表皮効果(Skin Effect)とは、交流電流が導体を流れるときに、電流が導体の中心部ではなく
表面近くに集中して流れる現象のことを指す。周波数が高くなるほど、この現象は顕著になる。
この結果、電流は導体の中心を避け、表面に集中して流れることになる。
表皮効果の度合いを示す指標として、「表皮深さ(d)」という概念がある。
これは、導体表面の電流密度が、表面から内部へ深さが増すごとに 1/e(約37%)に減衰する深さを表す。
表皮深さが小さいほど、電流はより表面に集中していることを意味する。
表皮深さ d は以下の式で表される。
d=ωμ2ρ
この式からわかるように、
表皮効果は、特に電力系統や高周波回路において
以下のような問題を引き起こす。
実効抵抗の増加(抵抗損失の増大)
電流が導体の表面に集中することで、電流が流れる実質的な断面積が減少する。
これにより、直流電流を流した場合に比べて、交流電流を流した際の実効的な抵抗値が大きくなる。
結果として、送電線やケーブルでの電力損失(I2R損失)が増大し、送電効率が低下する。
発熱の増加
実効抵抗の増加は、導体内部での発熱量の増加に直結する。
これにより、機器の過熱や損傷のリスクが高まる。
送電容量の低下
熱的制約の観点から、電線の許容温度が決まっているため
実効抵抗が増加すると同じ温度上昇を許容できる電流値が減少する。
=送電可能な最大電力が低下する。
電力系統や高周波回路では、表皮効果による悪影響を抑えるために
以下のような対策が取られる。
多導体方式の採用(電力送電線)
一本の太い電線ではなく、複数の細い導体を束ねて使用する「多導体方式」が採用される。
これにより、導体全体の表面積が大きくなり、電流が分散して流れやすくなるため
実効抵抗の増加を抑制できる。また、コロナ放電の抑制にも効果がある。
中空導体の使用
特に高周波大電流を扱う場合、導体の中心部分にはほとんど電流が流れないため
導体を中空構造にすることで、材料の無駄をなくしつつ、軽量化や放熱性の向上を図ることができる。
リッツ線の使用(高周波回路)
高周波コイルなどに用いられる「リッツ線」は、細い絶縁された多数の素線を撚り合わせた構造をしている。
各素線が独立して電流を分担することで、表皮効果による電流の集中を緩和し、実効抵抗の増加を抑える。
導体の形状変更
円形断面の導体だけでなく、平たいバスバー(棒状導体)などを採用し
表面積を増やして電流を分散させることもある。