太陽光発電における「接続箱」と「集電箱」は、太陽光パネルで発電された直流電力を
パワーコンディショナーに送るための重要な中継地点となる機器。
特に規模の大きいシステムでは、接続箱と集電箱が使い分けられることがある。
接続箱(Combiner Box)についての概略
太陽光パネルは、それぞれが直流の電気を生成する。
これらのパネルを複数枚直列につなげたものを「ストリング」と呼び、家庭用の太陽光発電システムでは
屋根に設置された複数のストリングから伸びるケーブルを一つにまとめ
パワーコンディショナーへ送るのが接続箱の主な役割となる。
接続箱の主な役割
●直流電力をまとめる
複数の太陽光パネル(ストリング)から発電された直流電力を一箇所に集約する。
これにより、ケーブルの配線を簡略化し、パワーコンディショナーへの接続を容易にする。
●系統保護
- 過電流保護
各ストリングにヒューズやブレーカーを設置し、短絡や過電流が発生した場合に回路を遮断し
システム全体や機器の損傷を防ぐ。
- 逆流防止
複数のストリングがある場合、発電量の少ないストリングに
発電量の多いストリングから電気が逆流するのを防ぐ「逆流防止ダイオード」が内蔵されていることがある。
これにより、発電効率の低下やパネルの損傷を防ぐ。
- 開閉機能
メンテナンス時などに、安全に各ストリングの電流を遮断するための開閉器(スイッチ)が備わっている。
●雷対策(避雷機能)
落雷などによる過電圧からシステムを保護するため
避雷素子(サージプロテクタ)が内蔵されているものもある。
これにより、過電圧を大地に逃がし、パワーコンディショナーなどの機器を保護する。
●発電量のモニタリング(オプション)
一部の接続箱には、各ストリングの電圧や電流を測定する機能が備わっており
発電状況の監視や異常箇所の特定に役立る。
接続箱は、太陽光パネルの近く(屋根上や壁面、屋根裏など)や
パワーコンディショナーの近くに設置されることが多い。
屋外に設置されることが多いため、防水・防塵性能が求められる。
集電箱(Array Junction Box / DC Combiner Box)とは
大規模な太陽光発電システム(産業用メガソーラーなど)では
設置される太陽光パネルの数が非常に多くなる。
この場合、1つの接続箱だけでは対応しきれないため、複数の接続箱が設置される。
「集電箱」はこれら複数の接続箱から送られてくる直流電力を
さらにまとめてパワーコンディショナーに送る役割を担う。
=接続箱たちの「まとめ役」が「集電箱」と言える。
- 接続箱: 太陽光パネルのストリングをまとめる。
- 集電箱: 複数の接続箱からの電力をまとめて、パワーコンディショナーへ送る。
集電箱も接続箱と同様に、過電流保護や避雷機能、開閉機能などを備えている。
大規模システムにおいて、配線の複雑さを軽減し、電力損失を抑えるために重要な役割を果たす。
接続箱・集電箱の構成部品(一般的な例)
- 箱体
鋼板製やステンレス製などがあり、屋外設置の場合は防水・防塵対策が施されている。
- 直流開閉器(直流ブレーカー)
各ストリングからの直流電流を遮断するためのスイッチ。メンテナンスや非常時に使用する。
- ヒューズ: 過電流が流れた際に溶断して回路を保護する。
- 逆流防止ダイオード
発電量の少ないストリングへの電流逆流を防ぎます。
- 避雷素子(サージプロテクタ)
落雷などによる過電圧を吸収し、機器を保護する。
- 端子台
太陽光パネルやパワーコンディショナーからのケーブルを接続する部分です。
- ストリングモニタリング機能(オプション)
各ストリングの発電量を監視する機能。
近年、住宅用太陽光発電システムでは
接続箱の機能をパワーコンディショナーに内蔵した「接続箱一体型パワーコンディショナー」も増えている。この場合、別途接続箱を設置する必要がなく、システムが簡素化されるというメリットがある。
故障事例とメンテナンス
接続箱・集電箱は、屋外に設置されることが多く
温度変化、湿度、雨、風、直射日光などに常にさらされるため、経年劣化や故障のリスクがある。
主な故障事例
- 焼損
端子部の締め付け不良や接触不良、異物混入、配線ミスなどにより
抵抗が増加して異常発熱して焼損に至るケースがあり、火災につながる可能性もある。
- 水分の侵入
箱体のシーリング劣化や破損により、内部に雨水が侵入し
内部の電子部品や配線がショート・腐食する場合がある。
- 部品の劣化
ヒューズの溶断、ダイオードの故障、避雷素子の劣化など、内部部品の劣化による機能不全。
- 配線の断線・損傷
ケーブルの被覆が劣化したり、動物にかじられたりすることで、内部の配線が露出・損傷し
漏電や短絡の原因となることがある。
メンテナンスの重要性
太陽光発電システムのメンテナンスは
FIT制度(固定価格買取制度)を利用している場合は義務化されており
適切に行わないと売電認定が取り消される可能性もある。
そのため接続箱・集電箱も重要な点検箇所となる。
点検項目(専門業者による点検)
- 目視点検
箱体の外観に破損、腐食、サビ、著しい汚れがないか。
扉の施錠はされているか。ケーブルの被覆に損傷がないか。
- 内部点検
カバーを開けて、内部の配線や端子に緩み、焦げ付き、変色、腐食がないか。異物の侵入がないか。
- 電気的測定
各ストリングの電圧、電流、絶縁抵抗などを測定し、異常がないかを確認する。
これにより、パネルの故障や配線の劣化などを早期に発見できる。
- 増し締め
端子台などのネジの緩みを点検し、必要に応じて増し締めを行う。
- 清掃: 内部の埃や汚れを清掃する。