線間電圧についての概略
線間電圧とは、三相交流回路において、3本の電線のうち、任意の2本の電線間の電圧差のことを指す。
一般的な家庭で使われる単相交流では「100V」や「200V」といった電圧はほとんどだが
これらは通常、線間電圧のことを指している。
特に、工場などで使われる三相交流の場合複数の電線があるので
「どの電線とどの電線の間の電圧か」を区別するために
「線間電圧」という言葉が使われる。
相電圧との違い
線間電圧を理解する上で重要なのが「相電圧(そうでんあつ)」との違いとなる。
- 相電圧
三相交流回路の3つの電源(相)それぞれにかかる電圧
または、各電線と中性点(または大地)の間の電圧を指す。
- 線間電圧: 電線と電線の間の電圧。
線間電圧と相電圧の関係(結線方式による違い)
三相交流には、主に以下の2つの結線方式がある。
これにより、線間電圧と相電圧の関係が異なる。
スター結線(Y結線)
- 特徴
各相の巻線の一端を一点(中性点)に集めて接続し
そこから3本の電線が引き出される方式。
中性点からさらに電線を引き出す「三相4線式」もある。 - 電圧の関係
- 線間電圧 = √3 × 相電圧
- 線間電圧は相電圧よりも大きくなる。
- 電流の関係
- 位相
線間電圧は相電圧に対して30度進んだ位相となる。 - メリット
中性点を接地できるため、保守や保護がしやすい。
巻線にかかる電圧が線間電圧の1/3になるため、絶縁が容易。
- デメリット
第3次高調波が環流できないため、波形が歪むことがある。
デルタ結線(Δ結線)
- 特徴
各相の巻線を三角形に接続し
それぞれの頂点から電線を引き出す方式。
- 電圧の関係
- 電流の関係
- 線電流 = √3 × 相電流
- 線電流は相電流よりも大きくなる。
- 位相
線間電流は相電流に対して30度遅れた位相となる。
- メリット
第3次高調波が巻線内で環流するため、波形が歪みにくい。 - デメリット
中性点が取れないため、異常電圧が発生しやすいことがある。
巻線にかかる電圧が線間電圧と等しいため、スター結線よりも絶縁に注意が必要。
線間電圧の計算方法
上記のように、結線方式によって線間電圧と相電圧の関係が決まる。
具体的な計算は以下のようになります。
- スター結線の場合
VL=3×VP (VL:線間電圧、VP:相電圧)
- デルタ結線の場合
VL=VP
線間電圧が使われる場面
- 電力供給
工場や大型施設など、大電力を必要とする場所では
電動機などに安定した電圧を供給するために三相交流が使われる。
この際の電圧表示は一般的に線間電圧を指す。
- 一般的な表示
私たちが普段「100V」「200V」と呼ぶ電圧は、配電方式によって異なるが
多くの場合、線間電圧を指している。
例)単相3線式100/200Vの回路では、非接地側電線同士の線間電圧が200Vとなる。
線間電圧の欠点や注意点
- 不平衡
各巻線の負荷力率が異なる場合、電圧降下に差が生じ
線間電圧に不平衡が生じる可能性がある。
これは特に灯動共用変圧器などで見られることがある。
- 異常電圧
デルタ結線など、中性点が取れない結線方式では、異常電圧が発生しやすい場合がある。
- 高調波
スター結線では、第3次高調波が吸収できないため、誘導起電力に第3次高調波が生じ
ひずみ波が発生することがある。