単3中性線欠相保護機能付きノーヒューズ遮断器の概略
この遮断器は以下の2つの主要な保護機能を兼ね備えている。
過電流保護機能
●過電流保護機能
回路の過負荷や短絡を検出し、回路を遮断する。
これは、一般的なノーヒューズ遮断器(NFB/MCCB)が持つ基本的な機能となる。
●単相3線式中性線欠相保護機能
単相3線式回路において、中性線が断線したり、接続不良になったりする
「中性線欠相」が発生した際に、それを検出し、回路を遮断する。
あわせて読みたい 単3中性線欠相保護機能付き漏電遮断器について基礎知識まとめ 漏電遮断器についての概略 漏電遮断器(ろうでんしゃだんき)は、電気回路に漏電が発生した際に感電事故や火災を防ぐために自動的に電気を遮断する安全装置のこと。ELCB… 単3中性線欠相保護機能付きノーヒューズ遮断器は、過電流から電線や機器を守ると同時に
中性線欠相による機器の損傷や火災のリスクを防ぐという
二重の安全対策を提供するもの。
単3中性線欠相保護機能付きノーヒューズ遮断器の必要性
単相3線式は、日本の一般家庭や小規模店舗・事業所で広く普及している配線方式。
この方式では、100Vの電気と200Vの電気を同時に供給できるため
エアコンやIHクッキングヒーターなどの200V機器と、一般的な100V家電を併用が可能。
しかし、この単相3線式回路において、中性線が断線する事故が時折発生する。
中性線が断線すると、以下のような非常に危険な状態が発生する。
- 電圧不平衡(過電圧): 通常、中性線は電圧の基準点となり、2本の活線(R相、T相)と中性線(N相)の間で
それぞれ100Vの電圧が供給される。中性線が断線すると、この電圧のバランスが崩れ、
片側の100V機器に過大な電圧(200Vに近い電圧)がかかり、もう一方の100V機器には電圧がほとんどかからなくなるという現象が起こる。 - 電気機器の損傷・焼損: 過電圧がかかった100V機器は、設計された電圧よりも高い電圧にさらされるため
瞬時に故障したり、発熱して焼損したりする危険性がある。
最悪の場合、これが火災の原因となることもある。 - 感電のリスク: 機器の損傷だけでなく、異常な電圧が機器の金属部分などに伝わり
感電のリスクを高める可能性もある。
単3中性線欠相保護付ノーヒューズ遮断器の内部機構
内部接続図例
保護特性
下図のように中性線欠相による異常電圧が135Vを越えると1秒以内で遮断し,電気器具の絶縁劣化,焼損を防ぐ。
※(1秒間異常電圧を印加した時の故障発生実験値であり 実際にはメーカ・機種により異なる)
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://dl.mitsubishielectric.co.jp/dl/fa/document/catalog/lvcb/yn-c-0388/y0388q1811.pdf
三菱ノーヒューズ遮断器・漏電遮断器漏電アラーム遮断器単3中性線欠相保護付ノーヒューズ遮断器単3中性線欠相保護付漏電遮断器漏電リレー・リモコン機器・サーキットプロテクタ
より画像引用
単3中性線欠相保護付ノーヒューズ遮断器の仕組み
- 中性線の電圧バランス監視:
- 遮断器内部に、中性線を含む各相の電圧を常に監視する回路が組み込まれている。
特に、過電圧保護リード線と呼ばれる専用の線が、遮断器の二次側(負荷側)の中性線に接続されており
このリード線を介して中性線の電圧を直接検出する。
- 電圧不平衡の検出:
- 中性線が欠相すると、前述のように100V回路の電圧バランスが大きく崩れる。
具体的には、ある100V回路に過電圧が発生し、別の100V回路には低電圧(または無電圧)になる。
この異常な電圧のアンバランス(過電圧)を、遮断器の検出回路が感知する。
- 瞬時遮断:
- 検出回路が過電圧を感知すると、瞬時に遮断器の引き外し機構(トリップコイルなど)を作動させ
回路を強制的に遮断する。
これにより、過電圧が機器に与える影響を最小限に抑え、損傷や火災を防ぐ。
過電圧保護リード線は、ブレーカーの二次側の中性線に確実に接続されている必要があり
これが正しく接続されていないと、中性線欠相保護機能は正常に動作しない。
単3中性線欠相保護付ノーヒューズ遮断器のメリットとデメリット
メリット
- 電気機器の保護: 中性線欠相による過電圧から、テレビ、冷蔵庫、エアコンなどの
高価な家電製品や電子機器を確実に保護する。 - 火災の防止: 機器の焼損による火災事故のリスクを大幅に低減し、建物全体の安全性を高める。
- 内線規程への適合: 現在の電気設備における安全基準を満たすために不可欠な機能。
- 繰り返し使用可能: ヒューズと異なり、遮断後もスイッチを入れ直すだけで復旧可能。
(ただし、中性線欠相の原因を特定し、解消してからでないと危険)
デメリット
- コスト: 標準的なノーヒューズ遮断器と比較して、中性線欠相保護機能が追加されている分、価格は高くなる。
- 設置時の配線: 過電圧保護リード線の接続が必要なため、専門知識を持った電気工事士による適切な設置が必要。
単3中性線欠相保護付ノーヒューズ遮断器の主な使用場所
主に以下の場所の分電盤で
主幹ブレーカー(メインブレーカー)や主要な分岐ブレーカーとして使用される。
- 一般住宅: ほとんどの家庭の分電盤には、この機能を持つブレーカーが設置されている。
- アパート・マンション: 各戸の分電盤や、共用部の分電盤。
- 小規模店舗・事務所: 単相3線式電源が供給されている場所。
- その他、単相3線式回路を使用する施設全般