太陽光発電設備の絶縁測定は、高電圧を扱うため、非常に危険な作業となり
感電事故や機器の損傷を防ぐため、必ず正しい手順で機器を停止し
安全を確保してから測定を行う必要がある。
基本的に設備の構成やメーカーの指示によって異なる場合があるため
測定時には必ず設備の取扱説明書やメーカーの指示に従うこと。
絶縁測定前の機器停止手順
作業計画の策定と周知
- どのような測定を行うのか、どの機器を停止するのか、作業の担当者は誰かなどを明確にした計画を立てる。
- 関係者全員に作業計画を周知し、安全意識を高める。
- 停電作業となる場合は、事前に電力会社や関連部署に連絡し、承認を得る。
保護具の着用
- 絶縁手袋、安全靴、保護メガネ、ヘルメット、作業服など、適切な保護具を必ず着用する。
パワーコンディショナ(PCS)の停止
- 運転・停止スイッチの操作
パワーコンディショナの運転・停止スイッチを「停止(OFF)」に切り替える。
これにより、交流側(系統側)への電力供給が停止される。
- 出力遮断器の開放
パワーコンディショナの交流出力側の遮断器(ブレーカー)を「OFF」にする。
これにより、系統側からの逆潮流を防ぎ、交流側の回路を完全に切り離す。
- DC入力側の開放
パワーコンディショナのDC入力側の遮断器(ブレーカー)を「OFF」にする。
これにより、太陽電池モジュールからの直流電流の供給を停止する。
接続箱の操作
- 主開閉器の開放
接続箱にある主開閉器(ストリング全体をまとめるブレーカー)を「OFF」にする。
- ストリングごとの断路器の開放
各ストリング(太陽電池モジュールの直列回路)ごとに設けられている断路器(スイッチ)を「OFF」にする。
これにより、各ストリングの回路が完全に開放される。
- SPD(避雷器)の切り離し(必要な場合)
絶縁測定の対象によっては、SPD(避雷器)が測定値に影響を与える可能性があるため
SPDを切り離す場合がある。これはメーカーの指示や測定の目的による。
検電と放電
- 検電
停止した回路に電圧が残っていないか、必ず検電器を用いて確認する。
直流側は、太陽光が当たっていれば常に電圧が発生しているため、注意が必要。
- 放電
高電圧の回路には電荷が残っている可能性があるため、適切な放電器具を用いて放電を行う。
特にパワーコンディショナのDC入力側は、コンデンサに電荷が蓄えられている可能性があるため
放電確認が重要となる。絶縁抵抗計によっては、測定終了後に自動で放電機能が働くものもある。
施錠・表示
誤って通電されることを防ぐため、停止した遮断器やスイッチには施錠(ロックアウト)を行い
「点検中、操作禁止」などの表示札を掲示する。
測定後の復旧手順
絶縁測定が完了し、問題がないことを確認したら、停止手順と逆の順序で機器を復旧させる。
- SPD(避雷器)の復旧(切り離していた場合)
- ストリングごとの断路器の投入(ON)
- 接続箱の主開閉器の投入(ON)
- パワーコンディショナのDC入力側の遮断器を投入(ON)
- パワーコンディショナの交流出力側の遮断器を投入(ON)
- パワーコンディショナの運転・停止スイッチを「運転(ON)」に切り替え
安全上の注意点(重要)
- 無電圧状態の確認
太陽光発電システムは、日中であればモジュールから常に発電しているため
完全に無電圧状態にすることはできない。
遮断器を開放しても、ストリング(パネル群)には開放電圧がかかっている。
そのため、特にDC側を扱う際は、常に感電の危険があることを認識しておく必要があります。
- DC側の取り扱い
直流(DC)電流は、交流(AC)電流に比べてアークが発生しやすく、消弧しにくい特性がある。
DCブレーカーやスイッチの操作は、適切な手順で行わないと
アークによる火傷や機器の損傷につながる可能性があります。
- 絶縁抵抗計の適切な使用
使用する絶縁抵抗計の取扱説明書を熟読し、正しい測定方法
試験電圧の設定、安全機能(放電機能など)を理解した上で使用すること。
- 天候への配慮
雨天時や曇りの日は、モジュール表面が濡れていたり、発電量が少なかったりするため
絶縁抵抗値が低下したり、感電のリスクが高まる場合がある。
可能な限り晴れた日に、乾燥した状態で測定を行うのが望ましい。
- 専門知識と資格
太陽光発電設備の電気工事や測定は、電気工事士の資格を持つ者が行う必要がある。
安易な自己判断は重大な事故につながる。
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