絶縁体についての基礎知識まとめ

絶縁体の基本的な役割

絶縁体は、電気を非常に通しにくい物質のことで
電気回路や電気機器において、意図しない場所への電流の流れを防ぐ重要な役割を担っている。
具体的には、以下のような目的で使用される。

  • 感電防止: 電気が人体に流れるのを防ぎ、安全を確保する。
    電線や電気機器の表面を覆うことで、人が直接電気に触れるのを防ぐ。
  • 短絡(ショート)防止: 電流が本来流れるべき経路以外を通ってしまい、回路が損傷したり
    火災の原因になったりするのを防ぐ。
    異なる電線間や部品間を絶縁することで、意図しない接触を防ぐ。
  • 電気機器の性能維持: 電気機器内部の各部品を絶縁することで、設計された通りの電流の流れを作り出し
    機器の正常な動作を維持する。
  • 電力の効率的な伝送: 送電線などで、電流が大地に漏れるのを防ぎ、電力の損失を最小限に抑える。

絶縁体の種類

絶縁体は、その物理的な状態によって大きく以下の3つに分類される。

固体絶縁体

  • 特徴: 形状が安定しており、加工しやすいものが多く、幅広い用途で使用される。
  • 主な種類:
    ゴム: 柔軟性、耐水性、電気絶縁性に優れており、電線の被覆やパッキンなどに使用される。
    天然ゴム、合成ゴム(シリコーンゴム、ブチルゴムなど)がある。
    プラスチック: 成形性、耐薬品性、電気絶縁性に優れており、電線被覆、コネクタ、電子部品の
    ケースなどに広く使用される。
    ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、テフロン(フッ素樹脂)、エポキシ樹脂などがある。

液体絶縁体

  • 特徴: 固体絶縁体の隙間を埋めたり、冷却効果を持たせたりする目的で使用されます。
  • 主な種類:
    絶縁油: 変圧器コンデンサ、油入開閉器などに使用され、絶縁と冷却の役割を担う。
    鉱物油、合成油などがある。

気体絶縁体

  • 特徴: 比較的低い絶縁耐力であるが、扱いやすく、大規模な設備などで使用される。
  • 主な種類:
    空気: 身近な絶縁体であるが、絶縁耐力は高くない。
    SF6(六フッ化硫黄)ガス: 優れた絶縁耐力を持ち、高電圧の開閉器や変電所の機器などに使用される。
    不燃性で化学的に安定しているが、温室効果ガスとしての側面もある。

絶縁体の特性

絶縁体を選定する際には、その特性を理解することが重要となり、主な特性としては以下のようなものがある。

  • 絶縁耐力(耐電圧): 絶縁体が破壊されずに耐えることができる最大の電圧。
    単位はkV/mmなどで表される。絶縁耐力が高いほど、高電圧の環境で使用できる。
  • 抵抗率(電気抵抗): 電気の流れにくさを示す指標。
    単位はΩ・mなどで表される。抵抗率が高いほど、電気を通しにくい優れた絶縁体と言える。
  • 誘電率(比誘電率): 電場をかけたときに、どれだけ電気エネルギーを蓄えることができるかを示す指標。
    コンデンサの性能などに影響します。
  • 耐熱性: 使用可能な温度範囲。高温環境で使用する場合は、耐熱性の高い絶縁体を選ぶ必要がある。
  • 機械的強度: 引張強度、圧縮強度、曲げ強度など、外部からの力に対する強さ。
    使用環境によっては、機械的強度が重要な要素となる。
  • 誘電正接(tan δ): 交流電圧をかけたときのエネルギー損失の割合を示す指標。
    小さいほどエネルギー損失が少なく、良質な絶縁体と言える。
  • 吸水率: 水を吸収する度合い。吸水率が高いと絶縁性能が低下する場合がある。

絶縁体の用途

  • 電線・ケーブル: 電線を覆い、感電や短絡を防ぐ(例:ビニル被覆電線、ゴム絶縁ケーブル)。
  • 電気機器: モーター、変圧器、発電機などの内部で、コイルや部品間の絶縁を保ち、機器の正常な動作を支える。
  • 電子部品: 集積回路(IC)、コンデンサ、抵抗器などの部品内部や表面を絶縁し、誤動作を防ぐ。
  • 高電圧機器: 変電所の開閉器遮断器碍子などに使用され、高電圧による放電や漏電を防ぐ。
  • 建築材料: 断熱材として使用される場合もあるが、電気絶縁の目的でも、
    壁材や配線材の一部に絶縁性の材料が使用されます。

絶縁体の選定

適切な絶縁体を選ぶためには、以下の要素を考慮する必要がある。

  • 使用電圧: 印加される電圧に応じて、十分な絶縁耐力を持つ材料を選定する必要がある。
  • 使用温度: 周囲温度や機器の発熱を考慮し、耐熱性の高い材料を選定する必要がある。
  • 環境条件: 湿度、塵埃、腐食性ガス、振動など、使用環境に応じた耐性を持つ材料を選定する必要がある。
  • 機械的強度: 外部からの力や振動が加わる可能性がある場合は十分な機械的強度を持つ材料を選定する必要がある。
  • コスト: 要求される性能を満たしつつ、経済的な材料を選定することも重要となる。
  • 加工性: 部品の形状や製造方法に合わせて、適切な加工が可能な材料を選定する必要がある。
  • 安全性: 人体や環境に悪影響を与えない安全な材料を選定する必要がある。

絶縁体の劣化

絶縁体は、長期間の使用や様々な環境要因によって、その性能が徐々に低下することがある。
主な劣化の原因としては以下のようなものがある。

  • 熱劣化: 高温に長時間さらされることで、絶縁材料の化学構造が変化し、絶縁性能が低下する。
  • 電気的ストレス: 高い電圧が長時間印加されることで、部分放電が発生し、絶縁材料が徐々に侵食される。
  • 機械的ストレス: 振動や屈曲、衝撃などが加わることで、絶縁材料に亀裂や損傷が生じ、絶縁性能が低下する。
  • 化学的劣化: 酸やアルカリなどの化学物質にさらされることで、絶縁材料が変質し、絶縁性能が低下する。
  • 環境劣化: 紫外線、湿度、塵埃などが原因で、絶縁材料の表面が劣化したり
    汚染物質が付着して絶縁性能が低下したりする。
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