • 改造しない: ヒューズを針金などで代用したり、改造したりすることは絶対に避けること。
    保護機能が損なわれ、非常に危険。
  • 定期的な点検: ヒューズホルダや配線に異常がないか定期的に点検すること。
  • 溶断後の対応: ヒューズが溶断した場合は、必ず原因を究明し、適切な対策を行った後に
    新しいヒューズと交換する。
    安易に容量の大きなヒューズに交換すると、機器の損傷や火災の原因となることがある。

包装ヒューズに関する規格

包装ヒューズに関する主な規格としては、日本のJIS規格(日本産業規格)がある。
JIS規格では、ヒューズの種類、定格、試験方法、表示などが規定されており、製品の安全性と互換性を確保するために重要な役割を果たしている。

海外の規格としては、IEC規格(国際電気標準会議規格)などがある。
国際的な取引においては、IEC規格に適合した製品が求められることもある。

これらの規格は、ヒューズの性能や安全性を評価する基準となり、設計者や使用者にとって重要な情報源となる。

包装ヒューズのメリット・デメリット

メリット

  • 高い信頼性: シンプルな構造で、過電流に対する応答が早く、確実に回路を遮断する。
  • 安価: 他の保護機器(サーキットブレーカーなど)と比較して一般的に安価。
  • メンテナンスが容易: 一度溶断すれば交換するだけで、特別なメンテナンスはほとんど不要。
  • 高い遮断容量: 短絡電流のような大きな電流を安全に遮断できる能力が高いものがある。
  • アークの抑制: 包装構造により、溶断時のアークや金属蒸気の飛散を防ぎ、安全性が高い。

デメリット

  • 再利用不可: 一度溶断すると再利用不可
  • 原因調査が必要: 溶断した場合、原因を特定し対策する必要がある。
  • 頻繁な過負荷には不向き: 一時的な過負荷でも溶断する可能性があるため
    頻繁に過負荷が発生する回路には適さない場合がある
    (タイムラグヒューズで対応できる場合もある)
  • 遮断後の復旧に手間: 溶断後に新しいヒューズに交換する手間がかかる。

非包装ヒューズとの違いまとめ

非包装ヒューズの特徴

  • 構造: ヒューズエレメントが露出しており、絶縁性の容器で覆われていない。
    例)つめ付きヒューズ
  • 特徴:
    • 構造がシンプル: 包装ヒューズに比べて構造が簡単。
    • 安価である: 一般的に包装ヒューズよりも安価。
    • 小型である: 包装がないため、比較的小さいサイズで済む。
    • 溶断状態が目視可能(一部): ガラス管ヒューズのように、エレメントが直接見える場合は溶断の確認が容易。
    • 安全性が低い: 溶断時にアークや溶融金属が飛散する可能性があり、感電や火災のリスクがある。
    • 遮断容量が小さい: 消弧機能がないため、遮断できる短絡電流は比較的小さくなる。
    • 主に低圧・小容量の回路で使用: 家庭用電気機器や制御回路など
      比較的安全性が確保しやすい環境で使用される
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