定格電力(Rated Power)とは
電気機器がその性能を最大限に発揮し、かつ安全に
継続して運転できるとメーカーによって保証された電力の値のこと。
その機器が「本来持っている能力」や「安心して使える最大の力」を示す数値であり
製品の仕様書や銘板に記載されている。
定格電力の種類と表示
有効電力(W:ワット)
- 実際に電気機器が消費し、熱、光、運動エネルギーなどに変換される電力。
多くの家電製品やモーター、照明器具などで「消費電力」として表示されるのはこの有効電力。
例)エアコンの暖房能力(消費電力)、パソコンの消費電力、電球の明るさを示すワット数など。
皮相電力(VA:ボルトアンペア)
- 交流回路において、電圧(V)と電流(A)を単純に掛け合わせた電力の総量。
有効電力と無効電力(var)を合わせたもので、電力会社から供給される電力の総量に近い概念。
変圧器、UPS(無停電電源装置)、発電機など、交流電源を扱う機器で「VA」単位で表示されることが多い。
これは、これらの機器の容量が、流れる電流の総量(皮相電力)に基づいて決定されるため。
例)UPSの容量(500VAなど)、変圧器の容量(100kVAなど)。
力率(Power Factor; PF)
- 皮相電力に対する有効電力の割合を示します。
交流機器では、有効電力と皮相電力の間に差が生じることがあるため、力率も重要な定格値の一つ。
- 力率=皮相電力 (VA)有効電力 (W)
定格電力の表示例
- 家電製品(一般のコンセントに繋ぐもの): 「消費電力 1000W」のように、主に有効電力で表示される。
- モーター
「定格出力 1.5kW」のように、モーターが機械的に発生できる有効出力(動力)で表示されることが
多い。ただし、入力側の電力は力率によって有効電力(W)と皮相電力(VA)が異なる場合がある。 - UPSや変圧器
「出力 500VA / 300W」のように、皮相電力と有効電力の両方が併記されている場合がある。
機器が供給できる総電流の能力(VA)と、実際に仕事に使える電力(W)の両方を示すため。
定格電力が持つ意味
安全性
- メーカーは、定格電力の範囲内で使用されることを前提に、機器の絶縁、配線の太さ、放熱設計などを
行っている。定格電力を超えて使用すると、過熱による絶縁劣化、配線や部品の焼損
最悪の場合には火災などの事故につながる危険性がある。
性能保証
- 機器が本来の性能を発揮できるのは、定格電力の範囲内での使用が前提。
例えば、定格出力1.5kWのモーターは、その出力を継続して安全に提供できるように設計されている。
寿命
- 定格電力内で適切に使用されることで、機器の設計寿命が保証される。
過負荷運転は、機器の劣化を早め、寿命を著しく縮める原因となる。
電源・配線の選定
- 機器を接続するコンセント、電源ケーブル、ブレーカーなどの選定
機器の定格電力(特に定格電流)に基づいて行われる。
例えば、総消費電力1500Wの機器を接続する場合、100V環境であれば15Aの電流が流れるため
15A用のコンセントやブレーカーが必要になる。
電気料金
電力会社との契約電力は、接続される電気機器の総定格電力(特に最大需要電力)に基づいて決定される。
定格電力と実際の消費電力
- 定格電力 = 最大消費電力ではない
定格電力は、機器が最大限に能力を発揮した時の消費電力
あるいは安全に継続運転できる上限の電力のこと。
しかし、機器が常に定格電力で運転しているわけではない。
- 例えば、エアコンは設定温度に達すると能力を落とし、消費電力は定格より大幅に下がる。
- パソコンも、高負荷な処理を行わない限り、常に定格電力で動作しているわけではない。
- 平均消費電力
機器が通常運転で消費する電力は、定格電力よりも低いことがよくある。
年間の電気料金を計算する際には、定格電力よりも実際の使用状況に
基づいた「平均消費電力」が重要になる。
定格出力と定格入力
特にモーターや発電機、変圧器などの変換機器では
「定格入力」と「定格出力」という言葉が使われる。
定格入力: 機器が電源から受け取る電力の定格値。
定格出力: 機器が外部へ供給できる電力(または機械的動力)の定格値。
効率が100%の機器は存在しないため
定格入力と定格出力は通常異なる(定格入力 > 定格出力)
その差は、機器内部での損失(熱など)となる。
主な例
- モーター:定格入力(電気)→ 定格出力(機械)
- 発電機:定格入力(機械)→ 定格出力(電気)
- 変圧器:定格入力(電気)→ 定格出力(電気)